異常子宮出血

(機能性子宮出血)

執筆者:JoAnn V. Pinkerton, MD, University of Virginia Health System
レビュー/改訂 2023年 1月
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妊娠可能年齢の患者における異常子宮出血(AUB)は,月経周期の正常なパラメータ(頻度,規則性,期間,および量)と一致しないパターンの出血である。PALM-COEIN分類では,AUBの原因が構造的原因(ポリープ[Polyp],子宮腺筋症[Adenomyosis],子宮筋腫[Leiomyoma ],または悪性腫瘍[Malignancy ]もしくは過形成)と非構造的原因(凝固障害[Coagulopathy],排卵障害[Ovulatory dysfunction],子宮内膜[Endometrial],医原性[Iatrogenic],未分類[Not yet classified])に分類されている。評価は月経歴,内診,ホルモンの血液検査,および通常は経腟超音波検査による。治療は原因に応じて異なるが,非ホルモン製剤またはホルモン製剤を投与するか,何らかの処置(例,子宮鏡検査,筋腫核出術,子宮摘出術)を行うこともある。

性器出血も参照のこと。)

異常子宮出血(AUB)はよくみられる問題である。排卵障害(無排卵または希発排卵)は,妊娠可能年齢の女性のAUBにおける最も一般的な原因であり,45歳以上の女性(症例の50%以上)と青年女性(症例の20%)で最もよくみられる。

AUBの病態生理

無排卵周期の間は,エストロゲンは産生されるが,黄体は形成されない。このため,プロゲステロンの正常な周期的分泌が起こらず,エストロゲンが拮抗作用を受けずに子宮内膜を刺激する。プロゲステロンによる拮抗がない状態では,子宮内膜は増殖を続け,最終的には血流供給を超える;すると子宮内膜は不完全に脱落し,不規則に,またときとして大量にまたは何日間にもわたり出血する。この異常な過程が繰り返されると,子宮内膜は過形成になることがあり,ときとして異型細胞やがん細胞を伴う。

排卵が起きている患者で異常子宮出血が生じると,プロゲステロンの分泌が遷延する;おそらくはエストロゲン濃度が(月経中にそうなるように)出血の閾値に近い低水準で維持されるため,子宮内膜の不規則な脱落が生じる。肥満女性では,排卵性AUBはエストロゲン値が高い場合に起こり,無月経と不規則または長引く出血が交互に生じる。

合併症

慢性的で多量または長期にわたる子宮出血により鉄欠乏性貧血が生じることがある。

AUBが排卵障害によるものでれば,不妊症も存在する可能性がある。

AUBの病因

妊娠していない妊娠可能年齢の女性におけるAUBの原因は,原因を同定し治療の指針とするため,構造的原因と非構造的原因に分類されることがある。PALM-COEIN分類が用いられることがある(1)。PALM-COEINとは,異常出血の構造的原因(PALM)と非構造的原因(COEIN)のそれぞれの頭文字を並べたものである(PALM-COEIN分類の図を参照)。

PALM-COEIN分類

排卵障害によるAUB(AUB-O)は,非構造的AUBの中で最も多いタイプであり,全体として最も多い原因である。AUB-Oは,無排卵または希発排卵(不規則またはまれに生じる排卵)を引き起こすあらゆる疾患や病態によって生じうる(排卵障害の主な原因の表を参照)。排卵障害の原因としては以下のものがある:

閉経期では,AUB-Oは卵巣機能不全の早期徴候であることがある;卵胞は発育するが,卵胞刺激ホルモン(FSH)の増加にもかかわらず,排卵を促すのに十分なエストロゲンが産生されない。

子宮内膜症の女性では約20%でAUB-Oがみられるが,その機序は不明である。その他の原因として,短い卵胞期と黄体機能不全(子宮内膜に対するプロゲステロン刺激が不十分であることによる)がある;排卵前のエストロゲンの急激な減少は少量の性器出血(spotting)につながることがある。

