全身性エリテマトーデス(SLE)

(播種性紅斑性狼瘡)

執筆者:Alana M. Nevares, MD, The University of Vermont Medical Center
レビュー/改訂 2022年 10月
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全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な臨床像としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,自己免疫性血球減少症などがある。診断には臨床的および血清学的基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。

全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。全身性エリテマトーデス(SLE)は,白人と比べて黒人およびアジア人で頻度および重症度が高い。SLEは新生児を含むあらゆる年齢で発生する。一部の国では,SLEの有病率は関節リウマチに匹敵する。SLEは,遺伝的素因がある場合に自己免疫反応を生じさせる未知の環境誘因によって引き起こされる可能性がある。一部の薬物(例,ヒドララジン,プロカインアミド,イソニアジド,腫瘍壊死因子[TNF]阻害薬)は,可逆的なループス様の症候群を引き起こす。

SLEの症状と徴候

臨床所見は極めて多様である。SLEは,熱を伴って突然発生することもあれば,関節痛および倦怠感のエピソードを伴い数カ月もしくは数年かけて潜行性に発生することもある。血管性頭痛,てんかん,または精神症症状が初期所見である場合がある。あらゆる器官系に関係しうる症状が出現する可能性がある。周期的な増悪(再燃)が起こることがある。

関節の症状

間欠性の関節痛から急性の多関節炎に及ぶ関節症状が約90%の患者に起こり,他の症状出現の何年も前に現れることがある。ループスによる多関節炎は大半が破壊も変形も引き起こさない。しかしながら,長期にわたる症例では,骨びらんを伴わない変形が発生することがある(例,中手指節関節および指節間関節で,まれに骨びらんまたは軟骨のびらんを伴わずに整復可能な尺側偏位もしくはスワンネック変形[Jaccoud関節炎]が発生する)。他の多くの慢性疾患と同様に,線維筋痛症の有病率が高く,それにより関節周囲および全身性の疼痛ならびに疲労がみられる患者で診断に混乱が生じる可能性がある。

皮膚および粘膜の症状

皮膚病変には,頬部の蝶形紅斑(平坦または隆起で,一般的に鼻唇溝は侵されない)などがある。丘疹および膿疱がなく,皮膚萎縮があることは,SLEを酒さと鑑別するのに役立つ。ほかにも様々な紅斑性かつ硬い斑状丘疹状病変が,顔面および頸部の露出部,上胸部,ならびに肘など,あらゆる部位に生じる。皮膚の水疱形成および潰瘍化はまれであるが,粘膜の再発性の潰瘍(特に,硬口蓋および軟口蓋の移行部近くの硬口蓋中央部,頬および歯肉の粘膜,ならびに鼻中隔前部)がよくみられる(ときに粘膜のループスと呼ばれる);所見はときに中毒性表皮壊死融解症に類似することがある。

全身脱毛または局所的な脱毛がSLEの活動期によくみられる。脂肪織炎が皮下の結節性病変を生じることがある(ときにループス脂肪織炎または深在性ループスと呼ばれる)。血管炎による皮膚病変には,手掌および手指の斑点状紅斑,爪周囲の紅斑,爪郭部の梗塞,蕁麻疹,および触知可能な紫斑などがありうる。点状出血が血小板減少に続いて発生することがある。光線過敏症が一部の患者にみられる。

Tumidusループス(lupus erythematosus tumidus)は,露光部における一部環状のピンク色から紫色をした蕁麻疹様で瘢痕のない局面および/または結節を特徴とする。

凍瘡状ループスは,寒冷期に足趾,手指,鼻,または耳に生じる,鮮紅色から赤みがかった青色の圧痛を伴う結節を特徴とする。一部のSLE患者では扁平苔癬の特徴がみられる。

指趾の血管攣縮に起因するレイノー症候群によって,特徴的な蒼白化およびチアノーゼが生じる。

ループスの亜型も参照のこと。)

