アレルギー性鼻炎

執筆者:James Fernandez, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 10月
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アレルギー性鼻炎は,季節性または通年性のそう痒,くしゃみ,鼻漏,鼻閉,およびときに結膜炎で,花粉または他のアレルゲンへの曝露によって発生する。診断は病歴およびときに皮膚テストによる。第1選択の治療は,経鼻コルチコステロイドの投与(経口または経鼻抗ヒスタミン薬の併用は問わない)または経口抗ヒスタミン薬と経口鼻閉改善薬の併用による。

アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。)

アレルギー性鼻炎は,季節的または1年を通じて(通年性鼻炎の形で)起こることがある。季節性鼻炎は通常アレルギー性である。少なくとも25%の通年性鼻炎は非アレルギー性である。

季節性のアレルギー性鼻炎(花粉症)は,季節および地域によって様々な植物由来のアレルゲンによって引き起こされることが最も多い。一般的な植物由来のアレルゲンには以下のものがある:

  • 春:樹木の花粉(例,カシ,ニレ,カエデ,ハンノキ,カバ,ネズ,オリーブ)

  • 夏:イネ科花粉(例,ギョウギシバ,オオアワガエリ,ハルガヤ,カモガヤ,セイバンモロコシ)および雑草花粉(例,ロシアアザミ,ヘラオオバコ)

  • 秋:その他の雑草花粉(例,ブタクサ)

さらに地域によっても原因が異なり,季節性のアレルギー性鼻炎はときに空気中の真菌(カビ)の胞子によって引き起こされる。

通年性鼻炎は,室内の吸入アレルゲン(例,チリダニの糞,ゴキブリの成分,動物のフケ)への1年を通じた曝露によって,または一連の季節の植物の花粉に対する強い反応性によって引き起こされる。

アレルギー性鼻炎と喘息はしばしば併存し,鼻炎および喘息が同じアレルギー性の機序に起因するのか(one-airway hypothesis),鼻炎が個別の喘息の誘因であるのかは不明である。

非アレルギー性の通年性鼻炎で多くみられる種類として,感染性鼻炎,血管運動性鼻炎,薬剤性鼻炎(例,アスピリンまたは非ステロイド系抗炎症薬[NSAID]によるもの),萎縮性鼻炎,および好酸球増多を伴う非アレルギー性鼻炎(NARES)などがある。

アレルギー性鼻炎の症状と徴候

患者には,そう痒(鼻,眼,または口),くしゃみ,鼻漏,ならびに鼻および副鼻腔の閉塞がみられる。副鼻腔の閉塞は前頭部痛を引き起こすことがある;副鼻腔炎は頻発する合併症である。特に喘息もみられる場合は,咳嗽および喘鳴も起こることがある。

通年性鼻炎の最も顕著な特徴は慢性的な鼻閉であり,小児では慢性中耳炎につながることがある;1年を通じて症状の重症度は変化する。そう痒は,季節性鼻炎におけるものより著明ではない。慢性副鼻腔炎および鼻茸が発生することがある。

徴候には,浮腫状で青赤色の鼻甲介,および季節性のアレルギー性鼻炎の一部症例における結膜充血および眼瞼浮腫などがある。

アレルギー性結膜炎がある場合には,症状として,両眼の軽度から重度のそう痒,結膜充血,光線過敏症,眼瞼浮腫,水様性または糸を引く眼脂などがみられる。

アレルギー性鼻炎の診断

  • 臨床的評価

  • ときに皮膚テスト,アレルゲン特異的血清IgE検査,またはその両方

アレルギー性鼻炎は多くの場合病歴のみに基づいて診断できる。診断検査をルーチンに行う必要はないが,経験的に治療して患者に改善がみられない場合は例外である;そのような患者に対しては,皮膚テストを行って,花粉(季節性)に対する反応,またはチリダニの糞,ゴキブリ,動物のフケ,カビ,もしくは他の抗原(通年性)に対する反応を特定し,それを追加的治療の指針として使用できる。

ときに,皮膚テストの結果が紛らわしかったり,検査が行えなかったりすることがある(例,患者が結果を妨げる薬剤を服用しており,安全に中止できない);その場合は,アレルゲン特異的血清IgE検査を行う。

