高齢者における薬力学

執筆者:J. Mark Ruscin, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;
Sunny A. Linnebur, PharmD, BCPS, BCGP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of Colorado
レビュー/改訂 2021年 7月
意見 同じトピックページ はこちら

    薬物動態とは対照的に,薬力学は薬物が生体に与える影響ないし薬物に対する生体の反応と定義され,受容体への結合,受容体下流の作用,および化学的相互作用によって影響を受ける(薬物-受容体相互作用を参照)。高齢者においては,若年者と比較して作用部位における同程度の薬物濃度の効果(感受性)が,大きかったり小さかったりする可能性がある(薬物反応における加齢の影響の表を参照)。こうした違いは,薬物-受容体相互作用や受容体後の事象の変化,または適応的な恒常性維持反応の変化,およびフレイルな高齢者においては,しばしば臓器の病理学的変化に起因する可能性がある。しかし,薬力学と薬物動態との臨床的な鑑別はときに困難な可能性がある。

    高齢者は,抗コリン薬の作用に特に感受性が高い。多くの薬剤(例,三環系抗うつ薬,鎮静性抗ヒスタミン薬,泌尿器系に対する抗ムスカリン薬,一部の抗精神病薬,アトロピン様作用を有する抗パーキンソン病薬,多くのOTC医薬品の睡眠薬および感冒薬)には抗コリン作用がある。高齢者(最も顕著であるのは認知障害患者)では,これらの薬剤による中枢神経系への有害作用が生じやすく,錯乱や眠気を呈することがある。さらに抗コリン薬は,一般的に便秘,尿閉(特に前立腺肥大症の高齢男性で),霧視,起立性低血圧,口腔乾燥を引き起こす。低用量であっても,これらの薬剤は発汗を抑制することで,熱中症のリスクを増加させることがある。概して高齢者では,可能であれば,抗コリン作用を有する薬剤を回避すべきである。

    表&コラム
    表&コラム
    quizzes_lightbulb_red
    Test your KnowledgeTake a Quiz!
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS