Consumer edition active

減量・代謝改善手術

執筆者:Shauna M. Levy, MD, MS, Tulane University School of Medicine;
Michelle Nessen, MD, Tulane University School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 11月
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

減量・代謝改善手術(減量手術)では、肥満または過体重で、肥満に関連する代謝性疾患(糖尿病、脂質異常値など)または体重に関連する他の合併症(高血圧、睡眠時無呼吸症候群、心疾患など)がある人を対象とし、減量のために胃、腸、またはその両方に施術します。

本ページのリソース

米国では、毎年約26万件以上の減量・代謝改善手術が行われます。この数は、世界で行われる肥満外科手術のほぼ3分の2を占めます。この手術によって体重が大幅に減ります。体重の超過分の半分や、さらにそれ以上、約35~70キログラム減少することもあります。体重の減少は最初に急速に進み、その後1~2年の間に次第にペースが落ちていきます。体重の減少は何年間も維持されることがよくあります。体重の減少により、体重に関連した医学的問題(睡眠時無呼吸症候群糖尿病など)の重症度やリスクが大幅に低下します。また気分、自尊心、身体像、運動量、仕事の能力、他の人と交流する能力が改善されます。

肥満外科手術の専門家は、他の健康状態に関係なくBMI(ボディマスインデックス)が35を超える人、およびBMIが30~34.9で代謝性疾患(糖尿病、心疾患など)を有する人に対して手術を推奨しています。そのような人の多くは減量薬の投与も受けることができます。この種の薬剤を手術と併用する方法については、現在研究中です。

手術を受けるには、以下のことを満たしている必要があります。

  • 減量・代謝改善手術のリスクと効果を理解する

  • 手術後に必要になる食事と生活習慣の改善を受け入れる意欲がある

  • その他の減量法をすでに試したことがある

  • 身体的・精神的に手術を受けることができる

手術前の具体的な検査および紹介から手術までの期間は、加入している保険会社によって異なる可能性があります。

通常、減量・代謝改善手術が考慮される際に年齢だけが要因となることはありません。18歳未満の人では、減量・代謝改善手術は短期的にも長期的にも良好な結果を出しています。

次のような場合には、手術は適切ではありません。

  • 管理されていない精神疾患(うつ病など)がある場合

  • 物質使用症がある場合

  • 寛解に至っていないがんなど、生命を脅かす病気がある場合

減量・代謝改善手術の種類

減量・代謝改善手術は次の2つのいずれかの方法で行います。

  • 低侵襲手術

  • 開腹手術

通常は、腹腔鏡手術やロボット支援手術などの低侵襲手技が用いられます。腹腔鏡手術では、へその近くを小さく切開し、そこから腹腔鏡(カメラ付きの管状の機器)を挿入します。その後、ほかに4~6点の手術器具を、同様に小さく切開した部分から、腹部に挿入します。ロボット支援手術では、執刀医は小さく切開した部分に通した器具をロボットアームで保持し操作します。従来の開腹手術は腹部の中央を上下に長く切開するもので、現在では特定の症例でしか行われません。低侵襲手技では、開腹手術に比べて痛みが少なく、回復期間が短くなります。

減量・代謝改善手術では、以下のことが行われる場合があります。

  • 胃の大きさを減少させ、ときに小腸の一部もバイパスさせる(例えば、ルーワイ法による胃バイパス術)

  • 内視鏡下手技(胃内バルーン留置など)

どちらの手術も、食べられる量に制限をかけます。また、代謝やホルモンに変化をもたらし、例えばより早く満腹感を得られるようにすることで、体重減少を促進します。

米国で行われる最も一般的な手術には以下のものがあります。

垂直遮断胃形成術や調節性胃バンディング術などの一部の手術は、現在ではほとんど行われません。

スリーブ状胃切除術

スリーブ状胃切除術は、米国で最も一般的に用いられる減量・代謝改善手術です。かなりの減量が起こり、それが持続します。

胃の大半を切除し、胃をバナナに似た細い管(スリーブ)状にします。小腸には変化を加えません。

その結果、スリーブに保持される食品の量が減り、摂取カロリーの量がも少します。また、空腹感も軽減します。

スリーブ状胃切除術の結果、特定のホルモンの変化が起こり、それにより満腹感を覚えるのが早くなることがあり、減量に貢献する可能性があります。また、この変化によって体内でのブドウ糖の利用が改善され、それにより糖尿病の改善につながる可能性もあります。