アレルギー性鼻炎を確定するために,好酸球を検出する鼻汁塗抹検査を行うことができる。この検査は現在ではまれにしか行われないが,小児では採血などの針を用いる検査の代わりとして有用な方法となりうるほか,鼻炎の評価における追加の手段としても使用できる。この検査の感度および特異度は不明である(1)。鼻汁塗抹で好酸球増多症が認められ,かつ皮膚テストが陰性であれば,アスピリン過敏症または好酸球増多を伴う非アレルギー性鼻炎(NARES)が示唆される。

非アレルギー性の通年性鼻炎の診断も通常は病歴に基づく。アレルギー性鼻炎を想定した治療に対する臨床反応が認められず,皮膚テストおよび/またはアレルゲン特異的血清IgE検査の結果が陰性の場合でも非アレルギー性の原因が示唆される;考慮すべき疾患には,鼻腫瘍,アデノイドの肥大,肥厚性鼻甲介,多発血管炎性肉芽腫症,およびサルコイドーシスなどがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Pal I, Babu AS, Halder I, Kumar S: Nasal smear eosinophils and allergic rhinitis.Ear Nose Throat 96 (10-11):E17–E22, 2017.doi: 10.1177/0145561317096010-1105

アレルギー性鼻炎の治療

  • 抗ヒスタミン薬

  • 鼻閉改善薬

  • 経鼻コルチコステロイド

  • 季節性または重度の難治性の鼻炎に対して,ときに脱感作

季節性および通年性のアレルギー性鼻炎に対する治療は概して同じであるが,通年性鼻炎にはアレルゲンの除去または回避(例,チリダニおよびゴキブリの駆除)を試みることが推奨される。季節性または重度の難治性の鼻炎には,脱感作療法が有用な場合がある。

一次治療で最も効果的な薬物療法は以下のものである:

  • 経口または鼻腔内抗ヒスタミン薬の併用を問わず,鼻腔内コルチコステロイド

  • 経口抗ヒスタミン薬に加えて経口鼻閉改善薬(例,プソイドエフェドリンなどの交感神経刺激薬)

鼻閉改善薬の鼻腔内噴霧剤(例,オキシメタゾリン,フェニレフリン)は,鼻閉の短期間の緩和に用いられる。リバウンドによる鼻閉が生じる可能性があるため,通常は連続3日間を超える使用は推奨されない。

それほど効果的ではないが,代替薬として,経鼻肥満細胞安定化薬(例,クロモグリク酸[cromolyn])の1日3回または1日4回投与,鼻腔内H1受容体拮抗薬であるアゼラスチンの1~2噴霧を1日2回,および経鼻イプラトロピウム0.03%の2噴霧を4時間~6時間毎などがあり,鼻漏が軽減する。

アゼラスチン/フルチカゾンの配合剤(137μg/50μg)が入手可能である。初回量は,各鼻孔に1噴霧,1日2回である。

経鼻薬の方が全身的に吸収される薬物が少ないため,経口薬よりも好ましいことが多い。

生理食塩水による鼻洗浄は,忘れられがちであるが,粘度の高い鼻汁を流動化し,鼻粘膜を潤すのに役立つ;種々の生理食塩水キットならびに洗浄器具(例,スクイーズボトル,バルブシリンジ)などのキットをOTC医薬品として入手したり,患者自身が溶液を用意したりできる。

ロイコトリエン阻害薬のモンテルカストはアレルギー性鼻炎の症状を軽減するが,精神系の有害作用(例,幻覚,強迫症,自殺念慮および自殺行動)のリスクのため,他の治療が効果的でないかそれらに耐えられない場合にのみ使用すべきである。

抗IgE抗体のオマリズマブは,アレルギー性鼻炎の治療として使用されているが,より安価で効果的な代替薬が利用可能なため,おそらく役割が限られる。

アレルギー性鼻炎の予防

  • 誘因の回避

  • ときに脱感作

誘因の回避

通年性のアレルギーでは,可能であれば誘因を排除または回避すべきである。対策としては以下のものがある:

