貨幣状湿疹は,貨幣状または円板状の湿疹性病変を特徴とする皮膚の炎症である。診断は臨床的に行う。治療法としては,コルチコステロイドの外用や光線療法などがある。
(皮膚炎の定義も参照のこと。)
貨幣状湿疹患者の多くはアトピー患者である。そのような症例では,貨幣状湿疹は単なるアトピー性皮膚炎の局所症状である(nummular atopic dermatitis)。アトピー性皮膚炎の患者では,貨幣状の局面がアトピー性皮膚炎のより一般的な他の症状と併存することがある。しかしながら,貨幣状湿疹の一部の患者ではアトピーはみられない。そのような患者では,病因は不明である。
病変部位または他の部位における細菌の定着またはアレルギー性接触反応(1)(自家感作またはid反応,最初の炎症部位または感染部位から離れた部位の皮膚炎)が原因として考えられる。
貨幣状湿疹は,中年以上の患者で最もよくみられる。
総論の参考文献
1.Bonamonte D, Foti C, Vestita M, et al: Nummular eczema and contact allergy: A retrospective study.Dermatitis 23(4):153–157, 2012.doi: 10.1097/DER.0b013e318260d5a0
貨幣状湿疹の症状と徴候
貨幣状湿疹の局面および斑は,紅色で鱗屑を伴い,典型的には強いそう痒を伴い,硬貨様の形状をとり,境界明瞭ではあるが,極めて明瞭というわけではない。病変の数は1個から約50個に及び,直径は2~10cmであることが多い。病変は体幹にも出現するが,四肢伸側と殿部の方が顕著となることが多い。
Image courtesy of the National Institute for Occupational Safety and Health’s Occupational Dermatoses web site (www.cdc.gov/niosh/ocderm.html).
貨幣状湿疹の診断
貨幣状湿疹の治療
カウンセリングなどの支持療法
止痒薬
コルチコステロイド(外用が最も多い)
光線療法
貨幣状湿疹の治療はアトピー性皮膚炎のそれと同様であり,カウンセリング,止痒薬,コルチコステロイドのほか,ときに光線療法(特にナローバンドUVB)などによる。
Nummular atopic dermatitisに対しては,デュピルマブ,カルシニューリン阻害薬の外用(タクロリムスおよびピメクロリムス),および/またはクリサボロール(crisaborole)を考慮すべきである。
まれに,免疫抑制薬の全身投与が必要となる。
要点
貨幣状湿疹はアトピー性皮膚炎の症状であることが多く,アトピーのない患者における貨幣状湿疹の病因は不明である。
そう痒を伴い,境界明瞭で,硬貨様の形状をした,鱗屑を伴う紅斑または紅色局面が単発または多発性に生じる。
診断は臨床的に行い,皮膚感染症および乾癬を除外する必要がある。
治療法としてはコルチコステロイドの外用や光線療法などがあり,まれに免疫抑制薬の全身投与が必要となる。