強迫性パーソナリティ障害

執筆者:Mark Zimmerman, MD, South County Psychiatry
レビュー/改訂 2021年 5月
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やさしくわかる病気事典

強迫性パーソナリティ障害は、結果的に仕事の完了を妨げるような規律性、完全主義、コントロール(柔軟性や効率性の余地がない)への広汎なとらわれを特徴とします。

  • 強迫性パーソナリティ障害の患者は、物事をコントロールしている状態におき、自身の完全主義を追求する特定のあり方で物事を進めないと気がすみません。

  • 強迫性パーソナリティ障害の診断は、細部、規則、スケジュール、秩序、およびリストに対するとらわれ、また仕事の完成を妨げてでもある物事を完全に行うことの重視などの、特定の症状に基づいて下されます。

  • 精神力動的精神療法や認知行動療法が役立つことがあります。

パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。

強迫性パーソナリティ障害の患者は、物事をコントロールしている状態におかないと気がすまず、何事も一人で行い、他者の助けを信用しない傾向があります。

強迫性パーソナリティ障害は最も多いパーソナリティ障害の1つです。有病率の推定値にはばらつきがありますが、おそらくは米国の一般集団の2~8%程度であるようです。この病気は男性により多くみられます。

家族内で受け継がれる一定の特性(強迫性、感情の幅の狭さ、完全主義)がこの障害に関わっていると考えられています。

他の病気もしばしばみられます。患者には、しばしば以下のうち1つ以上の病気もみられます。

強迫性パーソナリティ障害では、強迫症とは異なり、過度の手洗いや何度もドアに鍵がかかっているかを確かめるなど、真の強迫観念(大きな不安の原因となる反復的で自分の意思に反した侵入的な思考)や強迫行為(自分の強迫観念をコントロールするために行わなければならないと感じる儀式)はみられません。また強迫症患者はしばしば強迫行為を抑えられないことに苦痛を感じます。対照的に、強迫性パーソナリティ障害の患者は、強迫的な行動は秩序、完全主義、コントロールという自分の目標を達成するために必要なことと考えているために、それらの行動を快く思っています。

症状

秩序と完全主義の重視

強迫性パーソナリティ障害の患者は、秩序、完全主義、また自身や状況のコントロールに対してとらわれています。コントロールしている感覚を維持するために、患者は規則、取るに足らない些細なこと、手順、スケジュール、リストを重視します。このとらわれが柔軟性、実効性、違う考え方の受け入れやすさを発揮する妨げとなります。患者は自分の活動について柔軟性がなく、頑固であり、あらゆる物事が特定の方法で行われなければならないと主張します。

仕事に及ぼす影響

この障害の患者は規則、詳細、段取り上の問題を重視するために、計画や活動の要点を見失います。このような患者はミスがないか繰り返し確認し、あらゆる細部に注意を払います。時間を有効に活用することがなく、しばしば最も重要な仕事を最後まで残してしまいます。細部やすべてを完全にすることへのとらわれのために、仕事の完了が際限なく遅れることがあります。患者は自分の行動が同僚にどのように影響を及ぼしているかについて気づきません。ある仕事にかかりきりになると、生活の他の側面すべてをおそろかにすることがあります。

強迫性パーソナリティ障害の患者は、あらゆることを特定の方法で行おうとするため、仕事を任せたり、他者と一緒に働いたりすることが難しくなります。他者と一緒に働く場合、患者は仕事をどのようにやるべきかについて詳細なリストを作成し、同僚が別の方法を提案すると動揺することがあります。スケジュールに遅れている場合でも手助けを拒否することがあります。

強迫性パーソナリティ障害の患者は、仕事や生産的活動に非常に打ち込む傾向があります。その動機は経済的な必要性にはありません。

生活の他の側面に及ぼす影響

仕事に打ち込むあまり、患者は余暇の活動や人間関係をおろそかにします。患者はリラックスしたり、友人と出かけたりするひまがないと考えることがあります。休暇の取得を長く先延ばしにして、結局休暇を取らなかったり、取っても時間を無駄にしないように仕事をもっていかなければならないと感じたりします。友人と過ごすことになっても、その時間は改まって準備された活動(スポーツなど)に費やされる傾向があります。趣味やレクリエーション活動は、習得のための計画や勤勉性が求められる重要な課題とみなされ、その目標は熟達となります。

このような患者は前もって極めて詳細に計画を立て、変更を考えることを望みません。患者の頑なな柔軟性のなさのために、同僚や友人がいらだちを覚えることがあります。

感情の表現も厳格に抑制されます。人付き合いは形式的な、堅苦しい、または真面目なものになる場合があります。話すべき正確な内容を考えてからでないと話し出さないこともよくあります。論理や知性を重んじ、感情的行動や表現行動には不寛容です。

その他の症状

強迫性パーソナリティ障害の患者は、道徳、倫理、価値観の問題に関して過度に熱心で、気難しく、厳格なことがあります。厳格な道徳的原則を自他に課し、ひどく内省的です。

権威を頑固に敬い、規則を厳密に守ることを主張し、酌量すべき状況に対しても例外を認めません。

感情的価値のないものであっても、使い古されたものや不要なもの(故障した電気器具など)を捨てることが非常に困難です。

強迫性パーソナリティ障害の患者は、お金は将来の災害のために取っておくべきものと考えているため、お金を使いたがらないことがあります。

診断

  • 具体的な診断基準に基づく医師による評価

パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)に基づいて下されます。

強迫性パーソナリティ障害の診断を下すには、以下の4つ以上に示されるように、秩序、完全主義、また自己、他者、状況のコントロールに対する持続的なとらわれが認められる必要があります。

  • 細部、規則、スケジュール、秩序、およびリストに対するとらわれがある。

  • 仕事の完成に支障があってもある物事を完全に行おうとする。

  • 仕事や生産的活動に過度に没頭し(経済的必要性によるものではない)、結果的に余暇活動や友人をないがしろにする。

  • 倫理的、道徳的問題や価値観に関して過度に誠実、厳格で柔軟性がない。

  • 感情的価値のないものであっても、使い古されたものまたは不要なものを捨てたがらない。

  • 他者が正確に患者の望む通りに物事を行うことに同意しない限り、他者に仕事を任せたり、他者とともに働いたりしたがらない。

  • お金を将来の災害のために取っておくべきものと考えているため、自分や他者に対して金銭を出し惜しむ。

  • 柔軟性がなく、頑固である。

また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。

治療

  • 精神力動的精神療法

  • 認知行動療法

  • 特定の抗うつ薬

強迫性パーソナリティ障害の一般的治療は、すべてのパーソナリティ障害に対するものと同様です。

患者の柔軟性のなさ、頑固さ、コントロールへの欲求が治療の妨げになることがあります。

精神力動的精神療法認知行動療法が強迫性パーソナリティ障害患者に有用なことがあります。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる種類の抗うつ薬も有用な場合があります。

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