重篤な合併症の発生はまれです。胃内容物がスリーブの外に漏出すると、感染が起こる可能性があります。胃食道逆流症(GERD)が生じたり、悪化したりする場合があります。手術前にGERDによる顕著な症状がみられる場合は、スリーブ状胃切除術を受けないよう助言されることがあります。いかなる手術でも重篤な出血が起こる可能性があります。

ルーワイ法による胃バイパス術

ルーワイ法による胃バイパス術では、胃を小さな部分と残りの部分に分けて、小さな胃の袋(ポーチ)を作ります。その結果、一度に食べられる食物の量が劇的に減少します。このポーチを小腸の下部(空腸)につなぎます。それにより、胃と小腸の大部分がバイパスされます。この配置がYの字に似ていることから、手術法の名前がつけられています。ポーチと腸のつなぎ目は狭くなるように作られます。結果として、食物がポーチから腸へゆっくりと出ていき、患者は満腹感をより長く感じることができます。食物が、離断された胃の下部と小腸の上部(多くの消化と吸収が行われる場所)を迂回するため、吸収される食物の量とカロリーの量が少なくなります。その後、胃と十二指腸を迂回させた部分を小腸の下部で接続することにより、消化液(肝臓で生成される胆汁酸および膵酵素)が食物と混ざり合い、食物が消化される状態を維持します。また、ビタミンとミネラルを含む栄養素も変わらず吸収されるため、栄養不良のリスクが低下します。

胃のバイパス術(およびスリーブ状胃切除術)の結果、特定のホルモンの変化が起こります。この変化によって、満腹感を覚えるのが早くなることがあり、減量に貢献する可能性があります。また、この変化によって体内でのブドウ糖の利用が改善され、それにより糖尿病の改善や解消につながる可能性もあります。

ほとんどの患者が一晩以上入院します。

胃のバイパス術を受けた人の多くが、脂肪や精製された糖が多く含まれる食品を食べるとダンピング症候群を起こすことがあります。ダンピング症候群の症状としては、消化不良、吐き気、下痢、腹痛、発汗、ふらつき、筋力低下などがあります。ダンピング症候群は、未消化の食物が胃から小腸に早く移動しすぎたときに起こります。スリーブ状胃切除術と同様に、胃バイパス術の合併症として、出血が起こる可能性や、新しい接続部で胃内容物が胃から漏出した場合に感染が起こる可能性があります。術後いつでも発生する可能性があるまれな合併症として、腸閉塞があります。

消化管のバイパス

この手術(ルーワイ法による胃バイパス術と呼ばれます)では、胃の一部を他の部分と分けて、小さな胃の袋(ポーチ)を作ります。このポーチを小腸の下部につなぎ、Yの字に似た配置にします。その結果、胃と小腸の一部がバイパスされます。しかしその後も消化液(胆汁酸と膵酵素)が食物と混ざり合うことができるため、体はビタミンとミネラルを吸収でき、栄養不良のリスクが低下します。

修正手術

ときに、目標体重に達しなかった場合、減量した体重が元に戻った場合、または別の合併症が発生した場合に、2回目の手術(修正手術と呼ばれます)が必要になることがあります。例えば、スリーブ状胃切除術の後に、胃食道逆流症(GERD)が発生した場合などです。GERDは、ルーワイ法による胃バイパス術によって治療できます。

修正手術は、最初の手術よりも複雑になる可能性があり、合併症のリスクがわずかに高くなります。しかし、この手術は経験豊富な肥満外科医が行った場合、安全かつ効果的です。

修正手術の種類は、最初の手術と修正手術が必要な理由によって異なります。例えば、胃バイパス術では胃の袋が伸展することがあるため、より小さくする必要があります。あるいは、胃とつながっている小腸の部分を短くする場合があります。このような手術を行うことで、カロリーや栄養素の吸収、摂取可能な食物の量が減少します。