排卵障害のその他の原因として,全身性疾患(例,肝疾患または腎疾患,クッシング症候群)がある。著しい肉体的または精神的ストレスや栄養不良は視床下部性無月経の典型的な原因であるが,一部の患者では希発排卵とそれによる希発月経がみられる。一部の症例では,AUB-Oは特発性である(ときにゴナドトロピン値が正常な状態で発生する)。

その他のAUBの非構造的原因としては以下のものがある:

  • 凝固障害

  • 子宮内膜因子(例,子宮内膜炎)

  • 医原性(例,ホルモン避妊薬の破綻出血)

AUBの構造的原因としては以下のものがある:

  • 子宮頸管ポリープまたは子宮内膜ポリープ

  • 子宮腺筋症

  • 平滑筋腫(子宮筋腫)

  • 子宮体がんまたは子宮頸癌

病因論に関する参考文献

  1. 1.Munro MG, Critchley HOD, Fraser IS, FIGO (International Federation of Gynecology and Obstetrics) Menstrual Disorders Committee: The two FIGO systems for normal and abnormal uterine bleeding symptoms and classification of causes of abnormal uterine bleeding in the reproductive years: 2018 revisions. Int J Gynaecol Obstet 143 (3):393–408, 2018.doi: 10.1002/ijgo.12666

AUBの症状と徴候

典型的な月経と比較した場合,異常子宮出血は以下のように生じることがある(正常な月経パラメータの表を参照 [1]):

  • より頻回に起こる(24日未満の間隔)

  • 不規則である(周期の頻度に8~10日以上の幅がある)

  • 出血日数が多い(8日を超える)

  • 月経中の出血量が多い(80mLを超える[または患者による出血量の報告による])(過多月経)

  • 月経と月経の間に起こる(月経間期出血)

表&コラム
表&コラム

排卵が起きている患者では,月経が正常な頻度で規則的にみられるが,過多月経または月経間期出血がみられることもある。排卵が起きていることを示唆する症状としては,月経モリミナ(例,周期的な乳房圧痛,月経前の腹部膨満,気分変化)や月経周期半ばの痙攣痛(中間痛)などがある。毎日の体温(基礎体温)は排卵後にわずかに上昇し,次の月経周期の開始後に低下する。

AUB-O(排卵障害)の患者では子宮出血の時期は予測できず,出血量に大きな幅があり,周期的な基礎体温の変化を伴わない。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Munro MG, Critchley HOD, Fraser IS for the FIGO (International Federation of Gynecology and Obstetrics) Menstrual Disorders Committee): The two FIGO systems for normal and abnormal uterine bleeding symptoms and classification of causes of abnormal uterine bleeding in the reproductive years: 2018 revisions.Int J Gynaecol Obstet 143 (3):393–408, 2018.doi: 10.1002/ijgo.12666 Epub 2018 Oct 10.

AUBの診断

  • 月経歴

  • 妊娠検査,血算,およびホルモン測定(例,甲状腺刺激ホルモン[TSH],プロラクチン)

  • 骨盤の画像検査(通常は経腟超音波検査)

  • ときに処置(子宮内膜採取または子宮鏡検査)

性器出血の量や時期が正常な月経と一致しない場合には,異常子宮出血の原因を同定するために評価を行うべきである。青年期早期や閉経期の女性でも,妊娠を除外すべきである。

しばしば異常子宮出血のパターンから考えられる原因が示唆され(例,長期または過度の出血を伴う規則的な周期は器質的異常を示唆する;不正出血または無月経はしばしば排卵障害による),臨床検査または画像検査の選択の指針となる。

貧血を有するか,出血のために入院が必要な青年,および凝固障害の家族歴または他の危険因子を有する患者では,凝固障害を考慮すべきである。

臨床検査

典型的にはいくつかの検査を実施する:

  • 尿妊娠検査または血液妊娠検査

  • 血算

  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH),プロラクチン,およびときにプロゲステロン値または尿中黄体形成ホルモン(LH)

妊娠可能年齢の全てのAUBの女性に妊娠検査を行うべきである。

血算はルーチンに行われる。定期的に重い月経がある女性は貧血が重度であることがある。鉄欠乏性貧血が疑われ,慢性的で多量の出血を認める場合には,血清フェリチン値(体内の貯蔵鉄量を反映する)を測定する。

