肝硬変

執筆者:Tae Hoon Lee, MD, Icahn School of Medicine at Mount Sinai
レビュー/改訂 2022年 1月
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肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像としては,門脈圧亢進症腹水,肝性脳症,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断は通常,非侵襲的な画像検査によるが,まれに肝生検が必要になる。管理としては,支持療法と原因となった肝疾患の治療を行う。

肝硬変は世界全体では14番目に多い死亡原因となっている。

肝硬変の病因

肝硬変の原因は線維化の原因と同じである(肝線維化を引き起こしうる疾患および薬物の表を参照)。医療などの資源が豊富な国では,大半の症例が慢性のアルコール乱用慢性ウイルス性肝炎(B型およびC型肝炎),または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)によるものである。アジアおよびアフリカの一部地域では,風土病としてのB型慢性肝炎による肝硬変がしばしばみられる(B型およびC型肝炎に関する追加情報については,肝炎ウイルスの特徴の表を参照のこと)。原因不明の肝硬変(特発性肝硬変)は,具体的な原因(例,C型慢性肝炎,NASH)が数多く同定されるようになったことで,減少してきている。胆管の機械的閉塞,原発性胆汁性胆管炎,および原発性硬化性胆管炎でみられるように,胆管の傷害によっても肝硬変が生じることもある。

肝硬変の病態生理

次の2つの主な構成要素から成る:

  • 肝線維化

  • 再生肝細胞

肝細胞の傷害および喪失への反応として,増殖調節因子により肝細胞過形成(再生結節を形成する)と動脈の増生(血管新生)が誘導される。増殖調節因子としては,サイトカインと肝成長因子(例,上皮増殖因子,肝細胞増殖因子,形質転換増殖因子α,腫瘍壊死因子)がある。インスリンおよびグルカゴンの分泌と肝内血流のパターンにより,結節がどの部位にどのように発生するかが決まってくる。

血管新生により,結節を取り囲む線維鞘の中に新たな血管が形成される。それらの血管は,肝動脈および門脈を肝細静脈と繋ぎ,肝内循環経路を復旧させようとする。このような血管の相互接続が生じると,相対的に静脈還流の血流量が低下しつつ高圧となり,正常時の血液量を維持できなくなる。その結果として,門脈圧が上昇する。このような血流の歪みは,再生結節が肝細静脈を圧迫するために増強された門脈圧亢進症をさらに進行させる。

線維化から肝硬変への進行の速さと肝硬変の形態像は,患者毎に様々である。このような多様性がみられる理由は,おそらく傷害の要因となった刺激への曝露やそれに対する反応性の程度に個人差があるためと考えられる。

合併症

門脈圧亢進症は,肝硬変の重篤な合併症として最も頻度の高いものであるが,それ自体も以下のような新たな合併症の原因となる:

腹水に感染が起こることがある(特発性細菌性腹膜炎)。門脈肺高血圧症は,心不全の症状で顕在化することがある。門脈圧亢進症の合併症は,重篤な病態や死亡につながりやすい傾向がある。

肝硬変は他の心血管系合併症を引き起こすこともある。血管拡張,肺内右左短絡,および換気血流不均衡は,低酸素症(肝肺症候群)につながる可能性がある。

進行性の肝構築の喪失は,肝機能の障害から,肝機能不全へと至るが,凝固障害,急性腎障害(肝腎症候群),および肝性脳症として顕在化する。肝性脳症は,羽ばたき振戦,錯乱,または肝性昏睡を特徴とし,肝臓で消化管由来の毒素を代謝できないことに起因する。血清アンモニア濃度の上昇は,肝性脳症の診断に役立つことがあるが,その値は肝性脳症の重症度とよく相関するわけではない。

肝細胞からの胆汁分泌量が減少し,胆汁うっ滞と黄疸の発生につながる。腸管内の胆汁量が減少すると,食物中の脂肪(トリグリセリド)や脂溶性ビタミンの吸収不良を来す。ビタミンDの吸収不良は骨粗鬆症の一因となる。低栄養とサルコペニアがよくみられる。これらは食物摂取量の減少を伴う食欲不振の結果である場合もあれば,アルコール性肝疾患の患者では膵機能不全による吸収不良の結果である場合もある。