心肺の症状

心肺症状としては,再発を繰り返す胸膜炎がよくみられ,胸水を伴う場合もある。肺炎はまれであるが,肺機能の軽度の障害がよくみられる。ときにびまん性肺胞出血が起こる。予後は一般に不良である。その他の合併症としては,肺塞栓,肺高血圧症,縮小肺(shrinking lung syndrome)などがある。心合併症としては,心膜炎(最も一般的)や心筋炎などがある。重篤でまれな合併症は,冠動脈炎,弁膜障害,およびLibman-Sacks心内膜炎である。動脈硬化の進行(accelerated atherosclerosis)が罹病および死亡の原因として増加している。Ro(SSA)またはLa(SSB)に対する抗体を有する母親から生まれた新生児では,先天性心ブロックが生じる可能性がある。

リンパ組織

全身性リンパ節腫脹がよくみられ,特に小児,若年成人,および黒人に多いが,縦隔リンパ節腫脹は一般的ではない。脾腫が患者の10%に生じる。

神経症状

神経症状が,いずれかの部位の中枢もしくは末梢の神経系または髄膜が侵されることにより起こることがある。軽度認知障害がよくみられる。頭痛,人格変化,虚血性脳卒中,くも膜下出血,痙攣発作,精神症症状,無菌性髄膜炎,末梢神経障害および脳神経障害,横断性脊髄炎,舞踏アテトーゼ,または小脳機能障害などもみられることがある。

腎症状

腎障害が発生する可能性が常にあり,それがSLEの唯一の症状となることもある(ループス腎炎を参照)。腎障害は,無症状で良性のこともあれば,進行性で致死的である場合もある。腎病変は,限局性で通常は良性の糸球体炎から,びまん性で死に至ることがある膜性増殖性糸球体腎炎まで,重症度に幅がある。一般的な症状としては,タンパク尿(最も多い),赤血球円柱および白血球による尿沈渣異常,高血圧,浮腫などがある。早期のループス糸球体腎炎は,無症候性の尿路感染症と誤診されることがある。

産科の症状

産科の症状として,妊娠の早期および後期の胎児死亡などがある。抗リン脂質抗体を有する患者では,流産を繰り返すリスクが高い。妊娠は成功することがあるが(妊娠中のSLEを参照)(特に寛解の6カ月から12カ月後),SLEの再燃が妊娠中および特に分娩後によくみられる。妊娠は,寛解する時期とタイミングを合わせるべきである。妊娠中は,ハイリスク妊娠を専門とする産科医を含む集学的チームによる,再燃または血栓症に関する綿密なモニタリングを行うべきである。抗SSA抗体陽性の女性は,18週から26週まで,先天性心ブロックの可能性を評価するために週1回の頻度で胎児超音波検査を受けるべきである。

血液学的な症状

血液症状としては,貧血(慢性疾患に伴う貧血自己免疫性溶血性貧血),白血球減少(通常は細胞数1500/μL未満のリンパ球減少),血小板減少(通常は軽度であるが,ときに生命を脅かす自己免疫性血小板減少症)などがある。抗リン脂質抗体を有する患者では,再発性の動脈または静脈の血栓,血小板減少,および高確率で産科合併症が起こる。SLEの合併症の多くは,産科合併症を含め,おそらく血栓症が原因である。マクロファージ活性化症候群が生じることがある。

消化管の症状

消化管症状が,腸管の血管炎または腸管運動の減少によって生じることがある。さらに,SLEにより膵炎が生じることもまれにある。症状としては,漿膜炎に起因する腹痛,悪心,嘔吐,腸穿孔症状,偽閉塞などがありうる。SLEが肝実質疾患を引き起こすことはまれである。

SLEの診断

  • 臨床基準

  • 血球減少

  • 自己抗体

何らかのSLEの症状および徴候がある患者,特に若年女性ではSLEを疑うべきである。しかし,関節炎の症状が優勢である場合,早期のSLEは関節リウマチを含む他の結合組織(または結合組織以外の)疾患に類似していることがある。混合性結合組織病がSLEに類似する可能性があるが,全身性強皮症,リウマチ様の多関節炎,および多発性筋炎の特徴をも伴うことがある。感染症(例,細菌性心内膜炎,ヒストプラズマ症)もSLEに類似する可能性があり,治療に起因する免疫抑制の結果として発生することがある。サルコイドーシスおよび腫瘍随伴症候群などの疾患もSLEに類似する場合がある。