通常はTSH値を測定するほか,甲状腺疾患と高プロラクチン血症はAUBの一般的な原因であることから,たとえ乳汁漏出がみられなくても,プロラクチン値を測定する。

患者が無排卵の状態かどうかを判定するために,黄体期(正常な月経周期の14日目以降または[黄体期にみられる]基礎体温の上昇が認められた後)に血清プロゲステロン値を測定する医師もいる。値が3ng/mL以上( 9.75nmol/L)の場合は排卵が起こったことを示す。ほかの選択肢は,患者が尿中LHの自宅検査キットを使用することであり,これは周期の9日目以降に数日にわたり毎日測定する。

他の検査は病歴および身体診察の結果に応じて行い,具体的には以下のものがある:

  • テストステロンおよびデヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)値:多嚢胞性卵巣症候群が疑われる場合

  • 血清血糖値および脂質値,血圧,およびBMI:多嚢胞性卵巣症候群が疑われる場合

  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)およびエストラジオール値:原発性卵巣機能不全の可能性がある場合

  • 凝固検査:凝固障害,皮下出血または出血の危険因子がある女性

性器出血の他の原因を除外するために行う検査には,以下のものがある:

  • 患者がルーチンのスクリーニング対象である場合は子宮頸癌スクリーニング(例,パパニコロウ[Pap]検査,ヒトパピローマウイルス[HPV]検査),または内診で疑わしい子宮頸部病変が認められた場合は生検

  • 骨盤内炎症性疾患または子宮頸管炎が疑われる場合は淋菌(Neisseria gonorrhea)およびクラミジア(Chlamydia属細菌)の検査

画像検査または処置

大半の患者において,AUBの評価の一貫として経腟超音波検査を施行する。具体的には,以下のいずれかに当てはまる女性において行われる:

  • 出血パターン,その他の症状,または内診により構造的病変が示唆される,または骨盤内臓器が十分に診察できない

  • 子宮内膜がんの危険因子(例,肥満,糖尿病,高血圧,多嚢胞性卵巣症候群,慢性の無排卵,長期にわたるエストロゲン単独の曝露と関連する他の病態)

  • 年齢45歳以上(女性に危険因子がある場合はこれより早く)

  • 経験的ホルモン療法にもかかわらず持続する出血

経腟超音波検査では大部分のポリープ,筋腫,その他の腫瘤,卵巣の異常,子宮腺筋症,および子宮内膜肥厚などの器質的異常を検出できる。

限局性の肥厚が検出された場合,より小さな子宮内腫瘤(例,小さな子宮内膜ポリープ,粘膜下筋腫)を同定するためさらに検査が必要になることがある。ソノヒステログラフィー(子宮へ生理食塩水を注入し超音波検査を行う)はこれらの異常を評価するのに有用である;より侵襲的な検査である子宮鏡検査が適応となるかを決定するため,または子宮内腫瘤の切除を計画するために用いることができる。あるいは,ソノヒステログラフィーを行わずに子宮鏡検査を行うこともある。どちらも診察室で実施可能である。

閉経後出血の患者の一部では,子宮内膜腫瘍(増殖症またはがん)を評価するための第1選択の検査として,経腟超音波検査中の子宮内膜厚(endometrial stripe)の測定が用いられることがある。患者に以下がみられる場合は子宮内膜採取が必要である:

  • 子宮内膜がんの危険因子(例,現在または最近のタモキシフェン療法)

  • 持続または再発する出血

  • 超音波検査(フォローアップ検査として)で確認された4~5mmを超える子宮内膜肥厚

閉経前女性では,子宮内膜厚の測定値は月経周期を通じて以下のように変化するため,子宮内膜腫瘍の評価には用いられない(1):

