高齢者における薬物関連の問題

執筆者:J. Mark Ruscin, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;
Sunny A. Linnebur, PharmD, BCPS, BCGP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of Colorado
レビュー/改訂 2021年 7月
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高齢者では薬物関連の問題がよくみられ,具体的には薬物の無効,薬物有害作用,過量投与,過少投与,不適切な治療,不十分なモニタリング,アドヒアランス不良,薬物相互作用などがある。(高齢者における薬物療法の概要も参照のこと。)

高齢者においては,臨床医の過少投与(例,有害作用に対する懸念の増大により),またはアドヒアランス(服薬遵守)不良のため(例えば,経済的制約または認知的限界のため)薬物が無効となる可能性がある。

薬物有害作用とは,望ましくなく,不快な,または危険な薬物の作用である。よくみられる例として,過鎮静,錯乱,幻覚,転倒,および出血がある。通院している65歳以上の人々において,薬物有害作用は1,000人年に約50件の割合で発生する。高齢患者の薬物有害作用による入院率(約17%)は,若年患者(4%)の4倍高くなっている。高齢患者におけるこれらの入院の66%は以下4つの薬剤または薬物クラスに起因する―ワルファリン,インスリン,経口抗血小板薬,および経口血糖降下薬。

薬物関連の問題の原因

薬物有害作用はどんな患者にも起こりうるが,高齢者の一部の特徴により感受性が高くなる。例えば,高齢者はしばしば複数の薬剤を服用しており(ポリファーマシー),薬力学および薬物動態も加齢に伴い変化している;これら両方が有害作用のリスクを増加させる。

薬剤が処方され,適切に服用されていても,薬物有害作用は年齢を問わず起こりうる;例,新たに発生するアレルギー反応は予測または予防ができない。しかしながら,有害作用は高齢者において,少なくとも25%の症例で回避可能であると考えられている。多くの場合,特定の薬物クラスが関与している:抗精神病薬,ワルファリン,抗血小板薬,血糖降下薬,インスリン,抗うつ薬,催眠鎮静薬。

高齢者では,薬物有害作用,無効,またはその両方においてよくみられる原因のいくつかは回避可能である(薬物関連の問題における予防可能な原因の表を参照)。重大な原因の1つには,医療従事者と患者または医療従事者間での不十分なコミュニケーション(特に医療の移行期における)が関係している。患者の入院時や退院時,またはその他のケアの移行(介護施設から病院,または高度看護施設から自宅への移動)の際に,薬物治療の調整に十分な注意が払われていたなら,薬物関連の問題の多くは回避できたはずである(1-3)。

表&コラム
表&コラム

薬物と疾患の相互作用

患者の年齢を問わず,ある疾患を治療するために与えられた薬剤が,他の疾患を増悪させることがあり,このような相互作用は高齢者においては特に懸念される。しばしば微妙な薬物有害作用を疾患の影響と鑑別することは困難であり,(高齢者において注意を要する薬物と疾患の相互作用の表を参照)処方のカスケードにつながる可能性がある。

処方のカスケードは,薬物有害作用が新たな疾患の症状または徴候であると誤解され,それを治療するための新たな薬剤が処方されるときに起こる。この新しい不必要な薬剤がさらなる有害作用をもたらし,それがさらなる疾患と誤解され,不必要な治療が施されるなどの問題が起こる可能性がある。

多くの薬剤は,高齢者によくみられる,または加齢による変化に起因する,疾患の症状に似た有害作用を有する。以下がその例である:

  • 抗精神病薬はパーキンソン病に似た症状をもたらす可能性がある。高齢者においては,これらの症状がパーキンソン病として診断され,ドパミン作動薬で治療されることがあり,抗パーキンソン病薬による有害作用(例,起立性低血圧症,せん妄,幻覚,悪心)を引き起こす可能性がある。

  • コリンエステラーゼ阻害薬(例,ドネペジル,リバスチグミン,ガランタミン)は認知症患者に処方されることがある。これらの薬剤は,下痢,頻尿または切迫性尿失禁を引き起こす可能性がある。患者はその時点で,この新たな症状を治療するために抗コリン薬(例,オキシブチニン)を処方される可能性がある。このように,不要な薬剤が加えられ,薬物有害作用および薬物間相互作用のリスクを上昇させる。より良い対策としては,コリンエステラーゼ阻害薬の用量を減らすか,または異なった作用機序をもつ他の認知症の治療薬(例,メマンチン)を考慮することである。

