IPEX症候群は、複数の内分泌腺(ホルモンを分泌する腺)の機能不全や腸の炎症を引き起こすまれな遺伝性の自己免疫疾患です。
(多腺性機能不全症候群も参照のこと。)
内分泌腺とは、特定のホルモンを分泌する器官のことです。IPEX症候群には、体の免疫系が誤って自己の細胞を攻撃する自己免疫反応が関係している可能性があります。
この病気は、最もよくみられる症状に基づいて命名されています。IPEXとは、以下を表しています。
Immune dysregulation(免疫調節異常[免疫系の問題])
Polyendocrinopathy(多腺性内分泌不全症[複数の内分泌腺の病気])
Enteropathy(腸疾患)
X-linked(X連鎖[異常のある遺伝子がX染色体上にある])
この病気はX連鎖潜性(劣性)遺伝子を介して遺伝するため、主に男児に発生します。この遺伝子異常は性染色体の1つであるX染色体上にあります。女児はX染色体を2本もっているため、片方に遺伝子異常があったとしても、もう片方のX染色体上に正常に機能する遺伝子があります。男児はX染色体を1本しかもっていないため、母親から遺伝子異常を受け継ぐと、疾患を発症することになります。
IPEX症候群の具体的な症状と徴候は、リンパ節、扁桃(へんとう)、アデノイド、脾臓の重度の腫脹、1型糖尿病、刺激を伴う皮膚の赤い斑点(湿疹)、食物アレルギー、感染症です。腸疾患は持続性の下痢を引き起こします。
この病気は症状と身体診察の結果から疑われます。医師は診断を確定するために遺伝子検査を行います。遺伝子異常のある男児の家族にも遺伝子検査が勧められることがあります。
IPEX症候群を治療しないと、通常は生後1年以内に死に至ります。造血幹細胞移植によって余命が延び、自己免疫疾患の一部の症状を軽減できます。