  • 月経中:2~4mm

  • 増殖期前半(周期の6~14日目):5~7mm

  • 増殖期後半:11mm以下

  • 分泌期:7~16mm

MRIにより,手術の計画に役立つ詳細な画像を得られるが,高価であり,AUB患者に対する第1選択の画像検査ではない。

子宮内膜採取は通常以下のいずれかの女性において,子宮内膜増殖症や悪性腫瘍を除外するために推奨される:

  • 年齢45歳以上

  • 45歳未満で子宮内膜がんの危険因子が少なくとも1つある(上記参照)

  • 初回評価で正常と判定された後も持続する異常出血,または治療を行っても再発する異常出血

  • 経腟超音波検査で異常な子宮内膜所見が検出された閉経後患者(子宮内膜肥厚が4~5mmを超えるか,限局性または不規則な内膜肥厚を認める)

  • 子宮内膜腫瘍が疑われる患者において超音波検査所見で結論に至らない

子宮内膜採取(診察室での子宮内膜生検または頸管拡張・内膜掻爬手技として行う場合がある)では,子宮内膜の約25%しか分析されないが,異常細胞の検出感度は約97%である。大半の子宮内膜生検検体は増殖性または非同期性の子宮内膜であり,分泌期の子宮内膜を認めないため,無排卵が確定する。

狙い生検(子宮鏡下で行う)は,子宮内膜腔を直接観察し,限局性の子宮内膜異常を生検の標的とするために行われることがある。

評価に関する参考文献

  1. 1.Weerakkody Y, Fahrenhorst-Jones T, Sharma R, et al: Endometrial thickness.Radiopaedia.org.https://doi.org/10.53347/rID-8106 Accessed 1/3/23.

AUBの治療

  • 通常は非ステロイド系抗炎症薬,トラネキサム酸またはホルモン療法による出血のコントロール

  • 鉄欠乏性貧血があれば鉄剤

  • ときに器質的病変の治療のための処置(例,子宮鏡下筋腫核出術,子宮筋腫塞栓術)

  • 子宮内膜がんには子宮摘出術;子宮内膜増殖症にはプロゲスチン療法または子宮摘出術

薬剤

異常子宮出血に対する非ホルモン製剤はホルモン療法よりもリスクや有害作用が少なく,出血が起こった際に間欠的に投与できる。主に妊娠を望む女性,ホルモン療法を避けたい女性,または規則的に多量の出血(過多月経)がみられる女性の治療に用いられる。選択肢としては以下のものがある:

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はプロスタグランジンを低下させることで出血を25~35%軽減し,また月経困難症を緩和する。

  • トラネキサム酸はプラスミノーゲン活性化因子を阻害し,月経時の出血を40~60%減少させる。

ホルモン療法(例,エストロゲン/プロゲスチン避妊薬,プロゲスチン,長時間作用型プロゲスチン放出子宮内避妊器具[IUD])は避妊を望む女性や閉経期の女性で最初に試されることが多い。この治療法には以下の作用がある:

  • 子宮内膜増殖を抑制する

  • 予測可能な出血パターンを回復する

  • 月経血を減少させる

ホルモン避妊薬による治療は,患者が避妊法の使用を希望する限り継続する。出血が数カ月間コントロールされた後には,患者はホルモン療法を継続するか,AUBが依然として存在するかどうかを確認するために治療を中止するかを選択できる。

エストロゲン/プロゲスチン混合型経口避妊薬(COC)が一般的に投与される。COCは,周期的または持続的に使用することで,排卵障害による異常子宮出血をコントロールできる。また,過多月経(例,筋腫または子宮腺筋症による)の女性では,COCにより月経の量が減少する。プロゲスチン単剤経口避妊薬は多量の出血をコントロールしない。COCの便益として以下のものがある:

  • 月経時の出血を40~50%減少させる

  • 月経困難症を軽減する

  • 子宮体がんおよび卵巣がんのリスクを軽減する

OCのリスクはOCの種類,用量,使用期間,および患者因子によって異なる。

以下の場合にはプロゲストーゲンを使うことがある:

  • エストロゲンの禁忌がある(例,心血管系危険因子や深部静脈血栓症の既往がある患者)

