クラミジア感染症

執筆者:Margaret R. Hammerschlag, MD, State University of New York Downstate Medical Center
レビュー/改訂 2021年 5月
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クラミジアは、性感染症(STI)や眼の感染症、気道感染症などの病気をヒトに引き起こす細菌です。

ヒトに病気を引き起こすクラミジア属(Chlamydia)細菌は以下の3種類です。

  • クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis

  • 肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae

  • オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci

クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis

クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、尿道、子宮頸部、直腸など、多くの臓器に感染症を引き起こす可能性があります。主に成人の間で性行為を介して広がりますが、妊婦から乳児に感染することもあります。(クラミジア感染症とその他の感染症も参照のこと。)

クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、米国における細菌による性感染症(STI)の原因として最も一般的なものです。性感染症とは、性的接触によって人から人に感染する病気のことです。

クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、性的接触を介して広がると、以下の感染症を引き起こす可能性があります。

クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)に感染した妊婦は、出産時に新生児に感染症をうつすことがあり、その結果新生児が眼の感染症(結膜炎)または肺の感染症(肺炎)にかかることがあります。新生児におけるこれらの感染症を予防するために、すべての妊婦に対する出生前スクリーニングと妊婦の治療が行われます。これらの対策により、米国では新生児の結膜炎や肺炎の発生率が大幅に低下しています。

特定の菌株のクラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、トラコーマと呼ばれる眼の感染症を引き起こします。トラコーマは、結膜(眼の表面とまぶたの裏側を覆っている膜)に起こる長期にわたる感染症で、世界で予防可能な失明原因の第1位になっていて、特にサハラ以南アフリカで多くみられます。トラコーマは米国では非常にまれです。この病気になるのは主に小児で、特に3歳から6歳で多くみられます。感染した人の眼や鼻からの分泌物に(例えば、汚染された手、衣服、タオルなどを介して)触れることで感染します。また、昆虫がこの病気を広げることもあります。

肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae

肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は肺の感染症(肺炎)を引き起こします。肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は、感染した人がせきやくしゃみをしたときに、近くにいる人が細菌を含む飛沫を吸い込むことで、人から人に感染します。

病院の外で発生する肺炎の多くが、肺炎クラミジア (C. pneumoniae)によるものである可能性があります。肺炎クラミジア (C. pneumoniae)感染症は、介護施設、学校、軍のキャンプ、刑務所、その他の閉鎖的環境で生活する人が特にかかりやすい病気です。肺炎クラミジア (C. pneumoniae )はまた、反応性気道疾患(喘息が疑われるものの、まだ確定できていない時点での診断名)の誘因になることもあります。

オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci

オウム病クラミジア(C. psittaci)は、オウム病と呼ばれる、まれな肺炎を引き起こします。オウム病クラミジア (C. psittaci)は、オウムやオカメインコなどのペットと、シチメンチョウやアヒルなどの家禽をはじめとする鳥類にみられます。人は感染した鳥の排泄物から出る粒子を吸い込むことで感染します。鶏肉加工工場でシチメンチョウやアヒルを扱う労働者で集団発生が起こっています。

クラミジア感染症の症状

クラミジア感染症の症状は、感染を起こしている種によって異なります。

クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis

クラミジアによる性感染症になった人の大半(特に女性)では、症状がみられません。症状がある場合、性別と感染部位によって以下のように異なります。

  • 女性では異常なおりものや排尿時の灼熱感がみられることがあります。

  • 男性も排尿時に灼熱感を覚えることがあります。さらに、陰茎からの分泌物や、片側または両側の精巣に痛みや腫れが生じることもあります。

  • 男女ともに直腸感染症では、直腸の痛み、分泌物、出血がみられることがあります。

肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae

肺炎クラミジア (C. pneumoniae)による呼吸器感染症になった人では、せきが出始める前に、声のかすれやのどの痛みがみられることがあります。

オウム病クラミジア (Chlamydia psittaci

オウム病クラミジア (C. psittaci)に感染した人では発熱、重度の頭痛、せきなどがみられます。

クラミジア感染症の合併症

診断されていない女性のクラミジア性感染症は、骨盤内炎症性疾患の原因になることがあり、それにより、女性の生殖器系に深刻かつ永続的な障害が残る可能性があります。この障害から、不妊症や生命を脅かす異所性妊娠(子宮の外[通常は卵管の中]で妊娠が起こること)が起きる可能性もあります。

クラミジア感染症の診断

  • クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)と 肺炎クラミジア (C. pneumoniae)に対しては、核酸増幅検査

  • オウム病クラミジア (C. psittaci)に対しては、血液検査

クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)は、綿棒で腟から採取したサンプルや尿を用いた核酸増幅検査で最もよく特定できます。核酸増幅検査では、各微生物に固有の遺伝物質であるDNAまたはRNA(どちらも核酸の一種です)を探します。核酸増幅検査では、細菌のDNAまたはRNAの量を増やす処理を行って、DNAまたはRNAを特定しやすくします。

肺炎クラミジア (C. pneumoniae)は、核酸増幅検査を行うか、綿棒でのどの奥から採取したサンプルを用いて検査室で微生物を細胞培養することにより診断されます。

オウム病クラミジア (C. psittaci)は、主に鳥類(通常はオウムまたはインコ)と濃厚な接触があった人で疑われます。医師は、血液検査により抗体を検出することで診断を確定しますが、核酸増幅検査による診断技術も開発中です。

スクリーニング

クラミジア性器感染症は非常によくみられる病気で、また感染した女性の多くで症状がないか、あっても軽度であるため、性的に活動的な女性と男性には、クラミジア感染症と他の性感染症(STD)に対するスクリーニング検査が推奨されます。

妊娠していない女性(女性とセックスをしている女性を含む)は、以下の危険因子がある場合、年1回のスクリーニングを受けます。

  • 性的に活動的で25歳以下である

  • 過去に性感染症になったことがある

  • リスクの高い性行動をとっている(例えば、新しいセックスパートナーや複数のセックスパートナーがいる、セックス産業に従事している)

  • 性感染症にかかっているパートナー、またはリスクの高い性行動をとっているパートナーがいる

妊婦は最初の妊婦健診の際にスクリーニングを受けます。25歳以下の妊婦と危険因子のある妊婦は、第3トリメスター【訳注:日本でいう妊娠後期にほぼ相当】に再度スクリーニングを受けます。

男性は、クラミジア感染症のリスクが高い場合(男性と性行為をしている場合、青年クリニックや性感染症クリニックに通院している場合、刑務所などの矯正施設に収容されるときなど)にスクリーニングを受けます。

男性と性行為をする男性は、少なくとも年1回のスクリーニングを受け、HIV感染症や複数のパートナーなどの危険因子がある場合はさらに短い間隔でスクリーニングを受けます。

クラミジア感染症の予防

妊婦のスクリーニングと治療は、妊婦が新生児にクラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)をうつさないための最も効果的な方法です。

感染のリスクを減らすために安全な性行為が推奨されます。

クラミジア感染症の治療

  • 抗菌薬

クラミジア感染症は、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、一部の種ではレボフロキサシンなどの抗菌薬で治療します。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター(CDC):クラミジア―CDCファクトシート(Chlamydia—CDC Fact Sheet):危険因子、予防、治療を含めたクラミジアに関する情報をカバーしている

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