修正手術の前には通常、内視鏡検査が行われます。観察用の柔軟な管状の機器を口から喉に通し、消化管の上部を検査します。バリウムX線検査も行われることがあります。バリウムを飲み込んだ後にX線撮影が行われ、バリウムによって消化管の輪郭が映し出されて、医師が消化管の異常を特定するのに役立ちます。

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術は、米国で行われる肥満外科手術の5%未満にとどまっています。しかし、毎年の手術件数は増えつつあります。

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術は通常、非常に重度の肥満の場合にのみ行われます。

この手術は、大きく3つの段階に分けられます。

回腸の途中でさらに接続を行い、ルーワイ法による胃バイパス術で行われるものと同様のY字型の構造を形成します。

まず、スリーブ状胃切除術を行って、胃の大部分を切除します。

次に、小腸の最初の部分(十二指腸)をちょうど胃の終わり部分で離断します。その十二指腸と腸の下部(回腸)を接続し、食物がスリーブを通って、十二指腸の始まりの部分から回腸へと通過できるようにします。次に、回腸の途中にもう一つの接続箇所を作ります。

これにより、小腸の中間部分の大半(空腸)が迂回されます。その結果、消化液(胆汁酸と膵酵素)と食物が通常混ざるところで、混ざることができなくなり、栄養素とカロリーの吸収が低下します。大幅な減量が達成されますが、サプリメントを摂取しないと栄養欠乏症が生じる可能性があります。この手術の後には検査を行い、ビタミンとミネラルの欠乏症がみられないか調べます。十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術は、メタボリックシンドロームにも役立つ場合があります。

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術は、1回の手術で行う場合もあれば、2回に分けて行う場合がありますが、後者では最初にスリーブ状胃切除術のみを行って、最初の体重減少後に十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術を行います。

スリーブ状胃切除術を伴う単一吻合十二指腸回腸バイパス術

スリーブ状胃切除術を伴う単一吻合十二指腸回腸バイパス術は、十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術と似ていますが、やや単純で迅速に施行でき、栄養素を吸収する小腸の部分がより長いため、栄養欠乏症のリスクが低くなります。主な違いは、スリーブ状胃切除術を伴う単一吻合十二指腸回腸バイパス術では接続が1箇所のみであることです。

最初に、スリーブ状胃切除術を行って胃の大部分を切除し、小さなバナナ型の胃を形成します。

小腸の最初の部分(十二指腸)を胃のすぐ下で離断します。もう1箇所、小腸(回腸)の下端から数フィートのところを切開します。そして、胃につながる十二指腸の切断端を回腸に接続します。小腸として機能する部分の長さが比較的長いまま保たれるため、より多くの栄養素が吸収されます。

この手術の後も、引き続き栄養補助食品を摂取し、欠乏症がないかモニタリングを受ける必要がありますが、十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術の後と比べて欠乏症が生じる可能性は低くなります。大幅な減量が維持され、空腹感が軽減され、血糖値がコントロールされます。

この手術により、胃食道逆流症の症状がみられたり、悪化したりすることがあります。胆汁の逆流も起こることがあります。

内視鏡下手技

内視鏡下に行う新しい手技は、手術を受けられない人や手術を希望しない人の治療に役立つ可能性があります。

1つの手技として、膨らませていないバルーンをのどから胃に通して、生理食塩水で満たす方法があります。バルーンにより胃に保持できる食物の量を減らすことで、少量の食物を食べただけで満腹感を感じられるようにします。6カ月後、バルーンを除去します。体重は最初は減少しますが、長期的には元に戻ることもあります。

別の手技として、内視鏡的スリーブ状胃形成術があります。医師が内視鏡を口からのどに入れて、さらに胃へと進め、その内視鏡を通して器具を胃に挿入します。そして、胃を内側から縫合して、胃を小さくします。合併症発生率は低いです。最も一般的な合併症としては、吐き気、消化管出血、胃内容物の漏出、感染症などがあります。

胃食道逆流症が内視鏡的スリーブ状胃形成術後に起こる可能性は低いです。また、内視鏡的スリーブ状胃形成術は元に戻る場合があります。5年後の結果では、体重減少は維持されるものの、一部の患者では修正手術が必要であることが示されています。

調節性胃バンディング術

調節性胃バンディング術は、米国では現在、ほとんど行われていません。この手術を受けた人が、調節性胃バンディング術のバンドを除去してスリーブ状胃切除術または胃バイパス術を受けることが増えています。

調節性胃バンディング術では、バンドを胃の上端に取り付け、胃を小さな上部と大きな下部に分けます。食物は腸へ移動していく途中でバンドの部分を通過しますが、バンドによって食物の移動が遅くなります。バンドにはチューブをつなぎ、チューブのもう一方の端には、(ポートを介して)バンドへのアクセスを可能にする装置があります。ポートは皮膚のすぐ下に留置して、医師が手術後にバンドの締まり具合を調節できるようにします。医師は、ポートからバンドに液体を注入して膨らませ、胃の上部と下部の間の通り道を狭くすることが可能です。また、問題が生じた場合やバンドの締め付けが強すぎる場合は、バンドから液体を抜いて、通り道を太くすることもできます。通り道が狭いと、胃の上部はより早く満杯になり、脳に胃が満杯になったという信号を送ります。その結果、食事の量が減り、時間の経過とともに体重が大きく減ります。

長期にわたる合併症としては、胃食道逆流症、食道炎、バンドのずれ、およびバンドの下の組織の変質などがあります。

胃の緊縛(バンディング)

この手術では、調整可能なバンドを胃の上部の周囲に取り付けます。これにより、医師は必要に応じて食物が胃を通過する際の通り道のサイズを調整できます。

腹部を小さく切開した後、観察用の管状の機器(腹腔鏡)を挿入します。外科医は腹腔鏡で観察しながら、バンドを胃の上部の周囲に取り付けます。バンドの内側は膨らませることが可能なリングになっており、これをもう一方の端が小さなポートになっているチューブに接続します。ポートは皮膚のすぐ下に留置します。皮膚を通して特別な注射針をポートに挿入できます。注射針は、バンドに生理食塩水を入れたり抜いたりするのに使います。これにより、通り道を狭くしたり太くしたりできます。通り道が狭いと、胃の上部が早く満杯になり、満腹感を覚えるのが早くなるため食べる量が減ります。

減量・代謝改善手術の評価

減量・代謝改善手術の前に、手術が患者の役に立つ可能性が高いかどうかを確認するために、患者の評価が行われます。医師は、手術後に必要となる生活習慣の改善に対して患者がどの程度準備ができていてどの程度従うことができるかを判断しようとします。

身体診察および検査が行われます。以下のような検査が行われます。

  • 重要臓器の機能を確認するために手術前に通常行われる検査

  • 血液検査。肝臓の検査(肝機能を測定し、損傷の有無を調べる検査)や、血糖値およびコレステロールなどの脂肪(脂質)の空腹時測定などを含む

  • ビタミンD、ビタミンB12、葉酸、鉄の値を測定する血液検査

  • 冠動脈疾患がないか確認するための心電図検査

  • ときに、消化管の評価(X線検査または内視鏡検査による)

  • ときに、胆嚢を含む腹部の超音波検査

  • ときに、心エコー検査(心臓の超音波検査)

  • ときに、肺の機能を評価する肺機能検査、例えば患者に喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある場合

  • ときに、甲状腺機能検査

  • ときに、睡眠の評価(睡眠ポリグラフなど)と睡眠時無呼吸症候群の検査

特定の病気が見つかった場合は、それをコントロールし手術のリスクを減らすための対策がとられます。例えば、高血圧に対する治療などが行われます。喫煙者は、手術前に少なくとも8週間、できれば永続的に禁煙するように指導されます。喫煙は、手術後の呼吸器の問題や消化管の潰瘍と出血のリスクを高めます。

