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女性の骨盤内腫瘤

執筆者:Shubhangi Kesavan, MD, Cleveland Clinic Learner College of Medicine, Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 6月
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本ページのリソース

女性では骨盤部の腫瘍(骨盤内腫瘤)がよくみられます。

骨盤部とは腹部の下の部分のことです。骨盤部には腸、尿管の下部、膀胱が含まれているほか、まれに骨盤腎(胎児の発達中に正しくない位置に迷い込んだ腎臓)がみられることもあります。女性の骨盤部には、さらに卵巣、卵管、子宮、および子宮頸部も含まれています。骨盤内腫瘤は、これらの臓器のどれからも発生する可能性があります。

発生する骨盤内腫瘤の種類は、年齢や生殖に関するライフステージによって異なります。ここでは、生殖可能年齢(最初の月経から閉経まで)の妊娠していない女性にみられる腫瘤と、閉経後の女性にみられる腫瘤について考察します。骨盤内腫瘤は小児にも発生することがありますが、それらについては別の箇所で扱っています(小児における女性の骨盤内腫瘤を参照)。

骨盤内腫瘤は症状を引き起こすこともあれば、無症状のこともあります。症状としては以下のものがあります。

  • 鈍いまたは鋭い骨盤痛で、現れては消えるを繰り返す場合(間欠的)と長く続く場合がある

  • 腫瘤が破裂するか、腫瘤により卵巣や卵管のねじれ(付属器捻転と呼ばれる病気)が起きた場合に突然生じる重度の腹痛

  • 月経異常

  • 性行為中の下腹部の痛み

骨盤内腫瘤は、内診の際に発見されたり、超音波検査やCT検査などの画像検査で発見されたりすることがあります。

骨盤内腫瘤は通常、良性の(がんではない)腫瘍ですが、悪性の(がんである)場合もあります。

女性内性器の解剖学的構造

女性の骨盤内腫瘤の評価

医師は症状、病歴、使用中の薬剤について問診をします。がん、特に卵巣がん子宮体がん乳がん、および大腸がんの家族歴が重要です。医師はまた卵巣嚢胞の病歴、子宮筋腫性感染症の病歴や危険因子についても質問します。

その後、腹部の診察と内診を含めて、身体診察を行います。内診には、外部の解剖学的構造(外陰部)と内部の解剖学的構造(腟、子宮頸部、子宮、卵管、卵巣)の評価が含まれます。直腸診と内診を組み合わせて行うこともあります。この診察では、医師が人差し指を腟に、中指を直腸に挿入します。骨盤部の後方部分(脊椎に向かう部分)や腟と直腸の間の組織(会陰部)に生じた腫瘤や異常は、この診察法でしか検出できないことがあります。

女性外性器の解剖学的構造

病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、原因と必要になる追加検査を推測することができます。

骨盤内腫瘤のある妊娠可能年齢の女性では、尿または血液による妊娠検査を行います。妊娠検査は、たとえ月経歴や性交歴から妊娠の可能性が低い場合にも行います。妊娠していて、そうと診断されない場合、母子ともに合併症のリスクが高くなります。妊娠検査が陽性の場合、腫瘤の最も可能性の高い原因は妊娠による子宮の増大です。

骨盤内腫瘤が疑われる場合は、しばしば骨盤内超音波検査などの画像検査を行います。(婦人科の画像検査も参照のこと。)

内診時に子宮頸部に腫瘤が発見された場合は、子宮頸部細胞診と生検などの追加検査を行うことがあります。

閉経後の女性には、さらなる評価が必要になる場合がありますが、これは骨盤内腫瘤ががんであるリスクが年齢とともに高まるからです。

女性の骨盤内腫瘤の治療

骨盤内腫瘤が発見された場合、医師は緊急の治療が必要な状態(例えば、異所性妊娠卵巣捻転重度の出血を伴う卵巣嚢胞破裂)かどうかを判断します。また腫瘤が悪性(がん)かどうかも判断します。重度の痛みには、しばしば緊急の治療が必要になります。

一部の腫瘤は経過観察とされ、治療が必要なかったり、治療なしで消えるたりすることがあります。一部の良性腫瘍については、薬剤または低侵襲手術(子宮筋腫塞栓術など)で症状を管理することができます。しかし、一部の症例では、骨盤内腫瘤に対して外科的治療が必要になります。

要点

  • 女性の骨盤内腫瘤は、卵巣、卵管、子宮、子宮頸部のほか、腸、尿管の下部、膀胱や、まれに骨盤腎から発生することがあります。

  • 妊娠可能年齢の女性における骨盤内腫瘤の一般的な原因は、子宮筋腫と卵胞嚢胞です。

  • 閉経後の女性では、腫瘤ががんである可能性が若年女性の場合よりも高いです。

  • 骨盤内腫瘤は、症状を引き起こす場合もありますが、無症状の場合もあり、内診や画像検査で発見されることもあります。骨盤内腫瘤は通常、良性の(がんではない)腫瘍ですが、悪性の(がんである)場合もあります。

  • 骨盤内腫瘤がある妊娠可能年齢の女性には、たとえ妊娠の可能性が低くても、妊娠検査を行います。

  • 骨盤内腫瘤がある女性の評価には画像検査が用いられます。

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