脾機能亢進症は,脾腫によって引き起こされる血球減少症である。
本ページのリソース
(脾臓の概要も参照のこと。)
脾機能亢進症は,ほぼあらゆる原因による脾腫から発生しうる二次的過程である(脾腫の一般的な原因の表を参照)。脾腫が生じると,赤血球に加えて,しばしば白血球および血小板に対する脾臓での機械的な補足および破壊が亢進する。これらの血球系が循環血中で減少すると,代償性の骨髄過形成が起こる。
脾機能亢進症の症状と徴候
脾腫が大きな特徴であり,脾臓の大きさは血球減少の程度に相関する。その他の臨床所見は,通常基礎疾患によるものである。
脾機能亢進症の診断
身体診察
ときに超音波検査
血算
脾腫に加え,貧血または血球減少症を認める患者では,脾機能亢進症が疑われる。評価方法は脾腫と同様である。
貧血およびその他の血球減少症は,別の機序が併存してその重症度を悪化させない限り,中等度で無症状である(例,血小板数50~100 × 103/μL[50~100 × 109/L];白血球数2500~4000/μL[2.5~4 × 109/L]かつ白血球分画値正常)。赤血球の形態は,涙滴状赤血球やときに球状赤血球症がみられることを除いて,概ね正常である。網状赤血球増多は珍しくない。
脾機能亢進症の治療
場合により脾臓のアブレーション(脾臓摘出術または放射線療法)
脾臓摘出患者に対する予防接種および抗菌薬の予防的投与
治療は基礎疾患に対して行う。ただし,その疾患の重篤な症状が脾機能亢進症のみの場合(例,ゴーシェ病)は,脾臓摘出術または放射線療法による脾臓のアブレーションが適応となることがある。脾機能亢進症における脾臓摘出術または放射線療法の適応について以下に詳述する(脾機能亢進症における脾臓摘出術または放射線療法の適応の表を参照)。
正常な脾臓は,莢膜を有する細菌による重篤な感染症に対する防護を担っているため,脾臓摘出は可能な限り避けるべきであり,脾臓摘出を受ける患者には,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),髄膜炎菌(Neisseria meningitidis),およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)により引き起こされる感染症に対する予防接種が事前に必要である。インフルエンザおよびCOVID-19ワクチンの接種も受けるべきであり,さらに臨床状況に応じて他のワクチン接種も必要になることがある。
脾臓摘出後には,莢膜を有する微生物による重症敗血症が特に生じやすくなるため,ペニシリン,アモキシシリン,エリスロマイシンなどの抗菌薬を連日予防投与することが多く,特に小児と定期的に接触する患者によく行われる。発熱がみられた患者には,感染症に対する入念な評価を行うべきである。