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統合失調型パーソナリティ症

執筆者:Mark Zimmerman, MD, South County Psychiatry
レビュー/改訂 2023年 9月
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やさしくわかる病気事典

統合失調型パーソナリティ症は、親密な関係に対する強い居心地の悪さとそのような関係を築く能力の低さ、思考や知覚の歪み、ならびに風変わり(奇妙)な行動の広汎なパターンを特徴とする精神疾患です。

  • 統合失調型パーソナリティ症の人は、自分が他者とは異なり、どこにも属していないように感じているため、他者と交流しないことを好む場合があります。

  • 統合失調型パーソナリティ症の診断は、親密な関係に対する強い居心地の悪さ、思考や知覚の歪み、奇妙な行動などの、特定の症状に基づいて下されます。

  • 治療法としては、抗精神病薬、抗うつ薬、認知行動療法があります。

パーソナリティ症は、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたす思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる精神疾患です。

統合失調型パーソナリティ症の人は現実との接触が弱く、思考や会話が他のパーソナリティ症で生じるよりも解体しています。しかし、思考や行動は統合失調症ほど異常でも、現実との接触を失っているわけでもありません。

統合失調型パーソナリティ症は、米国では1%未満から4%の人に発生していると推定されています。男性で若干多くみられる場合があります。統合失調型パーソナリティ症は、患者が歳を取っても、大半のパーソナリティ症のように消失したり、軽減したりすることがありません。

他の病気もしばしば認められます。統合失調型パーソナリティ症患者の半数以上はうつ病を1回以上経験しており、患者の30~50%で、統合失調型パーソナリティ症が診断された際にうつ病が認められます。そのような人ではしばしば物質使用症も認められます。

統合失調型パーソナリティ症の原因

統合失調型パーソナリティ症の発症には遺伝子が重要な役割を果たしていると考えられています。統合失調症または他の精神症の患者の第1度近親者(親、兄弟、子ども)でより多くみられます。

統合失調型パーソナリティ症の症状

人間関係に及ぼす影響

統合失調型パーソナリティ症の人は、第1度近親者を除いて親しい友人や相談相手がいません。また人と関わることに強い居心地の悪さを感じます。必要があれば人と交流しますが、自分が他者とは異なり、どこにも属していないように感じているため、交流しないことを好みます。しかし、患者は人間関係がないために自分は不幸であると言うこともあります。患者は社会的状況、特に不慣れな状況で非常に不安になります。ある状況で過ごす時間が増えても患者の不安が和らぐことはありません。

この疾患がある人は、基本的な社会慣習を無視することがあり(視線を合わせないなど)、また通常の社会的手がかりを理解しないため、他者との交流が不適切であったり、よそよそしかったりします。

奇妙な思考と行動

統合失調型パーソナリティ症患者には、奇妙な思考、知覚、会話がみられます。以下にいくつか例を挙げます。

  • 関係念慮:関係念慮をもつ患者は、日常の出来事が自分にのみ特別な意味をもつと考えます。

  • 魔術的思考:自分には他者を魔術的にコントロールできる力があると考えます。例えば、他者に通常の行為(イヌに餌を与えるなど)をさせているのは自分である、または魔術的儀式を行うことで害を防ぐことができる(手を3回洗うことで病気を防ぐことができるなど)と考えることがあります。

  • パラノイア:疑い深く、不信感に満ち、実際にはそうではないのに、他者が自分をやっつけたり、自分に害を及ぼそうとしたりしていると考えます。

  • 超能力:自分に超能力があり、出来事が起こる前にそれを察知したり、他者の心を読んだりすることができると考えます。

話し方が奇妙になることがあります。抽象的になりすぎたり、具体的になりすぎたりし、また奇妙なフレーズを含んでいたり、フレーズや言葉を奇妙な形で使ったりします。奇妙な服を着たり、だらしない状態で着たり(合わない服や汚い服を着るなど)することがあり、奇妙な癖をもっていることもあります。

現実の知覚

統合失調型パーソナリティ症患者では、知覚(見ること、聴くこと、感じること)が歪むことがあります。例えば、自分の名前をささやく声が聴こえたりします。

統合失調型パーソナリティ症の診断

  • 標準の精神医学的診断基準に基づく医師による評価

パーソナリティ症の診断は通常、米国精神医学会が作成した精神疾患の診断に関する標準のリファレンスである精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版TR(DSM-5-TR)の基準に基づいて下されます。

統合失調型パーソナリティ症の診断を下すには、患者は親密な関係に対して強い居心地の悪さを感じていて、そのような関係がほどんどなく、また奇妙な思考や行動を示している必要があります。また、以下の5つ以上もみられる必要があります。

  • 関係念慮

  • 奇妙な信念または魔術的思考

  • 歪んだ知覚

  • 奇妙な思考および発話

  • 疑念または猜疑性思考

  • 不適切な感情または感情表現の少なさ

  • 奇妙、風変わり、または独特の行動や外見

  • 第1度近親者を除き、親しい友人や相談相手がいないこと

  • 慣れによって和らぐことがなく、主に妄想的恐怖に関連する過度の社交不安

また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。

統合失調型パーソナリティ症は、似ていますが、より重度の症状を引き起こす統合失調症と区別する必要があります。

統合失調型パーソナリティ症の治療

  • 抗精神病薬および抗うつ薬

  • 認知行動療法

統合失調型パーソナリティ症の治療における一般原則は、すべてのパーソナリティ症に対するものと同じです。

統合失調型パーソナリティ症の主な治療法は薬剤です。抗精神病薬(統合失調症の治療に使われます)により不安などの症状が軽減します。新しい(第2世代)抗うつ薬も、統合失調型パーソナリティ症の人の不安を和らげるのに役立つことがあります。

社会的技能の習得と不安への対処に焦点を当てた認知行動療法が役立つことがあります。このような治療法により、自分の行動がどのように受け取られている可能性があるかについて患者の自覚を高めることもできます。

医師は、このパーソナリティ症をもつ患者と感情的、好意的、支持的関係を築くよう努め、そうして他者とより適切な形で関わることを学ぶのを支援します。

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