精神的な健康状態の評価と栄養学的評価も行われます。患者は服用している薬剤や薬用ハーブについて主治医に報告する必要があります。抗凝固薬(ワルファリンなど)やアスピリンなどの一部の薬剤は、手術前に使用を中止することがあります。

減量・代謝改善手術の後

手術後には痛み止めが処方されます。

減量・代謝改善手術の後には、いくつかの症状がよくみられますが、問題の発生を示すものではありません。しかし、以下の症状があるときは、医師に連絡するか病院に行く必要があります。

  • 切開部分における発赤、ひどい痛み、腫れ、悪臭、じくじくするなどの感染症の徴候

  • 切開部分の縫合した縁の分離

  • 持続または悪化する腹痛

  • 長引く熱または悪寒

  • 嘔吐

  • 切開した部位からの持続的な出血

  • 心臓の鼓動の異常

  • 下痢

  • 黒くタール状で悪臭を放つ便

  • 息切れ

  • 発汗

  • 突然の顔面蒼白

  • 胸痛

どのくらいで普通の食事に戻れるかは、人によって異なります。手術後約2週間は、食事はほとんど流動食にします。少量を1日に何回も摂取するように指示されます。液体を処方された通りに飲むようにします。液体の大半は、タンパク質の液体サプリメントのはずです。次の2週間は、大半が高タンパク食品を潰したものとタンパク質のサプリメントからなる、柔らかい食事をとるようにします。通常4週間後には、固形の食品を食べられるようになります。

以下の方法が、消化の問題や不快感を避けるのに役立ちます。

  • 少量ずつ飲み込む

  • 十分に噛む

  • ファストフード、ケーキ、クッキーなど脂肪や糖分の多い食品を避ける

  • 1回の食事で食べる量を少しだけにする

  • 固形の食品を食べているときに液体を飲むのを避ける

新しい食事のパターンに慣れるのは難しい場合があります。カウンセリングや支援団体が有益な場合もあります。

通常、手術後にはいつも服用している薬剤の使用を再開できます。ただし錠剤は砕く必要があることがあり、また長時間作用型か徐放性製剤の薬剤を服用し続けている場合、医師はその薬剤を即放性製剤に切り替える必要があります。

手術の翌日には歩行や脚の運動を開始するべきです。血液の凝固を避けるため、長時間ベッドにとどまらないようにします。およそ1週間後には通常の活動に戻ることができ、2~3週間後には通常の運動(有酸素運動、筋力トレーニングなど)を再開できます。重い物を持ち上げたり肉体労働をする前には担当医に相談するようにし、そうした行動は通常6週間は避けるべきです。

起こりうる問題

患者が痛みを感じることがあり、吐き気や嘔吐がみられる人もいます。便秘がよく起こります。水分を多めに摂取してベッドに長時間とどまらないようにすることが、便秘の軽減に役立ちます。

切開に伴う問題や感染症、肺に行く血栓(肺塞栓)、肺の問題などの深刻な合併症が、どの手術後にも起こる可能性があります(手術後を参照)。

さらに、減量・代謝改善手術後には以下の合併症が起こることもあります。

  • 腸閉塞:およそ2~4%の割合で、腸がねじれたり瘢痕組織が形成されることによって腸閉塞が起こります。閉塞は手術後数週間から数カ月、数年経ってからも発生する可能性があります。症状としては、ひどい腹痛、吐き気、嘔吐、ガスが通過しにくい、便秘などがあります。

  • 漏出:約1~3%の割合で、胃と腸の間の新しい接続部分で漏出が起こることがあります。漏出は通常、手術後2週間以内に起こります。その結果、胃の内容物が腹腔(腹膜)内に漏出して深刻な感染症(腹膜炎)を起こすことがあります。症状は、心拍数の増加、腹痛、発熱、息切れ、全身のけん怠感などです。

