疱疹状皮膚炎

執筆者:Daniel M. Peraza, MD, Geisel School of Medicine at Dartmouth University
レビュー/改訂 2022年 1月
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疱疹状皮膚炎は,セリアック病と強い関連がみられ,強いそう痒を伴う丘疹水疱性の皮疹を特徴とする慢性自己免疫性疾患である。典型的な所見は,強いそう痒を伴う紅斑性の蕁麻疹様病変と小水疱,丘疹,および水疱の集簇であり,通常それらは四肢伸側に左右対称に分布する。診断は皮膚生検と直接蛍光抗体法による。治療は通常,ジアフェニルスルホンまたはスルファピリジンとグルテン除去食による。

疱疹状皮膚炎は若年成人に発生することが多いが,小児や高齢者に生じることもある。黒人およびアジア人ではまれである。

疱疹状皮膚炎の患者は,ほぼ全例でセリアック病の組織学的所見が認められるが,その大半の症例でセリアック病は無症状である。疱疹状皮膚炎はセリアック病患者の15~25%で発生する。本疾患の患者では他の自己免疫疾患(甲状腺疾患,悪性貧血,糖尿病など)および小腸リンパ腫の発生率が高い可能性がある。IgAの沈着が真皮乳頭の先端部に集積して,好中球が引きつけられる;このIgA沈着は,グルテン除去食によって除去することができる。

疱疹状という用語は,病変が集簇する様子(ヘルペスウイルス感染症でみられる病変と同様)を表現したものであるが,ヘルペスウイルスとの因果関係を示すものではない。

疱疹状皮膚炎の症状と徴候

疱疹状皮膚炎の発症は,急性のこともあれば,緩徐なこともある。小水疱,丘疹,および蕁麻疹様病変が通常は肘関節および膝関節の伸側と仙骨部,殿部,および後頭部に左右対称に分布する。病変にはそう痒と熱感が伴う。そう痒が強く,皮膚が脆弱なため,小水疱はすぐに破れる傾向があり,破れていない小水疱を見つけることが難しい場合も多い。口腔病変が生じることもあるが,通常は無症状である。ヨウ化物およびヨウ素含有製剤によって皮膚症状が増悪することがある。

肘の疱疹状皮膚炎
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この写真には,肘関節伸側に生じた疱疹状皮膚炎の病変(左右対称のそう痒を伴う水疱性丘疹)が写っている。
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疱疹状皮膚炎の診断

  • 皮膚生検および直接蛍光抗体法

  • 血清マーカー

疱疹状皮膚炎の診断は,病変部および隣接する(病変部周囲の)一見正常な皮膚を対象とする皮膚生検および直接蛍光抗体法に基づく。直接蛍光抗体法では,真皮乳頭の先端部にIgAの顆粒状沈着が例外なく認められ,診断に重要である。

疱疹状皮膚炎患者には,全例でセリアック病の評価を行うべきである。IgA抗組織トランスグルタミナーゼ抗体,IgA抗表皮トランスグルタミナーゼ抗体,IgA抗筋内膜抗体などの血清マーカーが,診断の確定や進行のモニタリングの助けになる可能性がある。

疱疹状皮膚炎の治療

  • ジアフェニルスルホン

  • グルテン除去食

一般にジアフェニルスルホンで顕著な改善が得られる。ジアフェニルスルホンの初回用量は,成人では25~50mg,経口,1日1回,小児では0.5mg/kgである。通常はこの用量で,1~3日以内に疱疹状皮膚炎の症状(そう痒と熱感を含む)が劇的に緩和される。改善がみられれば,その用量を継続する。改善がみられない場合は,300mg/日を限度として1週毎に増量することができる。大半の患者は50~150mg/日の投与によく反応する。

ジアフェニルスルホンは溶血性貧血を引き起こすことがあり,そのリスクは治療開始から1カ月後で最高となり,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症の患者で高くなる。G6PD欠損症が疑われる患者には,ジアフェニルスルホンによる治療を開始する前に,同酵素欠損症の検査を行うべきである。メトヘモグロビン血症がよくみられるほか,より重篤な合併症として,肝炎,無顆粒球症,ジアフェニルスルホン症候群(肝炎およびリンパ節腫脹),ならびに運動神経障害がある。

ジアフェニルスルホンに耐えられない患者では,スルファピリジン500mg,経口,1日3回(またはサラゾスルファピリジン)が代替薬となる。スルファピリジンは最高2000mg,経口,1日3回までの用量で使用できる。スルファピリジンは無顆粒球症を引き起こすことがある。

ジアフェニルスルホンまたはスルファピリジンを投与する患者には,投与開始時に血算を行うべきである。血算はその後4週間は毎週,続く8週間は2~3週毎,その後は12~16週間毎に行う。

また,厳格なグルテン除去食も導入する。初期治療を行って,病状が安定したら,大半の患者では薬物療法を中止し,グルテン除去食による維持療法に移行することが可能であるが,そこまでには数カ月から数年を要することがある。グルテン除去食により腸症の改善も最大となり,5~10年間厳格に遵守すれば,小腸リンパ腫のリスクは低下する。

要点

  • ほぼ全ての疱疹状皮膚炎患者で,たとえ消化管症状がみられずとも,セリアック病の組織学的所見がみられ,小腸リンパ腫のリスクがある。

  • そう痒が強く,皮膚が脆弱なため,小水疱が全て破れ,そのため診察では明らかでないこともある。

  • 皮膚生検,病変組織と病変部周囲の一見正常な皮膚を対象とする直接蛍光抗体法,および血清学的検査により,診断を確定する。

  • 治療ではまず,皮膚症状をコントロールするためにジアフェニルスルホンまたは代替薬(例,スルファピリジン)を使用する。

  • その後は薬物療法を中止できるように,厳格なグルテン除去食のみでの長期のコントロール維持を試みる。

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