血液疾患がよくみられる。貧血は通常,脾機能亢進症,慢性消化管出血,葉酸欠乏症(特にアルコール依存症の患者),および溶血の結果として発生する。

肝硬変は,血栓促進および血栓抑制因子の産生低下につながる。脾機能亢進症とトロンボポエチンの発現量の変化は,血小板減少の一因となる。血小板減少と凝固因子の産生低下により,血液凝固の予測が不可能となり,出血および血栓塞栓症の両方のリスクが増大する(国際標準化比[INR]は通常高値となるにもかかわらず)。白血球減少もよくみられ,脾機能亢進症ならびにエリスロポエチンおよび顆粒球刺激因子の発現量の変化を介して発生する。

パール&ピットフォール

  • 肝硬変患者では,たとえINRが高値の場合でも,血栓塞栓性の合併症を考慮する。

肝細胞癌は,しばしば何らかの理由で肝硬変を合併する(これが臨床的サーベイランスの根拠となる)。肝硬変の病因別に見た肝細胞癌の発生率を以下に示す(1):

病理組織像

肝硬変は再生結節と架橋線維化を特徴とする。不完全に形成された肝結節,線維化を伴わない結節(結節性再生性過形成),および先天性肝線維症(すなわち,再生結節を伴わない広範囲に及ぶ線維化)は,真の肝硬変ではない。

肝硬変は,小結節性の場合と大結節性の場合がある。小結節性肝硬変は,均一に小さな結節(直径3mm未満)と規則的な厚い帯状の結合組織を特徴とする。典型的な結節は小葉構造を欠き,終末(中心)肝静脈と門脈域が変形している。時間とともに,しばしば大結節性肝硬変に進展する。結節の大きさは様々で(直径3mm~5cm),門脈域と中心静脈が比較的正常に保たれた小葉構造も認められる。様々な厚さの広い線維性隔壁が大きな結節を取り囲む。正常な肝構築の崩壊は,線維性瘢痕の中に門脈域が集中してみられることから示唆される。混合型肝硬変(incomplete septal cirrhosis)は,小結節性肝硬変と大結節性肝硬変の要素が混在して認められるものである。形態学的に分類されたこれらの肝硬変の鑑別については,臨床的な価値は限定的である。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Huang DQ, El-Serag HB, Loomba R: Global epidemiology of NAFLD-related HCC: Trends, predictions, risk factors and prevention.Nat Rev Gastroenterol Hepatol 8(4):223-238, 2021. doi: 10.1038/s41575-020-00381-6

肝硬変の症状と徴候

肝硬変は,代償性である限り何年間も無症状で経過することがある。初期症状は非特異的であることが多く,全身性の疲労(サイトカイン放出による),食欲不振,倦怠感,体重減少などがみられる(肝硬変の合併症による一般的な症状と徴候の表を参照)。典型的には肝臓は触知可能で硬く,辺縁は鈍化しているが,ときに小さく触知困難なこともある。通常は結節を触知できる。

慢性肝疾患または慢性飲酒を示唆するが,肝硬変に特異的ではない臨床徴候としては,筋萎縮,手掌紅斑,耳下腺腫大,白色爪,ばち指,デュピュイトラン拘縮,くも状血管腫,女性化乳房,腋毛消失,精巣萎縮,末梢神経障害などがある。

肝硬変の合併症が発生すると,さらなる代償不全(消化管出血,腹水,または肝性脳症を特徴とする)が起きる可能性が大幅に高くなる。

表&コラム
表&コラム

肝硬変の診断

  • 肝機能検査,凝固検査,血算,およびウイルス性の原因に対する血清学的検査

  • 従来の肝画像検査:超音波検査,CT,MRI

  • 非侵襲的画像検査による線維化の評価:Transient elastography,acoustic radiation force impulse imaging,2次元剪断波エラストグラフィー,磁気共鳴エラストグラフィー±プロトン密度脂肪率測定

  • 臨床的評価,一般的な原因に対するルーチン検査,ならびに比較的まれな原因に対する特殊検査に基づく原因の同定

  • ときに肝生検(例,臨床的および非侵襲的検査で判断できない場合,または生検結果で管理方針が変わる可能性がある場合)

一般的アプローチ

合併症(肝硬変の合併症による一般的な症状と徴候の表を参照),特に門脈圧亢進症または腹水の徴候がみられる患者では,肝硬変を疑う。非特異的症状がみられる患者や臨床検査で偶然特徴的な異常が認められた患者では,早期の肝硬変を考慮すべきであり,とりわけ線維化を引き起こしうる疾患や薬剤の服用がある患者では,特に注意すべきである。