臨床検査によりSLEを他の結合組織疾患と鑑別できることがある。ルーチンの検査には以下を含めるべきである:

  • 抗核抗体(ANA)および抗二本鎖(ds)DNA抗体(抗dsDNA抗体)

  • 血算

  • 尿検査

  • 肝酵素および腎酵素を含む生化学検査

臨床では,European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology(EULAR/ACR)が策定したSLEの分類基準(EULAR/ACR全身性エリテマトーデス分類基準の表を参照)に頼る医師もいる。患者のANAが1:80以上の陽性の場合にのみ,この基準に適格となる。2019年のEULAR/ACR分類基準は臨床領域と免疫領域からなり,各基準は2~10点で重み付けされている。患者の点数が10点以上で,少なくとも1つの臨床基準が満たされている場合,SLEと分類される。しかしながら,ANA陽性はループスの診断を示唆するものではない。疲労および全身性の筋筋膜痛がみられ,そのほかに臨床所見および臨床検査所見がない状況でANA検査の陽性判定が意味をもつことはまれである。

表&コラム
表&コラム

蛍光抗体法によるANA検査

蛍光抗体法によるANA検査は,該当する症状と徴候を有する患者においてSLEに対する初回検査として最適であり,98%を超えるSLE患者でANA検査陽性(通常,1:80を超える高抗体価)となる。しかし,関節リウマチ,その他の結合組織疾患,自己免疫性甲状腺疾患,がん,さらには一般集団において,ANA検査で陽性になることがある。偽陽性率は,健常対照群において,ANA抗体価1:320で約3%からANA抗体価1:40で約30%まで様々である。ループス様症候群だけでなく,ヒドララジン,プロカインアミド,および腫瘍壊死因子α阻害薬などの薬物によってもANA検査の結果が陽性になる可能性がある;薬物を中止するとANAはいずれ陰性になる。ANAが陽性である場合,抗dsDNA抗体などのより特異的な検査を行うべきである;抗dsDNAの高抗体価はSLEに極めて特異的であるが,SLE患者に認められる割合は70%未満である。

その他のANAおよび抗細胞質抗体

ANA検査は非常に感度が高いが,SLEに特異的ではなく,そのため,他の自己抗体の所見が診断の参考に用いられる。具体的には,Ro(SSA),La(SSB),Smith(Sm),リボ核タンパク質(RNP),dsDNAなどの抗体である。Roは主に細胞質に分布しており,慢性皮膚エリテマトーデスを呈したANA陰性のSLE患者では,ときに抗Ro抗体が認められる。抗Ro抗体は,新生児ループスおよび先天性心ブロックの原因抗体である。抗Sm抗体は,SLEに極めて特異的であるが,抗dsDNA抗体と同様に,感度は高くない。抗RNP抗体は,SLEおよび混合性結合組織病のほか,ときに他の全身性自己免疫疾患や全身性強皮症の患者でもみられる。

その他の血液検査

白血球減少(通常はリンパ球減少)がよくみられる。溶血性貧血が起こることもあるが,ヘモグロビン値と赤血球数の減少は慢性疾患に伴う貧血によることの方が多い。SLEにおける血小板減少と特発性血小板減少性紫斑病との鑑別は,患者がSLEの他の特徴および/またはSLEに特異的な抗体(抗dsDNA抗体または抗Sm抗体)を有していなければ,困難または不可能な場合がある。SLE患者の5~10%において梅毒の血清学的検査で偽陽性が生じる。これらの検査結果はループスアンチコアグラントおよび部分トロンボプラスチン時間(PTT)の延長と関連している可能性がある。これらの検査の1つ以上で異常値がみられる場合,抗リン脂質抗体(例,抗カルジオリピン抗体)の存在が示唆されるため,次に酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で抗リン脂質抗体を直接測定すべきである。抗リン脂質抗体は,動脈もしくは静脈の血栓,血小板減少,および妊娠中では自然流産または後期の胎児死亡と関連するが,無症状の患者でみられることもある。