  • こまごました雑貨,雑誌,本,ぬいぐるみなど,塵が蓄積する物の除去

  • 合成繊維の枕および不透過性のマットレスカバーの使用

  • シーツ,枕カバー,および毛布を熱湯で頻繁に洗浄

  • 掃き掃除,掃除機がけ,モップかけなどの自宅の頻繁な清掃

  • 布張りの家具および絨毯の除去またはそれらの頻繁な掃除機がけ

  • ひだのあるカーテンやシェードのブラインドへの変更

  • ゴキブリ駆除による曝露解消

  • 地下室および他の通気が悪く湿気の多い部屋における除湿機の使用

  • HEPA(high-efficiency particulate air)フィルター付き掃除機の使用

  • 誘因となる食品の回避

  • ペットを特定の部屋または屋外に限定

非アレルギー性の補助的な誘因(例,タバコ煙,強い香り,刺激性のガス,空気汚染,低温,高湿度)も可能であれば回避または管理すべきである。

脱感作

脱感作療法は,季節性のアレルギー性鼻炎に用いる方が通年性よりも効果的な場合がある;以下の場合に適応となる:

  • 症状が重度である。

  • アレルゲンを回避できない。

  • 薬物治療が不十分である。

脱感作で最初の試みは,次の季節に備えるために花粉の季節が終わったらすぐに始めるべきである;脱感作を花粉の季節中に開始した場合は,対象者のアレルギー性免疫がすでに最大に刺激されているため,有害反応が増加する。

5種イネ科花粉舌下錠(Oralair®—5種のイネ科植物[ハルガヤ,カモガヤ,ホソムギ,オオアワガエリ,およびナガハグサ]の花粉の抽出物)を使用した舌下免疫療法は,雑草花粉によるアレルギー性鼻炎の治療に用いられることがある。代替薬はオオアワガエリ抽出物の舌下錠(Grastek®)である。用法・用量は以下の通りである:

  • 成人:5種イネ科花粉抽出物(Oralair®)300IR(index of reactivity)錠1錠またはオオアワガエリ抽出物(Grastek®)2800BAU(bioequivalent allergy unit)錠1錠を1日1回服用

  • 5~17歳の患者:1日目は5種イネ科花粉抽出物100IR錠1錠,2日目は100IR錠2錠を同時に服用,3日目以降は300IR錠1錠を1日1回

  • イネ科花粉によるアレルギー性鼻炎の5歳以上の患者:オオアワガエリ花粉抽出物2800BAU錠1錠を1日1回服用

初回用量は医療施設で投与し,アナフィラキシーが起こる可能性があるため,投与後30分間は患者を観察すべきである。初回投与が耐えられれば,以降の投与は患者が自宅で毎日服用できる。治療は,それぞれのイネ科花粉の季節が始まる4カ月前から開始し,その季節を通して行う。

ブタクサ花粉またはチリダニのアレルゲン抽出物を使用した舌下免疫療法が,これらのアレルゲンに誘発されるアレルギー性鼻炎の治療に用いられることがある。

自宅で免疫療法を受けるアレルギー性鼻炎の患者は,アナフィラキシー反応が起きた場合に使用するアドレナリン充填済みの自己注射器を携行すべきである【訳注:日本ではアレルギー性鼻炎にアドレナリン自己注射を用いることはない(アナフィラキシーを患う場合のみ)】。

要点

  • 季節性鼻炎は通常,花粉に対するアレルギー反応である;通年性アレルギー性鼻炎は,室内の吸入アレルゲンへの1年を通じた曝露によって,または一連の季節の植物の花粉に対する強い反応性によって引き起こされる。

  • アレルギー性鼻炎の患者には,咳嗽,呼気性喘鳴,前頭部痛,副鼻腔炎,または特に通年性鼻炎の小児で中耳炎がみられることがある。

  • アレルギー性鼻炎の診断は通常病歴に基づく;経験的な治療に患者が反応しない場合に限って,皮膚テスト,ときにアレルゲン特異的血清IgE検査が必要である。

  • 鼻腔内コルチコステロイドは最も効果的な治療法であり,全身的な作用がほとんどないため最初に試す。

  • その他の治療法としては,抗ヒスタミン薬および鼻閉改善薬の経口および鼻腔内投与などがある;肥満細胞安定化薬の鼻腔内投与はそれほど効果ではない。

  • 脱感作舌下免疫療法は,症状が重度である場合,アレルゲンを回避できない場合,または薬物治療が不十分な場合に適応となる。

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