検査は,肝硬変とその合併症の検出,および原因の特定を目的として行う。

臨床検査

診断検査としては,肝機能検査,凝固検査,血算,および慢性ウイルス性肝炎に対する血清学的検査から開始する(B型肝炎の血清学的検査およびC型肝炎の血清学的検査の各表を参照)。臨床検査のみでは,肝硬変の疑いが高まることはあっても,確定診断や除外はできない。

検査結果は,正常となる場合もあれば,非特異的な異常を示す場合もある。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の測定値がしばしば小幅に上昇するが,正常となる可能性もある。アルカリホスファターゼ値とγ-グルタミルトランスペプチターゼ値(GGT)は,正常となる場合が多いが,これらの高値は胆汁うっ滞または胆道閉塞を示唆する。ビリルビン値は通常正常であるが,肝硬変が進行した場合(特に原発性胆汁性胆管炎)には上昇する。血清アルブミン値の低下とプロトロンビン時間(PT)の延長は,肝機能障害を直接反映し,通常は末期にみられる変化である。アルブミンは栄養不良の場合にも低値となりうる。

貧血がよくみられ,通常は赤血球分布幅(RDW)が高値の正球性貧血である。貧血は多因子性のことが多く,寄与する因子としては,慢性消化管出血(通常は小球性貧血を引き起こす),葉酸欠乏症(大球性貧血を引き起こす[特にアルコール乱用の場合]),溶血脾機能亢進症などが考えられる。血算では,白血球減少血小板減少,または汎血球減少が検出されることもある。

画像検査

肝硬変の診断においては,従来の画像検査のみでの感度および特異度は高くないが,合併症を検出できる場合が多い。非侵襲的画像検査(例,transient elastography,acoustic radiation force impulse imaging,2次元剪断波エラストグラフィー,磁気共鳴エラストグラフィー)は,従来の画像所見では判断が難しく,かつ門脈圧亢進が明確でない場合に早期の肝硬変を検出するのに有用である。

進行した肝硬変では,超音波検査により肝臓の小結節が描写される。超音波検査では門脈圧亢進症腹水も検出できる。

CTおよびMRI(造影および単純撮影)では,結節状の陰影,静脈瘤,門脈/脾静脈血栓症を検出したり,肝細胞癌が疑われる肝病変を描出したりすることが可能である。テクネチウム99m硫黄コロイドを用いる肝臓の核医学検査では,肝臓への不規則な取込みと脾臓および骨髄への取込みの増加がみられるが,現時点でこの検査の利用は限られている。

原因の同定

肝硬変の具体的な原因を特定するには,病歴と診察で得られる鍵となる臨床情報と選択的な検査が必要である。

アルコール依存症の既往を確認でき,臨床検査でAST値がALT値より高く(特にAST/ALT比が2を超える),かつγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の高値とビタミンB12および葉酸欠乏症による大球性貧血が認められる患者では,アルコールが原因である可能性が高い。発熱,圧痛を伴う肝腫大,および黄疸も急性アルコール性肝炎を示唆する。

C型肝炎に対する血清抗体(HCV抗体)およびHCV-RNAの検出はC型肝炎を示唆する。B型肝炎表面抗原(HBs抗原)とB型肝炎ウイルスコア抗体(HBc抗体)を検出すれば,B型慢性肝炎が確定する。HBV/HDV同時感染では,HBVウイルス量が非常に少ないB型慢性肝炎となる可能性がある。大半の医師は以下に対する検査もルーチンに施行している:

  • 自己免疫性肝炎:抗核抗体価の高値から示唆され(抗体価の低値は非特異的で,さらなる評価は通常必須でない),高ガンマグロブリン血症(IgG)と他の自己抗体(例,抗平滑筋抗体,抗肝腎ミクロソーム1抗体)によって診断できる。

  • ヘモクロマトーシス:血清鉄および血清トランスフェリン飽和度の高値により示唆され,HFE(human homeostatic iron regulator)遺伝子検査により確定される。

  • α1-アンチトリプシン欠乏症:血清α1-アンチトリプシンの低値により示唆され,遺伝子/表現型解析により確定される。

これらの原因が確認できない場合は,その他の原因を探索する:

