「皮膚炎」という言葉は,皮膚の炎症を意味する。しかしながら,臨床皮膚科学では,類似した臨床像を呈する同じ炎症反応パターンを共有する様々な皮膚症状を記載するのに皮膚炎という用語が用いられる。
組織学的には,リンパ球が血管外に遊出して真皮内に入り,次に表皮内に遊走して,表皮細胞間浮腫(海綿状態),過剰増殖,肥厚,および過角化を誘発する。この過程を指す皮膚病理組織学の用語は,海綿状皮膚炎(spongiotic dermatitis)ないし湿疹性皮膚炎(eczematous dermatitis)である。皮膚炎の種類によっていくつかの小さな組織学的特徴が異なる場合もあるが,皮膚炎を組織学的特徴のみで明確に鑑別することはできない。
湿疹は皮膚炎の類義語であるが,主に非医療従事者によって,アトピー性皮膚炎(特定の種類の皮膚炎)を指して用いられることが多い。Lichenoid dermatitis(苔癬様皮膚炎)とinterface dermatitis(真皮表皮接合部皮膚炎)は,組織学的な用語であり,臨床的な意味で皮膚炎を指すものではない。
「剥脱性皮膚炎」という用語はもはや使用すべきではない。これは以前,紅皮症を指して用いられていた。紅皮症は皮膚炎によって引き起こされることもあるが,皮膚炎以外の皮膚疾患によって引き起こされることもある。
皮膚炎疾患の症状および徴候は,その組織学的特徴によって生じる:
紅斑(皮膚の炎症および血流量の増加による)
皮膚の肥厚(表皮の細胞浸潤および浮腫による)
鱗屑(表皮の過剰増殖および過角化による)
そう痒(炎症時に放出されるヒスタミンに起因する可能性がある)
びらんと場合により滲出液,痂皮形成,および二次感染(いずれもそう痒による掻破に起因する)
急性期の皮膚炎の最も顕著な症状は紅斑と鱗屑である。慢性期の皮膚炎の最も顕著な症状は皮膚の肥厚および苔癬化である。