その他の試験は,重症度のモニタリングおよび治療の必要性の判定に有用である。血清補体値(C3,C4)は疾患の活動期にしばしば低下し,通常は活動性腎炎患者で最も低い。赤血球沈降速度(赤沈)は疾患の活動期に亢進することが多い。C反応性タンパク(CRP)の値は必ずしも上昇するわけではないが,高値であれば感染症および/または漿膜炎が懸念される。

腎障害

腎障害のスクリーニングは,尿検査から始める。赤血球円柱および/または白血球円柱は活動性腎炎を示唆する。腎疾患は通常無症状であるため,見かけ上寛解している患者についても,尿検査を一定の間隔(例,3~6カ月毎)で行うべきである。タンパク尿は,尿タンパク/クレアチニン比により推定するか24時間蓄尿で算出できる。腎生検は,タンパク質排泄量が500mg/日を超える患者,血尿(糸球体性と考えられる)または赤血球円柱がみられる患者で適応となり,腎疾患の状態の評価(すなわち,活動性の炎症か,炎症後の瘢痕か)と治療の指針の決定に役立つ。大部分の糸球体が硬化した慢性腎機能不全の患者では,積極的な免疫抑制療法が有益となる可能性は低い。

SLEの予後

経過は通常,慢性,再発性であり,予測不能である。何年も寛解が続くことがある。最初の急性期をコントロールすれば,非常に重症(例,脳血栓症または重度の腎炎)の場合でも,長期予後は通常良好である。大半の先進諸国における10年生存率は95%を超えている。診断の早期化とより効果的になった治療法が予後改善の一因である。合併症としては,免疫抑制による感染症や長期間のコルチコステロイド使用による骨粗鬆症などがある。冠動脈疾患のリスクの増大は若年死亡の一因となる可能性がある。

SLEの治療

  • SLEの全例にヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)

  • 軽症例には抗マラリア薬に加えて非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 重症例にはコルチコステロイド,免疫抑制薬,および抗マラリア薬

治療を単純化するために,SLEを軽度から中等度(例,発熱,関節炎,胸膜炎,心膜炎,発疹)または重度(例,溶血性貧血,重度の血小板減少性紫斑病,広範囲の胸膜および心膜の障害,びまん性肺胞出血または肺炎,腎炎,四肢または消化管の急性血管炎,病勢盛んな中枢神経系障害)に分類すべきである。

抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンは,再燃率と死亡率を低減することから,SLEの全例に対し重症度に関係なく適応となるが(1),グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症患者では,溶血を引き起こす可能性があるため,ヒドロキシクロロキンは使用されない。

(European League Against Rheumatism[EULAR]のSLEの管理に関する推奨も参照のこと。)

軽症から中等症

関節痛は通常,NSAIDによりコントロールする。しかしながら,消化管に対する有害作用(例,消化性潰瘍)があり,また冠動脈に対する毒性や腎毒性(例,間質性腎炎,乳頭壊死)も考えられることから,NSAIDの長期使用は推奨されない。皮膚疾患には外用薬(コルチコステロイド,タクロリムス)を使用することができるが,通常は皮膚科医の指導下で使用する。

ヒドロキシクロロキンなどの抗マラリア薬は関節および皮膚の症状に有用である。ヒドロキシクロロキンはSLEの再燃頻度と死亡率を低減させるため,SLE患者のほぼ全例で使用される。用量は5mg/kg(実体重),経口,1日1回である。ヒドロキシクロロキンの長期使用により中毒性黄斑症のリスクが高まるため,治療開始前に,黄斑症を除外するためベースラインの眼科診察を行うべきである。この薬剤を5年間使用した後は,網膜毒性を評価するために,眼科スクリーニングを年1回行うべきである。そのほかには,クロロキン250mgの1日1回経口投与およびキナクリン50~100mgの1日1回経口投与などがある。(クロロキンおよびヒドロキシクロロキン網膜症のスクリーニングに関する推奨も参照のこと。)ヒドロキシクロロキンは,まれに骨格筋または心筋に対して毒性を生じることがある。

