星細胞腫

執筆者:Kee Kiat Yeo, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2023年 1月
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星細胞腫は星細胞から生じる中枢神経系腫瘍である。診断はMRIに基づく。治療は外科的切除と化学療法の併用である。放射線療法は,低悪性度腫瘍の治療に用いられることはまれであるが,高悪性度腫瘍の治療には一般的に用いられている。

星細胞は,脳実質の大部分を構成する星のような形をした神経膠細胞で,中枢神経系内での位置に応じて様々な機能を果たしている。星細胞腫の悪性度には,進行が緩やかな低悪性度(low-grade)(最も頻度が高い)から,悪性である高悪性度(high-grade)までの幅がみられる。

星細胞腫は,1つの腫瘍群としては最も頻度の高い小児の中枢神経系腫瘍であり,小児中枢神経系腫瘍の約40%を占める(1)。大半が5歳から9歳までに発生する。この種の腫瘍は脳または脊髄のあらゆる領域に発生しうるが,最も多くみられるのは小脳である。

小児と成人の星細胞腫は,外観は類似しているものの,生物学的背景が異なり,認められる分子生物学的所見も異なることから,腫瘍の発生部位や治療方法,全体の治療成績などの臨床的特徴に差がみられる(2, 3)。

参考文献

  1. 1.Ostrom QT, Price M, Neff C, et al: CBTRUS statistical report: Primary brain and other central nervous system tumors diagnosed in the United States in 2015-2019. Neuro Oncol 24(Suppl 5):v1–v95, 2022.doi: 10.1093/neuonc/noac202

  2. 2.Jones C, Perryman L, Hargrave D: Paediatric and adult malignant glioma: Close relatives or distant cousins? Nat Rev Clin Oncol 9(7):400–413, 2012.doi: 10.1038/nrclinonc.2012.87

  3. 3.Greuter L, Guzman R, Soleman J: Pediatric and adult low-grade gliomas: Where do the differences lie? Children (Basel) 8(11):1075, 2021.doi: 10.3390/children8111075

星細胞腫の症状と徴候

大半の患児で,頭蓋内圧亢進と一致する症状(例,朝の頭痛,嘔吐,嗜眠)がみられる。その他の症候は腫瘍の位置で決まる;以下に例を挙げる:

  • 小脳:筋力低下,振戦,および運動失調

  • 大脳半球:四肢の筋力低下,しびれ,または痙攣発作

  • 視路:視力障害,眼球突出,または眼振

  • 脊髄:疼痛,筋力低下,および歩行障害

星細胞腫の診断

  • 造影MRI

  • 生検

造影MRIが,腫瘍の診断,進展範囲の決定,および再発の検出における第1選択の画像検査である。造影CTも用いられるが,特異度および感度が劣る。

例外もあるが,腫瘍の種類および悪性度を判定するために生検が必要になる。腫瘍は典型的には低悪性度(例,毛様細胞性星細胞腫)と高悪性度(例,退形成性星細胞腫)に分類される。多くの病理医がグレード1および2の腫瘍を低悪性度に,グレード3および4の腫瘍を高悪性度に分類している。

星細胞腫の治療

  • 外科的切除

  • ときに放射線療法および/または化学療法

星細胞腫の治療は発生部位と腫瘍の悪性度に依存する。一般的原則として,腫瘍の悪性度が低いほど,治療の強度は低く,予後は良好となる。

低悪性度星細胞腫

一次治療は外科的切除であり,全切除が(安全であれば)目標となる。局所再発後でも,腫瘍の部位によっては二期的手術が有益となることがある。

化学療法は一般に,腫瘍が切除不能であるか,完全切除ができないか,手術後に進行/再発がみられた患児に対して治療が必要になった場合に用いられる。

放射線療法は,合併症として長期の認知障害があることから,低悪性度星細胞腫の小児で用いられることはまれである。

低悪性度星細胞腫の小児の大半は,全体として予後良好であり,長期生存者となる。

高悪性度星細胞腫

この種の腫瘍は,手術(位置により手術ができない場合を除く),放射線療法,および化学療法の併用により治療する。化学療法の役割は不明である。

予後は不良で,3年全生存率は20~30%に過ぎない(1)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Cohen KJ, Pollack IF, Zhou T, et al: Temozolomide in the treatment of high-grade gliomas in children: A report from the Children's Oncology Group. Neuro Oncol 13(3):317–323, 2011.doi: 10.1093/neuonc/noq191

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. World Health Organization (WHO): The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: A summary

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