  • 患者がエストロゲンを拒否する

消退出血は,COCよりも周期的なプロゲスチン療法(酢酸メドロキシプロゲステロン10mg/日,経口または酢酸ノルエチステロン2.5~5mg/日,経口)を月に21日間行った方が予測しやすい場合がある。天然(微粒子化)プロゲステロン200mg/日を月に21日間周期的に投与することもある(特に妊娠の可能性がある場合);しかしながら,眠気が生じることがありまたプロゲスチンほど出血を減少させない。

避妊薬ではない周期的プロゲスチンまたはプロゲステロンを服用している患者が妊娠を防ぎたい場合は,避妊法を用いるべきである。避妊薬としてのプロゲスチンの選択肢としては,以下のものがある:

  • レボノルゲストレル放出IUD:6カ月後までに最大97%の避妊効果があり,また月経困難症を改善する。

  • 酢酸メドロキシプロゲステロンデポ剤:無月経を起こし避妊効果があるが,不規則な少量の性器出血や可逆性の骨量減少が起こることがある。

他の治療法として排卵障害による異常子宮出血の治療にときに用いられるものには以下のものがある:

  • ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストまたはアンタゴニスト:これらの薬剤は卵巣のホルモン産生を抑制し無月経を起こす;術前に筋腫や子宮内膜を縮小させる目的で使用される。しかしながら,低エストロゲン状態による有害作用(例,骨粗鬆症)のため使用は6カ月間に制限される;これらはしばしば低用量ホルモン療法と同時に使用される。GnRHアゴニストは,最初に黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンのサージを起こすため,7~14日後に効果的となる(1, 2)。GnRHアンタゴニストは,女性においてゴナドトロピンおよび卵巣性ホルモンを迅速かつ可逆的に抑制し,多量の出血を減少させる。いずれのクラスの薬剤でも,add-back法による低用量エストロゲンおよびプロゲスチン療法も必要になる場合がある。

  • ダナゾール:月経時の出血を減少させる(子宮内膜萎縮を起こすことによる)が,アンドロゲン作用による多くの有害作用(低用量もしくは経腟製剤を用いることで軽減する場合がある)があるため,あまり頻繁に使用されていない。効果を得るためには,ダナゾールは通常,継続的に約3カ月間使用すべきである。通常は他の治療法が禁忌の場合にのみ用いられる。

妊娠を望み,出血が多量でない場合には,クロミフェン(50mg,経口,月経周期の5日目から9日目まで)による排卵誘発を試みてもよい。

処置

頸管拡張・内膜掻爬(D&C)を伴う子宮鏡検査は診断だけでなく治療にも有用である;無排卵性出血が重度の場合やホルモン療法が無効な場合には第1選択の治療となることがある。子宮鏡検査中にポリープや筋腫などの器質的原因を同定したり除去することがある。この手技は出血を減少させる可能性があるが,子宮腔癒着のために無月経が生じることもある(アッシャーマン症候群)。

子宮内膜アブレーション(例,レーザー,ローラーボール,レゼクトスコープ,熱または凍結による)は患者の60~80%において出血のコントロールに役立つ可能性がある。アブレーションは子宮摘出術よりも低侵襲で,回復時間が短い。当初アブレーションが効果的で,その後に多量の出血が再発した場合は,アブレーションを繰り返すことがある。この治療法で出血がコントロールできない場合や,出血が再発し続ける場合は,原因は子宮腺筋症である可能性があり,排卵障害による異常子宮出血によるものではない。子宮内膜アブレーション後も妊娠の可能性はある。アブレーション後の妊娠率は5%にまで達することがある。アブレーションは瘢痕化を引き起こし,そのため後に子宮内膜の検体採取が困難になる可能性がある。

筋腫の治療としては以下のものがある:

  • 子宮動脈塞栓術は低侵襲の手技で,X線透視下で筋腫を観察する。大腿動脈カテーテルを挿入し,塞栓粒子を注入して筋腫への血液供給を遮断する。

  • 筋腫核出術(子宮筋腫の除去)は,粘膜下筋腫に対しては子宮鏡下に,筋層内または漿膜下筋腫に対しては腹腔鏡下または開腹下に行われることがある。

子宮摘出術(腹腔鏡下,腹式,または腟式)はホルモン療法を拒否する患者や,他の治療にもかかわらず症候性貧血がみられるか,または持続的で不規則な出血によって生活の質(QOL)が低下している場合に推奨されることがある。