コントロール不良の軽症から中等症の患者で,そのままではコルチコステロイド投与の適応になると予想される場合には,ヒドロキシクロロキンにメトトレキサート(15~20mg,経口または皮下,週1回),アザチオプリン(2mg/kg,経口,1日1回),またはミコフェノール酸モフェチル(1~1.5g,経口,1日2回)を追加することができる。最終的な目標は,コルチコステロイドを必要とせずに,または可能な限り低用量のみで疾患の寛解を維持することである。

病勢がコントロールされていない場合や頻回の再燃がみられる場合(特に関節,皮膚,または重度でない血液症状がある場合)は,ベリムマブ(10mg/kg,静注,2週間毎,3回に続いて10mg/kg,静注,月1回または200mg,皮下,週1回)を考慮すべきである(2)。これは,侵された器官系および疾患の重症度に応じて,ヒドロキシクロロキンに追加して使用したり,他の薬剤と併用したりすることができる。

重症例

急性で重度の症状をコントロールする導入療法後に維持療法を行うなどの治療がある。コルチコステロイドが第1選択の治療法である。活動性の重症例(すなわち,腎機能障害または中枢神経系障害を伴うループス腎炎)では典型的にコルチコステロイドと他の免疫抑制薬が併用される。

ループス腎炎は,治療効果に関して最も強いエビデンスの得られている合併症である。3日連続で行うメチルプレドニゾロン1gの緩徐な(1時間~)静注を初期治療とすることが多いが,このステロイドパルス療法に関する臨床試験のエビデンスはない。その後,プレドニゾン0.5~1mg/kgの1日1回(通常は40~60mgの1日1回)経口投与を開始し,SLEの症状に応じて用量を調節する。コルチコステロイドは,有害作用を制限するために,病状により可能となり次第,通常6カ月以内に漸減すべきである。シクロホスファミド(全身性エリテマトーデスに対するシクロホスファミド静注プロトコルの表を参照)またはミコフェノール酸モフェチル(3g/日,経口,2回)も,導入療法にコルチコステロイドとともに用いられる。

最近では,コルチコステロイドとミコフェノール酸またはコルチコステロイドとシクロホスファミドにベリムマブ10mg/kg,静注,月1回を追加することで,コルチコステロイドとミコフェノール酸またはコルチコステロイドとシクロホスファミドのみの場合と比較して,6カ月時点での腎反応率(renal response rate)および完全腎反応率の改善につながることが示されている(3)。ボクロスポリン(23.7mg,経口,1日2回)をミコフェノール酸モフェチルと併用し,コルチコステロイドを急速に漸減するコースで投与すると,コルチコステロイドとミコフェノール酸モフェチルのみの併用よりも1年後の腎転帰がより良好になることが示されている(4)。現在では,ループス腎炎(クラスIII,IV,V)の治療にベリムマブおよびボクロスポリンの両方がしばしば使用されているが,これらの薬剤の使用に関する明確なガイドラインはまだ存在しない(5)。ループス腎炎の分類は腎生検での組織学的所見に基づく(ループス腎炎の分類の表を参照)。

6カ月を超えるシクロホスファミドの使用は,がんリスク増大などの毒性の可能性があるため推奨されない。病勢がコントロールされたら,維持療法としてミコフェノール酸モフェチル(1~1.5g,経口,1日2回)またはアザチオプリン(0.5~1.5mg/kg,経口,1日2回)のいずれかに移行させる。シクロホスファミドが考慮されている妊娠可能年齢の女性には,性腺毒性のリスクについて情報を提供し,可能であれば卵巣保護または卵子採取のための不妊相談を勧めるべきである。

表&コラム
表&コラム

横断性脊髄炎などの中枢神経系ループスにおける治療の推奨は,症例報告に基づいたものであり,選択肢としては,コルチコステロイドに加えて,静注シクロホスファミドや静注リツキシマブなどがある(例,1gを1日目と15日目,6カ月間隔で投与)。

