骨髄炎

執筆者:Steven Schmitt, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 6月
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やさしくわかる病気事典

骨髄炎は、通常は細菌、抗酸菌、または真菌によって引き起こされる骨の感染症です。

  • 細菌、抗酸菌、または真菌が血液を介して、あるいは近くの感染組織や汚染された傷口から(こちらの場合が多い)広がって、骨に感染することがあります。

  • 患者には骨の一部の痛み、発熱、体重減少がみられます。

  • 血液検査と画像検査を行い、骨のサンプルを採取して検査します。

  • 抗菌薬が数週間投与され、感染が起きた骨を除去するために手術が必要になることもあります。

骨髄炎は、主に幼児と高齢者にみられますが、どの年齢層の人にもリスクはあります。また、重篤な病気がある人でも、骨髄炎が起きる可能性が高くなります。

骨に感染が起こると、しばしば骨髄(骨の中にある軟らかい部分)が腫れます。腫れた組織が骨の外側の硬い壁に押しつけられると、骨髄内の血管が圧迫されて、それにより骨への血液供給が減少したり、途絶えたりすることがあります。

十分な血液が供給されなくなると、骨の一部が壊死することがあります。骨が壊死すると、感染防御を担っている免疫細胞や抗菌薬がその部分に到達しづらくなるせいで、感染の治癒が難しくなります。

骨の外まで感染が広がり、筋肉などの近くの軟部組織の中に膿がたまって、膿瘍ができることもあります。ときには、膿瘍から皮膚を越えて膿が出てくることもあります。

骨髄炎の原因

骨は通常、感染からうまく保護されていますが、次の3つの経路で感染が起きる可能性があります。

  • 血流(体の別の部位から骨まで微生物を運ぶことがある)

  • 直接の侵入(開放骨折、手術、または骨に刺さった物体を通じて)

  • 近くの構造物(関節、人工関節、軟部組織など)への感染

けがや異物(感染が起きた人工関節など)、それに臓器や組織への血液供給の減少(虚血)が骨髄炎の原因になることもあります。

深い床ずれがある部分で骨髄炎が起きることもあります。

ほとんどの骨髄炎は、直接の侵入か近くの軟部組織の感染(血行不良や糖尿病によって生じた足の潰瘍など)の結果として生じます。

血液を介した感染

骨髄炎を引き起こす微生物が血流を介して広がると、通常は次の部位に感染が起こります。

  • 小児では脚や腕の骨の先端部

  • 成人(特に高齢者)では脊椎

脊椎の感染症は化膿性脊椎炎と呼ばれます。高齢者や衰弱している人(介護施設で生活している人など)、鎌状赤血球症の人、腎臓透析を受けている人、滅菌されていない注射針で薬を注射する人は、特に化膿性脊椎炎になるリスクが高いです。

血流を介して広がる骨髄炎の原因菌で最もよくみられるのは、黄色ブドウ球菌です。結核菌(結核を引き起こす細菌)と真菌は同じ経路で広がって骨髄炎を引き起こすことがあり、これは特に免疫機能が弱っている人(HIV感染症の人、特定のがんがある人、免疫抑制薬による治療を受けている人など)や、特定の真菌感染症が流行している地域に住んでいる人でよくみられます。

直接の侵入

細菌や真菌の胞子が開放骨折の傷口、骨に対する手術、または骨に刺さった汚染された物体を介して、骨に直接感染することがあります。

股関節やその他の部位の骨折を修復する場合など、手術で骨に金属片を取り付けた部位において骨髄炎が起こることもあります。また、細菌や真菌の胞子が人工関節を取り付けた骨に感染することもあります(人工関節の感染性関節炎を参照)。微生物が関節の置換手術の実施中に人工関節周囲の骨に入り込むことや、術後に感染が起きることもあります。

近くの構造からの感染

骨髄炎は、近くの軟部組織の感染の結果生じることもあります。近くの軟部組織の感染は、数日から数週間後に骨へと広がります。この種の感染は高齢者に特に多くみられます。

このような感染は、外傷や手術、放射線療法、がん、血行不良や糖尿病によってできた皮膚潰瘍(特に足の潰瘍)で損傷を受けた部分によく起こります。副鼻腔、歯ぐき、歯で起こった感染は、頭蓋骨へ広がることがあります。

骨髄炎の症状

血液を介して広がった急性骨髄炎では、脚や腕の骨の感染を原因として、発熱がみられたり、感染が起きた骨に(ときに数日経ってから)痛みが現れたりすることがあります。感染が起きた骨の上の部分は、さわると痛んだり、赤くなったり、熱感を帯びていたり、腫れていたり、動かすと痛んだりすることがあります。患者は体重が減少したり、疲れを感じたりすることがあります。

微生物による軟部組織への感染や直接の侵入によって骨髄炎が起こると、その骨がある部分に腫れと痛みが生じます。周囲の組織に膿瘍が形成されることがあります。このような感染では発熱がみられないこともあります。

感染が起きた人工関節や腕または脚の周囲に感染が広がると、一般的にはその部分に持続する痛みが生じます。

化膿性脊椎炎は、通常は徐々に発生して、持続する背中の痛みや、触れたときの痛み(圧痛)がみられます。痛みは体を動かすとひどくなり、安静にしても、温めても、痛み止め(鎮痛薬)を服用しても改善されません。発熱は通常、感染症の最も明らかな徴候ですが、この病気ではしばしば発熱がみられません。痛みが持続することもあります。