  • 抗ミトコンドリア抗体の存在(95%)とIgM高値は原発性胆汁性胆管炎を示唆するが,生検で確定する必要がある。

  • 磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)でみられる肝内および肝外胆管の狭窄および拡張は,原発性硬化性胆管炎(PSC)を示唆する。

  • 血清セルロプラスミン値の低下と特徴的な銅検査結果は,ウィルソン病を示唆する。

  • 肥満の存在と糖尿病の既往は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を示唆するが,肝生検で確定しない限り除外診断である。

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肝生検

肝生検は侵襲的であり,検体採取エラーも生じやすいが,それでも依然として肝硬変診断におけるゴールドスタンダードとなっている。肝生検は以下の状況で必要になる:

  • 肝硬変やその病因の診断において,臨床基準と非侵襲的検査の結果から明確に判断できない場合(例えば,よく代償された肝硬変が臨床的に疑われ,決定的な画像所見が得られない場合)

  • 肝硬変の特定の原因(例,アミロイドーシス,PBC,末梢胆管型PSC)を確定する場合

  • 治療強度を決定するために一部の肝硬変の原因(例,自己免疫性肝炎)について重症度や活動性を評価する場合

  • 線維化の評価について非侵襲的画像検査の妥当性が確認されていない特定の疾患(例,妊娠,うっ血性肝障害,まれな肝疾患)において肝硬変を確定する場合

著明な凝固障害,門脈圧亢進症腹水および肝不全を伴う肝硬変が明確な症例では,その結果で管理方針が変わる可能性が高くない限り,肝生検は必要でない。腹水,凝固障害,および血小板減少がみられる患者に対する生検では,経頸静脈的なアプローチが最も安全である。このアプローチを採用する場合,血圧を測定することで,類洞から圧較差を算出することができる。

モニタリング

肝硬変患者では,原因にかかわらず,肝細胞癌のスクリーニングを定期的に行うべきである。現時点では,腹部超音波検査と場合により血清αフェトプロテイン(AFP)値の測定を6カ月毎に行うことが推奨されており,HCCを疑わせる異常が検出された場合には,腹部の造影MRIまたは3相CT(造影前相,動脈相,静脈相)を施行すべきである。造影画像検査での特定の所見(Liver Imaging Reporting and Data System 5の基準[早期の動脈濃染,門脈相でのwashout,enhancing capsuleを含む])によりHCCの確定診断が可能であり,生検を省略することができる。造影超音波検査は,CTまたはMRIに代わる検査法として期待されているが,まだ研究段階にある。

肝硬変患者に臨床的に有意な門脈圧亢進症の症候(腹水,血小板数150,000未満,またはtransient elastographyで肝硬度20kPa以上)がみられた場合は,胃食道静脈瘤を検索するための上部消化管内視鏡検査を施行するとともに,以降2~3年毎に繰り返すべきである。陽性所見を認めた場合は,治療(非選択的β遮断薬[カルベジロール,ナドロール,プロプラノロール]または内視鏡的結紮術)またはより頻回の内視鏡モニタリングが必要になる場合がある。

肝硬変の予後

予後はしばしば予測できない。病因,重症度,合併症の有無,併存症,宿主因子,治療の有効性などの因子に依存する。肝硬変は不可逆的と考えられていたが,最近のエビデンスから可逆的であることが示唆されている。たとえ少量であっても飲酒を継続する患者の予後は非常に不良である。

肝疾患の重症度に関するChild-Turcotte-Pugh分類

Child-Turcotte-Pugh分類は,臨床および検査情報を用いて疾患の重症度,手術リスク,および全体的な予後を層別化するものである(Child-Turcotte-Pughスコアリング分類およびChild-Turcotte-Pugh分類の解釈の各表を参照)。しかしながら,Child-Turcotte-Pugh分類にも限界があり,例えば,腹水脳症の重症度の評価は主観的であり,そのため結果の評価者間信頼性は高くない。

表&コラム
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Model for End-stage Liver Disease(MELD)