  • カルシウム拮抗薬(例,アムロジピン,ニフェジピン,フェロジピン)は高血圧患者に処方されることがある。これらの薬剤は高血圧を適切に治療しうるが,末梢浮腫を引き起こすこともある。その後,患者に利尿薬(例,フロセミド)が処方されることがあり,これにより低カリウム血症が生じてカリウム補充が必要になる場合がある。より良い戦略は,カルシウム拮抗薬を減量または中止して,アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬などの他の降圧薬に切り替えることである。

高齢患者に対して処方者は常に,新たな症状や徴候が既存の薬物療法によってもたらされている可能性がないか考慮すべきである。

表&コラム
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薬物間相互作用

高齢者はしばしば多数の薬剤を服用しているため,特に薬物間相互作用の影響を受けやすい。高齢者はしばしば薬用ハーブおよび他の栄養補助食品も使用しており,それを医療提供者に伝えない可能性がある。薬用ハーブは処方薬との相互作用がある可能性があり,有害作用につながることがある。例えば,ワルファリンとイチョウ葉エキスを一緒に服用すると出血のリスクを増すことがあり,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)とセントジョーンズワートを一緒に服用すると,セロトニン症候群のリスクを増すことがある。したがって,医師は薬用ハーブとビタミンサプリメントを含む栄養補助食品について患者に具体的に尋ねるべきである。

高齢者における薬物間相互作用は一般集団とほとんど異ならない。しかしながら,特定の薬剤(例,フェニトイン,カルバマゼピン,リファンピシン)によるチトクロムP450(CYP)薬物代謝の誘導は高齢者では減少する可能性がある;したがって,その薬物代謝の変化(増加)は高齢者においてあまり顕著に現れない可能性がある。他の多くの薬剤はCYP代謝を阻害するため,この排泄経路に依存する薬物の毒性のリスクを増大させる。高齢者は典型的に多数の薬剤を服用しているため,複数の予想困難なCYP相互作用に対するリスクが高くなる。また,同様の有害作用をもつ1種類以上の薬剤の同時使用により,有害作用のリスクが増加するか,有害作用の重症度が増す可能性がある。

不十分なモニタリング

薬剤使用のモニタリングには以下が含まれる:

  • 新しい薬剤の適応を記録すること

  • 患者が現在使用中の薬剤リストを医療記録に保管すること

  • 治療目的の達成および新しい薬剤に対する他の反応をモニタリングすること

  • 効力または有害作用に関して必要な臨床検査の結果をモニタリングすること

  • 継続の必要性について薬剤を定期的にレビューすること

高齢患者にとってこういった対策は特に重要である。特に新しい薬剤が処方されたあとの綿密なモニタリングの欠如は,ポリファーマシー,有害作用および薬剤の無効のリスクを増大させる。モニタリングを促進するための基準が,医薬品使用状況のレビュー基準の一環として,Health Care Financing Administration expert consensus panelによって開発されている。この基準は,不適切な用量または治療期間,治療の重複,および起こりうる薬物間相互作用に焦点を置いている。

不適切な薬物の選択

有益性よりも有害性の可能性が高い場合,その薬剤は不適切とされる。不適切な薬剤の使用には以下のものが含まれる:

  • 不適切な薬剤,用量,投薬の頻度,または治療期間の選択

  • 治療の重複

  • 薬剤の薬物相互作用およびしかるべき適応が考慮されていない

  • 急性疾患が消失してからも,その疾患に適切な薬剤が誤って投与され続ける(患者がある医療環境から他へ移動し,その適応が再評価されていない場合に起こりうる)

一部のクラスの薬剤は,高齢者において特に懸念される。薬剤には,問題が非常に多いため高齢者においては常に回避すべきであるもの,ある種の状況で回避すべきであるもの,および一層の注意を施すことで使用できる可能性があるものがある。American Geriatrics Society Beers Criteria®高齢者において潜在的に不適切な薬剤の表を参照)は,高齢者に潜在的に不適切な薬剤を薬物の種類に応じて記載している;ほかにも同様の一覧表が利用できる(4)。代替の主な薬物療法とそれを裏付ける参考文献の一覧表も利用可能である(5)。臨床医は,治療の潜在的な便益とリスクを各患者で評価しなければならない。終末期においては,薬物療法に関する決定が全く異なるため,この基準は終末期の患者には当てはまらない。

American Geriatrics Society Beers Criteria®およびその他の基準に関する知識やその普及にもかかわらず,いまだに高齢者に不適切な薬剤が処方されている;典型的に,地域社会で暮らす高齢者の約20%は,少なくとも1種類の不適切な薬剤を投与されている。このような患者において,有害作用のリスクは上昇する。介護施設の患者において,不適切な使用はまた入院と死亡のリスクも増加させる。入院患者を対象としたある研究では,27.5%が1種類の不適切な薬剤を投与されていた。

不適切な薬剤(例,ジフェンヒドラミンおよび経口非ステロイド系抗炎症薬[NSAID])には,OTC薬として入手可能なものもある;したがって,臨床医は,OTC薬の使用に関して患者に質問し,それらの薬剤が引き起こすことのある潜在的な問題について患者と話し合うべきである。

高齢者はしばしば軽度の症状(他の薬剤の有害作用を含む)に対して,非薬理学的な治療(例,運動,理学療法,マッサージ,食習慣の変更,認知行動療法)や有害作用を引き起こしている薬剤の用量を減らすことで,より良い治療ができる可能性がある場合でも,薬剤(典型的には鎮痛薬,プロトンポンプ阻害薬,または睡眠薬)を処方されている。追加の薬剤の投与を開始することは,しばしば不適切である;便益は低く,費用は上がり,そして新しい薬剤がさらなる毒性を引き起こす可能性がある。

高齢者における不適切な薬剤使用の問題を解決するためには,短いリストに載っている薬剤を避けることや,注意を要する薬剤のカテゴリーに気を配る以上のことを要する。潜在的な便益 vs 害のほか,薬剤の継続的な必要性を判断するため,患者の薬剤レジメン全体についても定期的に評価されるべきである。

患者によるアドヒアランスの欠如

高齢の外来患者では,アドヒアランス(服薬遵守)の欠如によってしばしば薬剤の有効性が損なわれる。アドヒアランスは言語の障壁を含む多くの因子によって影響されるが,年齢自体による影響はない。半数に及ぶ高齢者は指示通りに薬剤を服用せず,通常,処方量より少ない量を服用している(アドヒアランス不良)。原因はより若年成人と同様である。さらに,以下も寄与する:

  • 経済的および物理的な制約により薬剤の購入が困難になる可能性がある

  • 指示通りの服用が困難となる可能性のある認知的な問題

  • 複数の薬剤の使用(ポリファーマシー)

  • 1日に数回または特定の方法で服用する必要のある薬剤の使用

  • 何のための薬剤(便益)なのか,または有害作用(害)をどのように認識し,管理するのかについての理解不足

投薬回数の頻度が多すぎる,もしくは少な過ぎるレジメン,多剤併用レジメン,またはその両方は,患者が遵守するのに複雑すぎる可能性がある。臨床医は,患者のヘルスリテラシーおよび薬剤レジメンを遵守する能力(例,器用さ,手の筋力,認知,視力)を評価し,使用しやすい容器,大きな活字で印刷された薬のラベルおよび説明書,飲み忘れ防止アラーム付き容器,1日分の薬剤収納容器,服用の確認電話,または服薬支援などの手配および推奨により彼らの制限に対応する努力をすべきである。薬剤師と看護師は,高齢患者に会うたびに教育を提供し,処方箋の指示を一緒にレビューすることで支援することができる。薬剤師は,患者が予定通りに薬剤を補充しているか,または処方が非合理的でないか,もしくは誤っていないかに注意することで,問題を同定できる可能性がある。多くの薬局は,薬剤の補充パターンをチェックし,処方薬の補充が適切な間隔で行われていない場合に患者および/または処方者に連絡することができる。

過量投与

もしも処方者が薬物動態および薬力学に影響を及ぼす加齢変化について考慮しなければ,高齢患者に対し適切な薬剤の過剰用量が処方される可能性がある。例えば,腎障害をもつ患者においては腎排泄される薬剤(例,ガバペンチン,一部の抗菌薬,ジゴキシン)の用量は調整されるべきである。

通常,必要量にはかなり個人差があるものの,薬剤は高齢者においては最低の用量から開始すべきである。一般的に,薬物の治療係数が小さい場合,薬物によって他の症状が増悪する可能性がある場合,そして特に患者がフレイルである場合には,成人の通常用量の約1/3~1/2の開始量が適応となる。その後,望ましい効果が現れるまで用量は耐えられる限り漸増される。用量を増量するときには,有害作用について患者を評価し,可能であれば薬物濃度をモニタリングすべきである。

過量投与はまた,薬物相互作用により体内薬物量が増加した場合,または複数の医療従事者がある薬剤を処方し,他の医療従事者も同じあるいは同様の薬剤を処方していることに気づかない場合にも起こりうる(治療の重複)。

不十分なコミュニケーション

移行期(ある医療環境から他への)における医療情報の不十分なコミュニケーションは,病院において全ての薬剤エラーの最大50%,および薬物有害作用の最大20%の原因となっている。患者が病院から退院する際に,その病院で開始され,その病院でのみ必要とされていた薬剤レジメンは(例,睡眠鎮静薬,緩下薬,プロトンポンプ阻害薬),退院時の処方者によって不必要に継続される場合がある。これは不注意による場合もあれば,プライマリケアの処方者と連絡を取る時間や能力が不足している場合もある。逆に,医療施設に入院する際に,コミュニケーション不足により,必要な維持薬が不注意により見落とされる結果になることがある。薬剤の照合とは,ケアの移行のたびに全ての処方薬を確認する正式な過程のことを指し,エラーや見落としをなくすのに役立つ。

過少処方

適切な薬剤が過少処方される可能性がある―すなわち,使用により最大の有効性が得られていない。過少処方は,罹患率および死亡率を上昇させ,生活の質を低下させる可能性がある。臨床医は適正用量の薬剤と,適応に応じて多剤併用レジメンを使用すべきである。

高齢者においてしばしば過少処方されるものとして,うつ病,アルツハイマー病,心不全,心筋梗塞後(β遮断薬),心房細動(抗凝固薬),および高血圧などを治療する薬剤がある。また,予防接種は必ずしも推奨通りに行われていない。

  • β遮断薬:心筋梗塞および/または心不全の既往を有する患者では,合併症のリスクが高い高齢患者(例,肺疾患または糖尿病の患者)でさえ,これらの薬剤が死亡率および入院を減少させる。

  • 降圧薬:高齢者における高血圧の治療ガイドラインが利用可能であり,たとえフレイルな高齢者であっても治療は有益であると思われる(脳卒中および重大な心血管イベントのリスクを低下させる)。それにもかかわらず,研究では高齢患者の高血圧症はしばしば至適に管理されていないことが示されている。

  • アルツハイマー病治療薬:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびNMDA(N-メチル-d-アスパラギン酸)拮抗薬はアルツハイマー病患者に有益であることが示されている。便益の度合いはあまり高くなく,様々であるが,患者および家族はこれらの薬剤の使用について情報を得た上で決定する機会を与えられるべきである。

  • 抗凝固薬:抗凝固薬(ワルファリンおよび新しい直接作用型経口抗凝固薬の両方)は心房細動のある患者における脳卒中のリスクを低下させる。一般的に抗凝固療法では出血のリスクが増加するが,抗凝固療法が有益となる可能性があっても,一部の高齢者はその投与を受けていない。

  • 予防接種:高齢者ではインフルエンザ,肺炎球菌感染症および帯状疱疹による罹患および死亡のリスクがより大きい。高齢者における予防接種率にはまだ改善の余地がある。

慢性疾患のある高齢患者においては,急性疾患または関連のない疾患が過少治療されている可能性がある(例,COPD[慢性閉塞性肺疾患]の患者において高コレステロール血症が未治療の場合がある)。臨床医は,有害作用のリスクを上昇させること,または期待余命が少ない患者において治療の効果を得るのに時間を要することを懸念して,このような治療を差し控える可能性がある。臨床医は,全ての患者が対処できる,または対処したいと望んでいるのは主要な問題の治療のみであると考えるか,患者には追加された薬剤の費用を支払えないと考える可能性がある。臨床医が患者の優先したいことや懸念を理解することができるように,患者および介護者は薬物治療における意思決定に積極的に参加すべきである。

参考文献

  1. 1.Tam VC, Knowles SR, Cornish PL, et al: Frequency, type and clinical importance of medication history errors at admission to hospital: a systematic review.CMAJ 173(5):510-5, 2005.doi: 10.1503/cmaj.045311

  2. 2.Wong JD, Bajcar JM, Wong GG, et al: Medication reconciliation at hospital discharge: evaluating discrepancies.Ann Pharmacother 42(10):1373-9, 2008.doi: 10.1345/aph.1L190

  3. 3.Forster AJ, Clark HD, Menard A, et al: Adverse events among medical patients after discharge from hospital.CMAJ 170(3):345-9.

  4. 4.The American Geriatrics Society 2019 Beers Criteria Update Expert Panel: American Geriatrics Society updated Beers Criteria® for potentially inappropriate medication use in older adults.J Am Geriatr Soc 67(4):674-694, 2019.doi:10.1111/jgs.15767

  5. 5.Hanlon JT, Semla TP, Schmader KE, et al: Alternative medications for medications in the use of high-risk medications in the elderly and potentially harmful drug-disease interactions in the elderly quality measures.J Am Geriatr Soc 63(12): e8-e18, 2015.doi: 10.1111/jgs.13807

予防

新しい薬剤を開始する前に

高齢者における薬物有害作用のリスクを低下させるために,臨床医は新しい薬剤を開始する前に以下を行うべきである:

  • 薬物以外での治療を考慮する

  • 患者および/または介護者とケアの目標について話し合い,薬物療法から便益が期待される期間を設定する

  • それぞれの新しい薬剤の適応を評価する(不必要な薬剤の使用を回避するため)

  • 薬物動態または薬力学における加齢変化,および必要用量にそれらが及ぼす影響を考慮する

  • 適応に対して最も安全な薬物治療を選択する(例,非炎症性関節炎には,経口非ステロイド系抗炎症薬[NSAID]の代わりにアセトアミノフェンを選択)

  • 可能性のある薬物と疾患の相互作用および薬物間相互作用について確認する

  • 最小有効量で開始する

  • 必要最小限の薬剤を使用する

  • 併存疾患およびそれらが薬物有害作用に寄与する可能性に注意する

  • 各薬剤の用法と有害作用について説明する

  • 薬剤の服用方法(一般名および商品名,各薬剤名の綴り,各薬剤の適応,および複数の薬物を含有する製剤の説明など)とその薬剤が必要になる可能性が高い期間について患者に明確な指示を与える

  • 似通った薬剤名に起因する混乱が生じることを見込んで,混乱しそうな薬剤名は全て指摘しておく(例,Glucophage®およびGlucovance®

薬剤開始後

薬剤を開始した後に以下を実施すべきである:

  • 新しい症状が,薬物関連でないことが判明するまで,薬物関連性であると想定する(処方のカスケードを防止するため)

  • 薬物有害作用の徴候に関し,薬物濃度の測定,および必要に応じて他の臨床検査を行うことを含め,患者をモニタリングする

  • 治療に対する反応を記録し,望まれた効果を達成するために,必要に応じて用量を増量する

  • 定期的に薬物療法の継続の必要性を再評価し,もはや必要でない薬剤や潜在的なリスクが便益を上回る薬剤は中止する

継続的に実施

以下は継続的に実施すべきである:

薬物治療の調整は,医療システムの中でのいかなる移行時においても,薬剤レジメンに関する情報の引き継ぎを確実に行えるようにする過程である。この過程には,患者が服用している全ての薬剤を特定してリスト(薬剤名,用量,頻度,経路)にすること,得られたリストを移行時に医師の指示と比較することなどが含まれる。薬物治療の調整は,全ての移動の際(入院,転院,および退院)に実施すべきである。

医師の指示用のコンピュータプログラムは,潜在的問題(例,アレルギー,腎機能障害患者における用量減量の必要性,薬物間相互作用)について臨床医に注意を喚起することができる。これらのプログラムは,臨床医に薬物有害作用に関して特定の患者を綿密にモニタリングするよう合図を送ることもできる。

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