慢性骨髄炎は、骨髄炎の治療がうまくいかない場合に生じることがあります。治すのが非常に難しい長期間持続する感染症です。慢性骨髄炎はときに、数カ月から数年にわたり無症状のまま経過し、長期間発見できないことがあります。慢性骨髄炎では多くの場合、骨に痛みが生じ、その骨の上の軟部組織も感染症が繰り返し起き、皮膚から持続的ないし断続的に膿が排出されます(排膿[はいのう])。このような排膿は、感染が起きた骨から皮膚の表面につながる通路(瘻孔[ろうこう])が形成されて、膿がそこを通って排出されることで起こります。

骨髄炎の診断

  • 血液検査

  • X線検査、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィー、白血球シンチグラフィーなどの画像検査

症状と診察での所見から骨髄炎が疑われることがあります。例えば、ある骨の一部に原因不明の持続する痛みがあり、長期間にわたって疲れを感じている人では、発熱の有無にかかわらず、骨髄炎が疑われることがあります。

骨髄炎が疑われたら、医師は血液検査を行って、以下のうち1つを測定することで炎症の有無を調べます。

  • 赤血球沈降速度(赤沈―血液が入った試験管の中で赤血球が底に沈んでいく速さを測定する検査)

  • C反応性タンパク質(炎症が起きていると濃度が劇的に上昇する血液中のタンパク質)の測定値

赤沈またはC反応性タンパク質の測定値が高い場合は、通常は炎症が起きています。また、血液検査で白血球の測定値が高くなることもよくあります。これらの血液検査の結果だけでは、骨髄炎の診断を下すことはできません。しかし、炎症がほとんどないかまったくないという結果が出た場合は、骨髄炎は起きていない可能性があります。

X線検査でも、骨髄炎の特徴的変化が認められることがありますが、そうした変化は症状が最初に出現してから2~4週間経過しないと現れません。

X線検査の結果がはっきりしない場合や、症状が重い場合は、CT検査またはMRI検査を行います。CT検査とMRI検査では、感染が起きた部位や関節を特定し、膿瘍のような周辺の感染も発見することができます。

代わりに、骨シンチグラフィー(放射性テクネチウムという物質を注射してから骨の画像を撮影する検査)を行うこともあります。骨シンチグラフィーでは、感染が起きている部位にほぼ必ず異常が認められますが、この画層では成長中の骨の異常を確実に検出できないことから、乳児は例外になります。一方で、骨シンチグラフィーでは、感染症をそれ以外の骨の病気と常に判別できるとは限りません。骨シンチグラフィーで異常がみられる領域で感染症と他の病気を区別するのに、白血球シンチグラフィー(放射性インジウムで区別できるようにした特殊な白血球を静脈に注射してから画像を撮影する検査)が役立つことがあります。

骨の感染症の診断を下し、その原因菌を特定するために、血液、膿、関節液、または骨自体のサンプルを採取して検査することがあります。通常、化膿性脊椎炎の場合は、骨の組織のサンプルを針で採取するか、手術中に採取します。

骨髄炎の予後(経過の見通し)

骨髄炎の人の予後は、早期に適切な治療が行われれば通常は良好です。ただし、ときに慢性骨髄炎になることがあり、数週間から数カ月、あるいは数年が経ってから骨膿瘍が再発することもあります。

骨髄炎の治療

  • 抗菌薬または抗真菌薬

  • ときに手術

  • 膿瘍に対して通常は排膿

抗菌薬と抗真菌薬

血流を介した骨の感染を最近起こした小児と成人に対しては、抗菌薬の投与が最も効果的な治療法になります。感染の原因菌が特定できなければ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して効果がある抗菌薬や、多くの種類の細菌に対して効果がある抗菌薬(広域抗菌薬)を使用します。抗菌薬は感染症の重症度に応じて約4~8週間にわたり静脈から投与します。その後は、抗菌薬に対する患者の反応に応じて、抗菌薬の服用をさらに長い期間続けることもあります。慢性骨髄炎になって、数カ月間に及ぶ抗菌薬治療が必要になる人もいます。

真菌感染症と特定されるか、その可能性が疑われる場合は、数カ月間にわたり抗真菌薬を使用する必要があります。感染症が早期に発見されれば、通常は手術の必要はありません。

手術と排膿

細菌による化膿性脊椎炎が起きている成人には、抗菌薬を4~8週間投与するのが通常の治療法です。ときにベッドでの安静が必要になり、装具の着用が必要になる場合もあります。膿の排出や感染が起きた脊椎の安定化(椎骨がつぶれて、それにより近くの神経、脊髄、血管が損傷するのを予防するため)を目的として、手術が必要になる場合もあります。

近くの軟部組織での感染により生じた骨髄炎の場合は、治療がより複雑になります。通常は、壊死した組織や骨を手術ですべて除去し、そこを健康な皮膚やその他の組織で置き換えます。その後、抗菌薬により感染症を治療します。術後3週間以上にわたって広域抗菌薬の投与が必要になることもあります。

膿瘍があれば、通常は手術で膿を排出する必要があります。発熱が長く続き、体重減少がみられる人にも、手術が必要になることがあります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国関節炎財団(Arthritis Foundation):骨髄炎を含めた様々な種類の関節炎に関する包括的な情報と、関節炎とともに生きていくことに関する情報

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