小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)

執筆者:Kingman P. Strohl, MD, Case School of Medicine, Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 10月
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードである。症状としては,いびき,ときに落ち着きのない睡眠,夜間の発汗,朝の頭痛,集中困難などがある。OSAの合併症として,学習または行動障害,成長障害,肺性心,および肺高血圧症などがありうる。診断は睡眠ポリグラフ検査による。治療は通常,アデノイド口蓋扁桃摘出術による。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群も参照のこと。)

小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率は約2%である。この疾患は十分に診断が行われておらず,重篤な続発症に至ることがある。

小児におけるOSAの病因

小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の危険因子としては以下のものがある:

小児におけるOSAの症状と徴候

大半のOSAの小児では親がいびきに気づくが,たとえ重症のOSAでも,いびきが報告されない場合もある。その他の睡眠症状としては,落ち着きのない睡眠,夜間の発汗,観察される無呼吸などがありうる。夜尿がみられることもある。

日中の徴候と症状としては,鼻閉,口呼吸,朝の頭痛,集中困難,多動(眠気の症状としてみられる)などがありうる。覚醒中の眠気はOSAの成人と比べると頻度が低い。

パール&ピットフォール

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の小児では,覚醒中の眠気が成人より少ない。

OSAの合併症には,学習面の問題行動面の問題肺性心肺高血圧症,ならびに成長障害などがありうる。

検査では異常が判明しないこともあれば,閉塞に寄与する顔面,鼻,または口腔の解剖学的異常,II音の肺動脈成分の亢進,または成長障害などが明らかになることもある。

小児におけるOSAの診断

  • 小児向け睡眠ポリグラフ検査にオキシメトリーおよび呼気終末二酸化炭素モニタリングを併用する

いびきまたは危険因子のある小児では閉塞性睡眠時無呼吸症候群が考慮される(1)。OSAの症状がみられれば,睡眠検査室で,オキシメトリーおよび呼気終末二酸化炭素モニタリングを含む終夜睡眠ポリグラフ検査を用いて診断検査を行う。睡眠ポリグラフ検査による診断基準(1時間当たりの無呼吸低呼吸指数 > 2)は,成人の場合より低く設定されている。在宅睡眠ポリグラフ検査が使用される頻度が増えてきているが,失敗率は高い。

睡眠ポリグラフ検査によりOSAの診断を確定できるが,患児に睡眠ポリグラフ検査の異常を説明できる心疾患および肺疾患がないことも診断の必須要件である。睡眠ポリグラフ検査中における睡眠段階と体位の影響の分析は,上気道閉塞の関与を示すのに役立つ可能性がある。このため,睡眠ポリグラフ検査の結果は初期治療の決定(例,扁桃摘出術,CPAP)に役立つ可能性がある。

臨床評価から他の疾患の併存が疑われる場合,その他の検査による評価も行う。その場合,例えば,心電図,胸部X線,動脈血ガス測定,および上気道の画像検査または軟性ファイバースコープによる鼻咽頭鏡検査などを行う。

診断に関する参考文献

  1. 1.Gulotta G, Iannella G, Vicini C, et al: Risk factors for obstructive sleep apnea syndrome in children: state of the art. Int J Environ Res Public Health 16(18):3235, 2019.doi:10.3390/ijerph16183235

小児におけるOSAの治療

  • アデノイド口蓋扁桃摘出術または先天性小顎症の矯正

  • 集中的な支持療法によるCPAPおよび/または減量

アデノイド口蓋扁桃摘出術は通常,扁桃肥大および/またはアデノイド以外は健康な閉塞性睡眠時無呼吸症候群の小児に効果的である。アデノイド切除のみではしばしば効果が不十分である。アデノイド口蓋扁桃摘出術を受ける小児のうち,OSAの小児では非OSAの小児と比べ,周術期の気道閉塞リスクが高い;そのため綿密なモニタリングが重要である。

他の疾患がある小児,呼吸調節を変更する複雑な解剖学的異常もしくは遺伝性疾患がある小児,または心肺合併症がある小児は,小児のOSA管理に精通した医師へのコンサルテーションを行うべきである。アデノイド口蓋扁桃摘出術が効果的となる場合もあれば,いくらか症状を軽減できるだけの場合もある(1)。OSAの原因となっている解剖学的異常に応じて,別の外科的手技が適応となることもある(例,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術,舌または顔面中央部の手術)。

持続陽圧呼吸療法(CPAP)は,矯正手術の適応がない場合とアデノイド口蓋扁桃摘出術の施行後もOSAが続く場合に用いられることがある。

小児の肥満はOSAの危険因子であるため,肥満児では減量によりOSAの重症度を下げることができ,その他の健康上の便益を得られるが,長期的に見て,減量が単独療法としてOSAに対する十分な治療となることはまれである。

夜間の酸素投与は,根治的な治療が完了するまでの低酸素血症の予防に役立つ可能性がある。

アレルギー性鼻炎の治療は集中的に行うべきである。コルチコステロイドと抗菌薬は通常は適応とならない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bitners AC, Arens R: Evaluation and management of children with obstructive sleep apnea syndrome. Lung 198(2):257-270, 2020.doi:10.1007/s00408-020-00342-5

要点

  • 小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の危険因子には,肥満,扁桃肥大またはアデノイド,解剖学的異常(頭蓋顔面異常など),遺伝学的異常,薬剤,筋緊張亢進または筋緊張低下を起こす疾患などがある。

  • 学習面および行動面の問題が重篤な合併症となる可能性がある。

  • 小児OSAの診断は,養育者が確認した症状および睡眠ポリグラフ検査の結果に基づいて行う。

  • 閉塞の解剖学的原因を矯正する(例,アデノイド口蓋扁桃摘出術または小顎症の矯正)。

  • 手術の適応がない,または手術が完全に効果的でない場合は持続陽圧呼吸療法かつ/または減量を考慮する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Bitners AC, Arens R: Evaluation and management of children with obstructive sleep apnea syndrome. Lung 198(2):257-270, 2020.doi:10.1007/s00408-020-00342-5

  1. American Thoracic Society: Obstructive Sleep Apnea in Children: Two page OSA summary for patients that includes action steps

  2. American Academy of Sleep Medicine: Detailed patient information explaining the importance of healthy sleep and treatment options for sleep disorders

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