血小板減少症および溶血性貧血に対する第1選択の治療法としては,中用量または高用量のコルチコステロイド(典型的にはプレドニゾン,1mg/kg,経口,1日1回,最大80mg/日)と免疫抑制薬(アザチオプリン,2mg/kg,経口,1日1回またはミコフェノール酸モフェチル,1g,経口,12時間毎)の併用などがある。不応性血小板減少症には,静注用免疫グロブリン製剤,400mg/kg,1日1回の5日間連続投与,または1g/kg,1日1回の2日間投与が有用となる場合があり,特に高用量コルチコステロイドの禁忌がある場合(例,活動性感染症がある患者)に有用である。リツキシマブは難治例に対する代替の選択肢である(2)。

末期腎不全の患者には,透析の代わりに良好な治療成績が得られる腎移植を行うことがあり,特に寛解に入っている患者において行う。

重度のSLEの改善には4~12週間を要することが多い。脳,肺,または胎盤の血管の血栓形成または塞栓には,ヘパリンによる短期的な治療およびワルファリンによる長期的な治療が必要である。抗リン脂質抗体症候群の診断が確定した場合,通常は生涯にわたる治療(通常はワルファリン)の適応となる。国際標準化比の初期の目標は通常2~3である。

中等度から重度の全身性エリテマトーデス(特に重度の皮膚疾患を有する患者)の管理では,標準治療に新たな薬剤であるアニフロルマブ(I型インターフェロン受容体に対するIgG1κモノクローナル抗体)(300mg,静注,4週毎)を追加してもよい。しかしながら,ピボタル試験には活動性および重度の精神神経または腎疾患を有する患者が組み入れられていなかった(6)。

維持療法

慢性例は,寛解を維持するために最低用量のコルチコステロイド(例,経口プレドニゾン ≤ 7.5mg,1日1回またはそれと同等量)および炎症をコントロールする他の薬物(例,抗マラリア薬,免疫抑制薬[ミコフェノール酸モフェチルまたはアザチオプリン])で治療すべきである(2)。治療は第一に臨床的特徴に基づくべきであるが,特に過去の疾患活動性と相関する場合,その次に抗dsDNA抗体価または血清補体値を指針とすることもある。ただし,抗dsDNA抗体価も血清補体値も,腎以外の疾患の再燃とは相関しないことがある。特定の臓器病変を評価するために,他の適切な血液検査および尿検査を用いることがある。

コルチコステロイド療法を長期間受けている患者には,(骨粗鬆症の予防を参照)カルシウム,ビタミンD,およびビスホスホネートによる治療を考慮すべきである。

免疫抑制療法を併用する場合は,Pneumocystis jiroveciiなどの日和見感染症に対する予防措置(ニューモシスチス肺炎の予防を参照)を講じるとともに,一般的な感染症(例,レンサ球菌性肺炎インフルエンザCOVID-19)に対するワクチンを接種しておくべきである。

併存する病態および妊娠

全ての患者について動脈硬化がないか注意深くモニタリングすべきであり,心血管リスクの低減が管理の重要な要素となる(動脈硬化の治療を参照)。抗リン脂質抗体および血栓症の既往がある患者には,長期的な抗凝固療法が極めて重要である(抗凝固薬も参照)。

妊婦には,妊娠中もヒドロキシクロロキンの投与を継続すべきであり,低用量アスピリンも推奨される。過去の血栓症によって示される臨床的な抗リン脂質抗体症候群がみられる場合は,低分子または未分画ヘパリンによる十分な抗凝固療法が推奨される。妊婦が抗リン脂質抗体症候群の抗体陽性と判定され,妊娠後期の胎児死亡歴があるか第1トリメスターでの流産を繰り返している場合は,妊娠中および分娩後6週間の期間中に低分子ヘパリンまたは未分画ヘパリンの予防的投与を考慮できる。血清学的検査が陽性であるが産科および血栓イベントの既往がない場合の推奨は,あまり明確ではない。そのような患者の管理では,血液専門医,産科医,およびリウマチ専門医による共同管理を考慮すべきである。

ミコフェノール酸モフェチルには催奇形性がある。この催奇形性と,妊娠中の活動性SLEに関連した不良な転帰が知られていることから,妊娠は理想的には,6カ月以上の寛解期間中にすべきである。免疫抑制療法を継続する必要がある場合(例,ループス腎炎に対する継続的な維持療法)は,通常は妊娠の6カ月以上前にミコフェノール酸モフェチルからアザチオプリンに切り替える。

治療に関する参考文献

  1. 1.Alarcón GS, McGwin G, Bertoli AM, et al: Effect of hydroxychloroquine on the survival of patients with systemic lupus erythematosus: Data from LUMINA, a multiethnic US cohort (LUMINA L).Ann Rheum Dis 66(9):1168–1172, 2007.doi: 10.1136/ard.2006.068676

  2. 2.Fanouriakis A, Kostopoulou M, Alunno A, et al: 2019 update of the EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus. Ann Rheum Dis 78(6):736-745, 2019.doi:10.1136/annrheumdis-2019-215089

  3. 3.Furie R, Rovin BH, Houssiau F, et al: Two-year, randomized, controlled trial of belimumab in lupus nephritis. N Engl J Med 383(12):1117-1128, 2020.doi:10.1056/NEJMoa2001180

  4. 4.Rovin BH, Teng YKO, Ginzler EM, et al: Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet 397(10289):2070-2080, 2021.doi:10.1016/S0140-6736(21)00578-X.Erratum in: Lancet 397(10289):2048, 2021.

  5. 5.Bajema IM, Wilhelmus S, Alpers CE, et al.Revision of the International Society of Nephrology/Renal Pathology Society classification for lupus nephritis: clarification of definitions, and modified National Institutes of Health activity and chronicity indices. Kidney Int 93(4):789-796, 2018.doi:10.1016/j.kint.2017.11.023

  6. 6.Morand EF, Furie R, Tanaka Y, et al: Trial of anifrolumab in active systemic lupus erythematosus. N Engl J Med 382(3):211-221, 2020.doi:10.1056/NEJMoa1912196

要点

  • SLEでは関節および皮膚の臨床像が古典的とされているが,本疾患は皮膚,心臓および肺,リンパ組織,腎臓,消化器系,造血系,生殖系,神経系など,様々な器官系を侵す可能性がある。

  • SLEの診断の確定には,European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology(EULAR/ACR)の基準を用いることができる。

  • 検査のうち,スクリーニングには極めて感度の高いANAを用いるが,確定にはより特異度の高い自己抗体(例,抗dsDNA抗体,抗Sm抗体)を用いる。

  • 全ての患者について腎障害がないか評価する。

  • 全ての患者をヒドロキシクロロキンで治療し,軽症例には必要に応じてNSAIDを使用する。

  • SLEの中等症例または重症例にはコルチコステロイドを使用し,ループス腎炎,中枢神経系ループス,ヒドロキシクロロキンに反応しない皮膚症状,びまん性肺胞出血,血管炎,再発性の漿膜炎,または心症状には免疫抑制薬を使用する。

  • 寛解を維持するために,可能な限り低用量のコルチコステロイドおよび炎症をコントロールする他の薬剤を使用する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy (2016 Revision)

  2. 2019 European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology Classification Criteria for Systemic Lupus Erythematosus

ループスの亜型

円板状エリテマトーデス(DLE)

ときに慢性皮膚エリテマトーデス(chronic cutaneous lupus erythematosus)とも呼ばれるDLEは,ループスの一部として生じることがある一連の皮膚変化であり,全身性病変を伴うことも伴わないこともある。皮膚病変は紅色局面として始まり,萎縮性瘢痕へと進行する。顔面,頭皮,および耳など,皮膚の露光部に集合的に生じる。無治療では,病変が拡大して中央部分の萎縮および瘢痕が生じる。広範な瘢痕性脱毛症がみられることがある。粘膜病変が顕著となることがある(特に口腔内)。ときに病変が肥厚し,扁平苔癬に類似することがある(肥厚性ループス[hypertrophic lupus]または疣贅状ループス[verrucous lupus]と呼ばれる)。

円板状エリテマトーデスの臨床像
円板状エリテマトーデス(頭皮)
円板状エリテマトーデス(頭皮)

この画像には,頭皮の萎縮性瘢痕およびその結果としての脱毛を引き起こしている円板状の紅色局面が写っている。

Image courtesy of Karen McKoy, MD.

慢性の円板状エリテマトーデス
慢性の円板状エリテマトーデス

この写真には慢性の円板状エリテマトーデスに特徴的な角質増殖性かつ紅斑性の局面が写っている。

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顔面の円板状エリテマトーデス(1)
顔面の円板状エリテマトーデス(1)

この画像には,円板状エリテマトーデスにより生じた顔面の紅色局面および萎縮性瘢痕が写っている。

Image courtesy of Karen McKoy, MD.

顔面の円板状エリテマトーデス(2)
顔面の円板状エリテマトーデス(2)

この画像には,円板状エリテマトーデスにより生じた顔面の紅色局面が写っている。

Image courtesy of Karen McKoy, MD.

典型的な円板状の病変を示す患者は,全身性エリテマトーデス(SLE)であるかどうかを評価すべきである。DLEでは,ほぼ例外なくdsDNAに対する抗体が認められない。生検ではDLEとSLEは鑑別されないが,その他の疾患(例,リンパ腫またはサルコイドーシス)を除外できる。生検は皮膚病変の活動性の辺縁で行うべきである。

DLEの早期治療により難治性の萎縮を予防できる。日光または紫外線への曝露を最小限にすべきである(例,屋外では強力なサンスクリーン剤を使用)。

外用コルチコステロイドの軟膏(特に乾燥皮膚に対し)またはクリーム(軟膏より油分が少ない)の1日3~4回塗布により(例,トリアムシノロンアセトニド0.1%または0.5%,フルオシノロン0.025%または0.2%,フルランドレノリド0.05%,吉草酸ベタメタゾン0.1%,および,特にジプロピオン酸ベタメタゾン0.05%)通常は小さな病変が退行する;これらは過度にまたは顔面(皮膚萎縮が引き起こされる部位)に使用すべきではない。難治性の病変は,フルランドレノリドを塗布したビニールテープで覆ってもよい。

あるいは,トリアムシノロンアセトニドの0.1%懸濁液の皮内注射(1部位につき0.1mL未満)により病変が消失することがあるが,二次性の萎縮が続発することが多い。抗マラリア薬(例,ヒドロキシクロロキン,5mg/kg,経口,1日1回または2.5mg/kg,経口,1日2回)も,顔面の病変用も含めて第1選択の治療法となっている。

第1選択の治療法が不成功に終わった場合は,ヒドロキシクロロキン200mg/日に加えてキナクリン50~100mgの1日1回経口投与,またはヒドロキシクロロキンに加えてメトトレキサート,ミコフェノール酸モフェチル,もしくはアザチオプリンの併用療法を用いる。

亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)

SCLEの患者では,繰り返す発疹が広範囲にみられる。環状または丘疹落屑性の病変(乾癬様病変)が,顔面,腕,および体幹に発生することがある。病変は通常,光線過敏性であり,色素減少を生じることがあるが,瘢痕化はまれである。SCLEは薬剤性のこともあり,例えば,降圧薬(例,利尿薬,カルシウム拮抗薬,β遮断薬),プロトンポンプ阻害薬(例,オメプラゾール,パントプラゾール),腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬の生物学的製剤(例,アダリムマブ),抗真菌薬(例,テルビナフィン)によって誘発される。

約30~62%のSCLE患者は,American College of RheumatologyのSLE分類基準を満たす。SCLEでは関節炎および疲労がよくみられるが,神経症状および腎症状はみられない。患者は抗核抗体(ANA)陽性の場合もANA陰性の場合もある。通常はRo(SSA)に対する抗体を認める。Ro抗体を有する母親から産まれた乳児は,先天性のSCLEまたは先天性心ブロックを有している可能性がある。SCLEはSLEと同様に治療する

亜急性皮膚エリテマトーデス
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この画像には,亜急性皮膚エリテマトーデスに典型的な丘疹落屑性病変が写っている。
Image courtesy of Karen McKoy, MD.
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