線状IgA水疱性皮膚症は,表皮基底膜部における免疫グロブリンA(IgA)の線状沈着によって水疱性類天疱瘡および疱疹状皮膚炎 と鑑別される,まれな水疱性疾患である。診断は皮膚生検と直接蛍光抗体法による。治療は外用コルチコステロイドによる。
水疱とは,内部を液体で満たされた隆起性の発疹のうち,直径が10mm以上のものである。
線状IgA水疱性皮膚症は,臨床的に小児期の水疱性疾患と成人の線状IgA水疱性皮膚症という2つの病型に分けられる。これらは臨床的には若干異なるものの,蛍光抗体法で認められるパターンは同一である。IgA自己抗体は,表皮真皮接合部のいくつかの抗原を標的とする。
感染症とペニシリン系薬剤が小児および成人症例の4分の1超で誘因となる。バンコマイシン,ジクロフェナク,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),カプトプリル,およびリチウムも原因として示唆されている。線状IgA水疱性皮膚症のリスクは,炎症性腸疾患(おそらくは自己抗体の産生に関与する関連病態による)またはリンパ増殖性腫瘍(成人)の患者では増大しているが,他の自己免疫疾患では増大しない。
線状IgA水疱性皮膚症の症状と徴候
線状IgA水疱性皮膚症では,小水疱または水疱の皮膚病変がしばしば集簇して(疱疹状に)配列する。幼児では,しばしば顔面および会陰部が侵され,四肢,体幹,手,足,および頭皮への進展がよくみられる。成人では,ほぼ必ず体幹が侵されるほか,頭皮,顔面,および四肢にもしばしば病変が生じる。病変はそう痒を伴うことが多く,熱感を伴うこともある。どちらの年齢層でも粘膜病変がよくみられ,稗粒腫は特徴的ではない。
線状IgA水疱性皮膚症の診断
皮膚生検および直接蛍光抗体法
線状IgA水疱性皮膚症の診断は,皮膚生検と直接蛍光抗体法による。組織学的所見は特異的ではないが,直接蛍光抗体法により,基底膜部に沿って線状に沈着したIgAが認められる。
線状IgA水疱性皮膚症の治療
原因薬剤の中止
軽症例では外用コルチコステロイド
小児ではエリスロマイシン
薬剤性の場合は,原因薬剤を中止するだけで治療できる可能性がある。
軽症例は外用コルチコステロイドで治療できる。小児では経口エリスロマイシンが使用できる。ジアフェニルスルホンおよびスルホンアミド系薬剤(用量および注意事項は疱疹状皮膚炎の場合と同様)ならびにコルヒチンが全年齢における代替薬である。しばしば粘膜病変より先に皮膚病変に反応がみられる。大半の患者では3~6年後に自然寛解がみられる。