G6PD欠乏症は、赤血球の代謝に関与する酵素の遺伝子異常が原因で起こります。
G6PD欠乏症では、急性の病気や薬剤に反応して赤血球が破壊されます。
赤血球の破壊により、皮膚や白眼部分が黄色くなったり、暗色の尿が出たり、ときに背部や腹部が痛んだりするなどの症状が引き起こされることがあります。
血液検査でG6PD酵素の数値が評価できます。
治療は通常必要ありませんが、G6PD欠乏症の人は特定の薬剤および物質を避ける必要があります。
G6PDはヘモグロビンの安定性を維持するために重要な酵素です。ヘモグロビンは赤血球に含まれているタンパク質で、赤血球が肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしています。G6PDは、感染によるストレスまたは特定の薬剤や物質の使用による損傷からヘモグロビンを保護するのに役立ちます。G6PD欠乏症の人は、G6PDの産生に関与する遺伝子に異常があるため、血球中に十分なG6PDが存在しません。
G6PD欠乏症はX連鎖疾患で、発症するのは主に男性で、女性の患者は異常遺伝子のキャリアであることを意味します。ただし、G6PD遺伝子の働きには大きなばらつきがあるため、G6PDが本来の機能を十分に発揮できない人もいれば、まったく機能しない人もいます。
この異常はアフリカ人またはアフリカ系アメリカ人を祖先にもつ男性によくみられます。また、地中海沿岸出身(イタリア人、ギリシア人、アラブ人、およびセファルディ系ユダヤ人など)の祖先をもつ人やアジア系の人にもよくみられます。
G6PD欠乏症では赤血球の寿命が短くなります。G6PD欠乏症の人が(例えば、ウイルスまたは細菌の感染や糖尿病性ケトアシドーシスのために)体調を崩すと、赤血球が急速に破壊されます。このような赤血球の破壊現象(溶血クリーゼ)は通常、自然に消失します。
赤血球の破壊は、特定の薬剤または物質への曝露後にも起こることがあります。そのような薬剤や物質としては、ラスブリカーゼ、プリマキン、サリチル酸系薬剤、スルホンアミド系薬剤、ニトロフラン、フェナセチン、ナフタレン、一部のビタミンK誘導体、ジアフェニルスルホン、フェナゾピリジン、ナリジクス酸、メチレンブルー、一部の症例でのソラマメなどがあります。
G6PD欠乏症の症状
ほとんどの場合、赤血球の破壊は軽度で、症状を引き起こしません。しかし、酵素欠損がより重度の場合、黄疸(皮膚や白眼部分が黄色に変色すること)、暗色尿、疲労、息切れなどの症状がみられます。背部痛や腹痛がみられることもあります。
G6PD欠乏症の診断
G6PD活性を調べる血液検査
血液塗抹検査の評価
感染症にかかっているときや、赤血球破壊を引き起こすことが知られている薬剤を服用した後に黄疸がみられる場合に、G6PD欠乏症が疑われます。血液塗抹検査を含む血液検査を行い、赤血球が破壊されているかどうかを確認します。破壊されていれば、赤血球中のG6PD活性を測定します。G6PD活性は、赤血球の破壊が起こっている間と、破壊が止まった後に測定します。
G6PD欠乏症のリスクがある人では、スクリーニング検査が行われる可能性があります。
G6PD欠乏症の治療
支持療法
溶血を引き起こす可能性がある薬や物質の使用/摂取中止
既知の誘因の回避
多くの場合、治療の必要はなく、赤血球数が正常に戻るのを待つだけです。重症の場合には、酸素投与や輸液などの治療を受けるために入院が必要になることがあります。ときに輸血が必要になります。
医師は患者に、溶血を引き起こした可能性のある薬剤の服用や物質の摂取を中止して、溶血を誘発する可能性が高い薬剤や物質を避けるように助言します。