Model for End-stage Liver Disease(MELD)スコアは,Child-Turcotte-Pugh分類とは対照的に,末期肝疾患の重症度を原因と無関係に臨床検査(血清クレアチニン,血清総ビリルビン,および国際標準化比[INR])の客観的結果のみに基づいて推定する。MELDスコアは,肝移植の候補者を死亡リスク順に分類できるため,候補者への肝臓の割り当てを決定する際に用いられる(MELDスコアと死亡率の表を参照)。ときに他の目的でMELDスコアの変法が用いられる(例,アルコール性肝炎患者における90日死亡リスクの推定,肝硬変患者における術後死亡リスクの予測)。評価項目に血清ナトリウム値(MELD-Na)を組み込んだMELDスコアの変法は,従来のMELDスコアよりも肝硬変患者における死亡率をより正確に予測し,現在ではUnited Network for Organ Sharing(UNOS)やOrgan Procurement and Transplantation Network(OPTN)が肝移植待機リストの患者の優先順位付けに使用している。

表&コラム
表&コラム

2019年に,United Network for Organ Sharing(UNOS)によりMELD例外事項(例,HCC,肝肺症候群)の取扱いに関する方針が大きく更新された。新たな方針の下では,待期期間にかかわらず,当該地域(半径250海里)におけるMedian MELD at Transplant(MMaT)に基づいて,固定のMELD-Naスコアが各患者に与えられる。

Pediatric End-stage Liver Disease(PELD)スコア

12歳未満の患者では,対応するPediatric End-stage Liver Disease(PELD)スコアを算出する。PELDスコアが高いほど,リスクも高いと予測される。

肝硬変の治療

  • 支持療法

一般に,治療は支持療法であり,肝障害につながる薬剤の中止,栄養補給(ビタミン補充を含む),基礎疾患および合併症の治療も含まれる。肝臓で代謝される薬剤を減量すべきである。全てのアルコールおよび肝毒性物質を避ける必要がある。アルコール乱用を続けていた肝硬変患者では,入院中の離脱症状を予期しておくべきである。すでに免疫がある場合以外は,A型およびB型肝炎ウイルスに対する予防接種を行うべきである。

静脈瘤のある患者には,出血を予防するための治療が必要である(門脈圧亢進症:治療を参照)。小さな食道静脈瘤に対する治療を支持するエビデンスはない。中型および大きな食道静脈瘤には,非選択的β遮断薬または内視鏡的結紮術(バンディング術)による予防的治療を行うべきである。胃静脈瘤で内視鏡的結紮術が施行できず,非選択的β遮断薬に反応しない場合は,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術または内視鏡的シアノアクリレート注入を用いてもよい。

標準治療に抵抗性を示す門脈圧亢進症の合併症(腹水や繰り返す静脈瘤出血など)がある患者では,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を考慮すべきである。心不全,中等症もしくは重症の肺高血圧症,または肝性脳症がみられる患者では,TIPSは相対的禁忌である。MELDスコアが高い(> 18)患者は,TIPS後の死亡リスクが高い。

末期肝疾患またはHCCの患者は肝移植の適応となる。MELDスコアが約15を超えると,肝移植を受けない場合の死亡リスクが移植のリスク(例,周術期合併症,慢性の免疫抑制)を超えるようになる。そのため,スコアが15以上になるか,患者のHCCがMELD除外ポイントの基準を満たすか,肝硬変が臨床的に代償不全となった場合は,患者を移植センターに紹介すべきである。

要点

  • 肝硬変における症状や死亡は通常,合併症(例,門脈圧亢進症,肝不全,出血性事象)の結果として起こる。

  • 明確な診断により管理および予後が改善される可能性が高い場合は,肝生検を施行する。

  • 肝硬変患者では全例において,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)やアルコール性およびウイルス性肝炎といった一般的な原因に加えて,自己免疫性肝炎,遺伝性ヘモクロマトーシス,およびα1-アンチトリプシン欠乏症の評価を行う。

  • 全例で臨床的に有意な門脈圧亢進症/胃食道静脈瘤と肝細胞癌に対するモニタリングを定期的に行い,臨床的な適応に応じて検査を行う。

  • Child-Turcotte-PughおよびModel for End-stage Liver Disease(MELD)分類を用いて予後を予測し,MELDスコアが15以上の患者は肝移植の評価のために紹介する。

  • 肝硬変の治療は,出血の予防を含めた支持療法とする。

より詳細な情報

  1. Londoño MC, Cárdenas A, Guevara M: MELD score and serum sodium in the prediction of survival of patients with cirrhosis awaiting liver transplantation.Gut 56(9):1283-1290, 2007.doi: 10.1136/gut.2006.102764 

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