慢性肉芽腫症は遺伝性の免疫不全疾患で、白血球の一種である食細胞が正常に機能しません。
慢性肉芽腫症の患者では、皮膚、肺、リンパ節、口、鼻、尿路、腸の長引く感染症がみられます。
この病気の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。
治療では、感染症を予防し、感染症にかかる回数や重症度を軽減する薬を用いるほか、輸血と幹細胞移植を行います。
(免疫不全疾患の概要も参照のこと。)
慢性肉芽腫症は原発性免疫不全症の一種です。通常、X連鎖劣性遺伝疾患として遺伝します。X連鎖とは、この病気がX(性)染色体上の遺伝子の突然変異に起因することを意味します。X連鎖劣性遺伝疾患は男児にのみ発生します。慢性肉芽腫症は、X連鎖ではなく、常染色体劣性遺伝疾患として遺伝することもあります。常染色体劣性遺伝疾患が遺伝するには、両親からその病気の遺伝子を1つずつ受け継いで2つそろう必要があります。
通常、食細胞(白血球の種類で、好中球、好酸球、単球、マクロファージを含む)は微生物を取り込んで殺します。しかし、慢性肉芽腫症では、食細胞は細菌や真菌を取り込みはするものの、これらを殺すための物質(過酸化水素、スーパーオキシドなど)をつくることができません。
慢性肉芽腫症の症状
慢性肉芽腫症の診断
血液検査
ときに遺伝子検査
慢性肉芽腫症を診断するには、血液検査を行って微生物に対する食細胞の活性を測定します。
この病気を引き起こす特定の遺伝子変異の有無を調べる遺伝子検査を行います。
慢性肉芽腫症の治療
感染症を予防、治療するための抗菌薬と抗真菌薬
インターフェロンガンマ
顆粒球輸血
幹細胞移植
感染を予防するために、通常はトリメトプリム/スルファメトキサゾールという抗菌薬の配合剤を生涯にわたり定期的に内服します。真菌感染予防に役立てるために、通常は抗真菌薬(イトラコナゾールなど)も定期的に内服します。
インターフェロンガンマ(免疫系を調節する薬)を週3回注射すれば、感染症が起こる回数を減らし、かかった場合も軽症にとどめることができます。
通常の治療法でほかに有効なものがない場合は、顆粒球輸血(顆粒球と呼ばれる食細胞を体内に注入する)により救命できることがあります。顆粒球は数種の食細胞を含む白血球の一種です。
幹細胞移植により治癒する慢性肉芽腫症の患者もいます。組織型と血液型が類似した近親者が最善のドナーです。ドナーになる意思があれば、組織型と血液型が患者と一致するかどうか判定する検査をすることが可能です。移植前に、免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)を投与して移植の拒絶反応の予防に役立てます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:慢性肉芽腫症とその他の食細胞障害(Immune Deficiency Foundation: Chronic granulomatous disease and other phagocytic cell disorders):慢性肉芽腫症の診断と治療に関する情報を含む一般的な情報