クラミジアは、性感染症(STI)や眼の感染症、気道感染症などの病気をヒトに引き起こす細菌です。
ヒトに病気を引き起こすクラミジア属(Chlamydia)細菌は以下の3種類です。
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)
肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae)
オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci)
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、尿道、子宮頸部、直腸など、多くの臓器に感染症を引き起こす可能性があります。主に性行為を介して広がりますが、妊婦から乳児に感染することもあります。(クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症も参照のこと。)
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、米国における細菌による性感染症(STI)の原因として最も一般的なものです。性感染症とは、性的接触によって人から人に感染する病気のことです。
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、性的接触を介して広がると、以下の感染症を引き起こす可能性があります。
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)に感染した妊婦は、出産時に新生児に感染症をうつすことがあり、その結果新生児が眼の感染症(結膜炎)または肺の感染症(肺炎)にかかることがあります。新生児におけるこれらの感染症を予防するために、すべての妊婦に対する出生前スクリーニングと妊婦の治療が行われます。これらの対策により、米国では新生児の結膜炎や肺炎の発生率が大幅に低下しています。
特定の菌株のクラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、トラコーマと呼ばれる眼の感染症を引き起こします。トラコーマは、結膜(眼の表面とまぶたの裏側を覆っている膜)に起こる長期にわたる感染症で、世界で予防可能な失明原因の第1位になっていて、特にサハラ以南アフリカで多くみられます。トラコーマは米国では非常にまれです。この病気になるのは主に小児で、特に3歳から6歳で多くみられます。感染した人の眼や鼻からの分泌物に(例えば、汚染された手、衣服、タオルなどを介して)触れることで感染します。また、昆虫がこの病気を広げることもあります。
肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae)
肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は肺の感染症である肺炎を引き起こします。肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は、感染した人がせきやくしゃみをしたときに、近くにいる人が細菌を含む飛沫を吸い込むことで、人から人に感染します。
病院の外で発生する肺炎の多くが、肺炎クラミジア (C. pneumoniae)によるものである可能性があります。肺炎クラミジア (C. pneumoniae)感染症は、介護施設、学校、軍のキャンプ、刑務所、その他の人が密集した環境で生活する人が特にかかりやすい病気です。肺炎クラミジア (C. pneumoniae )はまた、反応性気道疾患(喘息が疑われるものの、まだ確定できていない時点での診断名)の誘因になることもあります。
オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci)
オウム病クラミジア(C. psittaci)は、オウム病と呼ばれる、まれな肺炎を引き起こします。オウム病はまれな感染症です。
オウム病クラミジア (C. psittaci)は、オウム、インコ、オカメインコなどのペットや家禽をはじめとする鳥類に感染しています。オウム病は、ペットの飼い主、獣医、および七面鳥やアヒルと接触する家禽産業に携わる労働者で発生する可能性があります。人は感染した鳥の排泄物から出る粒子を吸い込むことで感染します。
鶏肉加工工場で七面鳥やアヒルを扱う労働者で集団発生が起こっています。
クラミジア感染症の症状
クラミジア感染症の症状は、感染を起こしている種によって異なります。
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)
クラミジアによる性感染症になった人の大半(特に女性)では、症状がみられません。症状がある場合、性別と感染部位によって以下のように異なります。
女性では異常なおりものや排尿時の灼熱感がみられることがあります。
男性では排尿時に灼熱感を覚えることがあります。さらに、陰茎からの分泌物や、片側または両側の精巣に痛みや腫れが生じることもあります。
男女ともに直腸感染症では、直腸の痛み、分泌物、出血がみられることがあります。
肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae)
肺炎クラミジア (C. pneumoniae)による呼吸器感染症になった人では、せきが出始める前に、声のかすれやのどの痛みがみられることがあります。
オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci)
オウム病クラミジア (C. psittaci)に感染した人では発熱、重度の頭痛、せきなどがみられます。
クラミジア感染症の合併症
クラミジア感染症の診断
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)には核酸増幅検査
肺炎クラミジア (C. pneumoniae)には培養検査または核酸増幅検査
オウム病クラミジア(C. psittaci)には血液絵検査またはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査
クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、尿のサンプルや綿棒で腟から採取したサンプルを用いた核酸増幅検査で最もよく特定できます。核酸増幅検査を行って、各微生物に固有の遺伝物質であるDNAまたはRNA(どちらも核酸の一種です)を探します。核酸増幅検査では、細菌のDNAまたはRNAの量を増やす処理を行って、DNAまたはRNAを特定しやすくします。
肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は、核酸増幅検査を行うか、綿棒でのどの奥から採取したサンプルを用いて検査室で微生物を細胞培養することにより診断されます。
オウム病クラミジア (C. psittaci)は、主に鳥類(通常はオウムまたはインコ)と濃厚接触があった人のほか、獣医や七面鳥やアヒルの加工工場で働く労働者でも疑われます。診断は血液検査で抗体を検出することで確定されますが、一部の検査機関ではPCR検査を行うこともできます。PCR検査には、血液のサンプルを使用します。PCR法では、細菌のDNAを増やすことができるため、細菌の種類をより速やかに特定することができます。
スクリーニング
性器クラミジア感染症は非常によくみられる病気で、また感染した女性の多くで症状がないか、あっても軽度であるため、性的に活動的な青年および成人には、クラミジア感染症と他の性感染症(STI)に対するスクリーニング検査が推奨されます。詳細については、クラミジアのスクリーニングを参照してください。
クラミジア感染症の治療
抗菌薬
クラミジア感染症は抗菌薬で治療します。妊婦にはアジスロマイシンが処方されます。妊娠していない人には、ドキシサイクリンまたはアジスロマイシンが処方されます。
現在のセックスパートナーも治療を受けるべきです。感染者とセックスパートナーは、治療を終えてから少なくとも1週間は性交を控えるべきです。
クラミジア感染症の予防
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):クラミジア―CDCファクトシート(Chlamydia—CDC Fact Sheet):危険因子、予防、治療を含めたクラミジアに関する情報をカバーしている