  • 出血:胃と腸の接続部分、消化管の他の部分、腹腔内で出血が起こることがあります。吐血、血性下痢、黒いタール状の便などがみられることがあります。

  • 胆石速やかな減量を目的とした食事の実施に成功した人の多くで、胆石が生じます。減量・代謝改善手術を受けた人の最大15%で、後に胆嚢の摘出が必要になります。

  • 腎結石:ルーワイ法による胃バイパス術では、シュウ酸塩が尿中に蓄積するため、腎結石のリスクをわずかに増加させます。尿中のシュウ酸塩の濃度の上昇は、カルシウム結石の形成を促します。石の形成を予防するためには、シュウ酸塩を含む食品を手術後は避けることが勧められます。シュウ酸塩を多く含む食べものには、ホウレンソウ、ダイオウ、アーモンド、皮付きのベイクドポテト、ひき割りトウモロコシ、大豆粉などがあります。

  • 痛風:肥満によって痛風が発生するリスクが増加します。痛風の患者では、減量・代謝改善手術の後により多く痛風発作が起こることがあります。

  • 栄養不良:十分なタンパク質をとるための集中的な努力を行わない場合、タンパク質欠乏症になることがあります。手術後には、ビタミンやミネラル(ビタミンB12、ビタミンD、カルシウム、鉄など)も吸収されないことがあります。嘔吐が長期間続くとチアミン欠乏症が起こることがあります。手術後、生涯を通じてビタミンとときにミネラルなどのサプリメント(手術の種類に応じて)を服用する必要があります。

  • 生殖器の健康:妊娠可能年齢の女性の妊よう性は、手術後に改善することがあります。このような女性は、肥満外科手術の前後は避妊することが望ましく、手術前および手術後12~18カ月は妊娠を避けるべきです。

  • 死亡:特別な認可を受けた病院で、手術後1カ月間の死亡率は0.2~0.3%です。それ以外の病院では、死亡(および深刻な合併症)のリスクがより高い可能性があります。死亡の原因としては、血栓が肺に入る、胃や腸の接続部分からの漏出によって起きる重度の感染症、心臓発作、肺炎、小腸の閉塞などがあります。血栓や閉塞性睡眠時無呼吸症候群の病歴がある人、手術前の機能状態があまりよくなかったか開腹手術が必要な人では、リスクが増加します。非常に重度の肥満である、男性である、または高齢であることが、死亡のリスクを増加させることがあります。

体重減少

減量・代謝改善手術後の体重減少の平均は、手術法によって異なります。体重減少は通常、減少した超過体重の割合で表されます。超過体重は、患者の実際の体重と理想の体重との差として定義されます。

スリーブ状胃切除術では、超過体重の減少率は2年後で33~58%です。

ルーワイ法による胃バイパス術では、超過体重の減少率は2年後で50~65%です。

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術およびスリーブ状胃切除術を伴う単一吻合十二指腸回腸バイパス術では、75~90%の超過体重が減少します。

大半の患者では体重がいくらか増えますが、減量分の大半は最大で10年間維持できます。

フォローアップ

ルーワイ法による胃バイパス術またはスリーブ状胃切除術の後数カ月間(体重の減少が最も急速な時期)は、通常は4~12週間毎に通院するようにスケジュールが組まれます。その後のスケジュールでは6~12カ月毎に通院します。

通院時は体重と血圧を測定し、食習慣について話し合います。問題があればどんなものでも医師に報告するべきです。定期的に血液検査を行います。ビタミンDの欠乏によって骨量が減少していないかを調べるために骨密度を測定することもあります。

医師はさらに、手術後に患者の特定の薬剤への反応が変化していないか確認します。薬剤の例としては、高血圧の治療薬(降圧薬)、糖尿病の治療薬(血糖降下薬とインスリン)、コレステロール高値の治療薬(脂質低下薬)などがあります。術後、体重が減少してこれらの疾患が軽症化すれば、こういった薬剤を完全に中止することがあります。

その他の利点

多くの病気は、手術前にあったものが減量・代謝改善手術の後に治癒したり軽くなったりする傾向があります。そうした病気には、一部の心臓の異常、糖尿病閉塞性睡眠時無呼吸症候群関節炎、およびうつ病などがあります。糖尿病は、ルーワイ法による胃バイパス術から6年後に最大62%の患者で治癒します。

死亡のリスクが25%低下し、その主な理由は心疾患またはがんによる死亡のリスクが低下するためです。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS