高齢患者に対するスクリーニングの推奨度の抜粋

検出対象疾患

検査

頻度

備考*

腹部大動脈瘤

腹部超音波検査

65~75歳で1回

喫煙経験のある男性:USPSTF推奨度B

喫煙経験のない男性:USPSTF推奨度C

喫煙経験のある女性:USPSTF推奨度I

喫煙経験のない女性:USPSTF推奨度D

虐待またはネグレクト

虐待について問診する(例,「家庭や家族について話したい問題はありますか。」)

少なくとも1回

全例:USPSTF推奨度I

アルコールの誤用

アルコール依存症スクリーニング質問票(例,AUDIT,AUDIT-C)

年1回

65歳以上を含む全成人:USPSTF推奨度B

スクリーニング検査で陽性となった全患者:簡易的な行動カウンセリングによる介入のUSPSTF推奨度B

アルコール使用症の基準を満たす患者:禁酒を推奨

ASCVD(動脈硬化性心血管疾患[1])

Framingham基準(75歳まで)

Reynoldsリスクスコア(80歳まで)

Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)スコア(85歳まで)

5年毎

総合的な危険因子‡を複数有する患者ではより頻回

ACC/AHAは,場合により血清脂質値,高感度C反応性タンパク値,および/またはABIの測定を推奨している(2)

高齢女性:高齢男性と同様の方法でスクリーニングを行う

認知障害(例,認知症せん妄

認知障害スクリーニング尺度(例,Mini-Cog)

年1回

地域社会で生活する65歳以上の成人:USPSTF推奨度I

抑うつ(うつ病)

うつ病スクリーニング質問票(例,PHQ-2)

年1回

65歳以上を含む全成人:USPSTF†推奨度B

2型糖尿病

空腹時血漿血糖値

年1回

過体重または肥満の35~70歳の成人:USPSTF推奨度B

過体重,肥満,または他の危険因子§を有する35歳以上の成人:ADAは少なくとも3年毎のスクリーニングを推奨している(3)

転倒のリスク

前年の転倒および歩行または平衡感覚の問題に関する問診

Get-Up-and-Go Test,STEADI,または別の転倒リスク評価ツール

年1回

65歳以上の全成人:AGSおよびBGSが推奨する転倒リスク評価ツールを使用(4)

地域社会で暮らす65歳以上の患者で転倒のリスクが高い場合:運動介入に対するUSPSTF推奨度B

ビタミンDの補給はもはや推奨されない:USPSTF推奨度D

緑内障

眼圧測定

年1回

40歳未満の全成人:USPSTF推奨度I

聴力低下

ベッドサイドでの聴覚検査

年1回

50歳以上の全成人:USPSTF推奨度I

HIV感染

血清,血液,または口腔液のHIV検査の実施

少なくとも1回

15~65歳の全成人およびHIV危険因子を有する65歳以上の患者:USPSTF推奨度A

高血圧

血圧測定

血圧が正常で危険因子のない18~39歳は3~5年毎

40歳以上の場合ならびに正常高値血圧および/または危険因子(例,過体重または肥満,座位時間の長い生活習慣,濃厚な家族歴,アフリカ系アメリカ人)がある場合,年1回

18歳以上の全例:USPSTF推奨度A(治療は診察室での血圧の初回測定値と診察室外での追加測定値に基づく)

肥満関連の罹病および死亡

身長および体重の測定

BMI(kg/m2)算出¶

必要に応じて年1回以上

BMIが30を超える全ての成人:多くの要素で構成される行動療法への紹介:USPSTF推奨度B

骨粗鬆症

二重エネルギーX線吸収法

多くて2年毎

65歳以上の全ての女性:USPSTF推奨度B

正式なスクリーニングツールによりリスクが高いと判断された65歳未満の女性:USPSTF推奨度B

65歳以上の男性:USPSTF推奨度I

性感染症(STI)

行動カウンセリング

少なくとも1回

性的に活動的な全ての青年およびSTIのリスクが高い成人:USPSTF推奨度B

甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症

甲状腺刺激ホルモン値

NA

妊婦以外の全成人:USPSTF推奨度I

喫煙

喫煙に関する問診

少なくとも1回

全成人:喫煙を報告した全例:禁煙カウンセリングおよび適切な薬物療法:USPSTF推奨度A

視力障害

スネレン視標による視力検査

必要に応じて毎年

65歳以上の全成人:USPSTF推奨度I

ビタミンD欠乏症

血中25-ヒドロキシビタミンD濃度

N/A

USPSTF推奨度I

* 表中の推奨は主にUSPSTFに依拠するものであり,ときにCDCおよびその他の機関に依拠するものもある。

推奨は専門家団体によってわずかに異なる。USPSTFの推奨度はエビデンスの強度および純便益(便益から害を差し引いたもの)に基づく:

  • A = 支持する強力なエビデンスがある

  • B = 支持する良好なエビデンスがある

  • C = 便益と害がほぼ均衡しているため,推奨の根拠を示すことができない

  • D = 支持しないエビデンスがある

  • I = 推奨するかしないかを示すエビデンスが不十分である

†USPSTFは,正確な診断,効果的な治療法,およびフォローアップを確実に行うためのシステムを有する施設においてのみ,スクリーニングを推奨する。

‡ ASCVDの総合的な危険因子としては,高血圧,喫煙,高血糖,運動不足,過体重,肥満などがある。

§危険因子(American Diabetes Association)としては,運動不足,リスクが高い人種/民族,糖尿病を有する第1度近親者,HDL-C < 35mg/dL および/またはTG > 250mg/dL,A1C ≥ 5.7%,IGTまたはIFG,心血管疾患の既往,高血圧,インスリン抵抗性に関連する状態(重度の肥満,黒色表皮腫,多嚢胞性卵巣症候群など)などがある。

¶BMI 25 = 過体重,BMI 30 = 肥満。

AAOS = American Academy of Orthopedic Surgeons;ABI = 足関節上腕血圧比;ACC = American College of Cardiology;ADA = American Diabetes Association;AGS = American Geriatrics Society,AUDIT = Alcohol Use Disorder Identification Test;AUDIT-C = abbreviated AUDIT Consumption Test;BGS = British Geriatrics Society;BMI = body mass index;HDL-C = 高比重リポタンパク質コレステロール;IFG = 空腹時血糖異常;IGT = 耐糖能異常;MESA = Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis;NA = 該当なし;PHQ-2 = Patient Health Questionnaire-2;USPSTF = U.S. Preventive Services Task Force

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