救急治療

緊急措置は出血が非常に多量な場合にごくまれに必要となる。電解質輸液,血液製剤,また必要に応じて他の手段を用いて患者の血行動態を安定させる。出血が続く場合は,子宮に膀胱カテーテルを挿入し,30~60mLの水で膨らませ,タンポナーデにより止血する。患者の状態が安定したら,出血をコントロールするためにホルモン療法を行う。

ごくまれに,無排卵性AUBによる非常に多量の出血がみられる患者で,結合型エストロゲン剤の静注(25mg,4~6時間毎,合計4回)が行われることがある。この治療により約70%の患者で出血が止まるが,血栓症のリスクは上昇する。その直後から混合型OCを投与し,これは数カ月間出血がコントロールされるまで継続する場合がある。

子宮内膜増殖症の治療

閉経後女性では,子宮内膜異型増殖症の治療として通常,子宮摘出を行う。

閉経前女性では,子宮内膜異型増殖症は酢酸メドロキシプロゲステロン(40mg,経口,1日1回,3~6カ月間)またはレボノルゲストレル放出IUDで治療を行うことがある(3)。約3~6カ月後に,子宮内膜を採取する。子宮内膜生検を再度行い増殖症の消失が確認された場合には,周期的に酢酸メドロキシプロゲステロン(5~10mg,経口,1日1回,毎月10~14日間)を,妊娠を望む場合にはクロミフェンを投与することがある。この治療を3カ月間行い,その後通常は子宮内膜生検により反応を評価する。再度行った子宮内膜生検が異型増殖症の持続や進行を示す場合には,子宮摘出が必要になる場合がある。

より良性の嚢胞性または腺腫性の増殖症は通常,周期的高用量プロゲスチン療法(例,周期的な酢酸メドロキシプロゲステロン投与)または,プロゲスチンもしくはレボノルゲストレル放出IUDで治療可能である;約3カ月後に再度検体を採取する。

治療に関する参考文献

  1. 1.Schlaff WD, Ackerman RT, Al-Hendy A, et al: Elagolix for heavy menstrual bleeding in women with uterine fibroids.N Engl J Med 382 (4):328–340, 2020.doi: 10.1056/NEJMoa1904351

  2. 2.de Lange ME, Huirne JAF: Linzagolix: An oral gonadotropin-releasing hormone receptor antagonist treatment for uterine fibroid-associated heavy menstrual bleeding.Lancet 400 (10356):866–867, 2002.doi: 10.1016/S0140-6736(22)01781-0

  3. 3.Mentrikoski MJ, Shah AA, Hanley KZ, et al: Assessing endometrial hyperplasia and carcinoma treated with progestin therapy.Am J Clin Pathol 38 (4):524–534, 2012.doi: 10.1309/AJCPM2TSDDF1MHBZ

要点

  • 異常子宮出血は一般的な医学的問題である;排卵障害は異常子宮出血の最も頻度の高い原因である。

  • 治療可能な出血原因がないか検査する;検査は妊娠検査,血算およびフェリチン,ホルモン値(TSH,プロラクチン,プロゲステロン)の測定,ならびにしばしば超音波検査,オフィスヒステロスコピー,および子宮内膜採取が行われる。

  • リスクのある患者では,子宮内膜増殖症または子宮内膜がんの有無を確認するために子宮内膜採取を行う。

  • 出血をコントロールするために薬剤が必要な場合,NSAID,トラネキサム酸,エストロゲン/プロゲスチンOC,レボノルゲストレル放出IUD,ゴナドトロピンアゴニストもしくはアンタゴニスト,または他のホルモン剤で治療する。

  • 薬剤に反応しない構造的病変または出血は,処置(例,子宮鏡検査,子宮内膜アブレーション,子宮摘出術)により治療する。

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