大動脈二尖弁は,弁尖が2つしかない(正常では3つある)状態である。
大動脈二尖弁は,最も頻度の高い先天性の心血管異常である。出生児の0.5~2%にみられる(1)。
大動脈二尖弁の患者は,感染性心内膜炎,大動脈弁逆流症,および/または大動脈弁狭窄症を発症しやすい。大動脈二尖弁は,大動脈基部または上行大動脈の拡張や大動脈縮窄症を合併することもある。
大動脈二尖弁は遺伝する傾向があり,家系内有病率は9%と報告されているため,大動脈二尖弁患者の第1度近親者は,スクリーニングとして心エコー検査を受けるべきである。二尖弁は大動脈基部または上行大動脈の進行性の拡張および動脈瘤形成に至る大動脈疾患を合併するため,たとえ正常な弁機能を有する患者であっても,二尖弁を認識しておくことはフォローアップのために重要である。この合併症の有病率は報告された研究間で大きく異なるが,一般には,30歳未満の患者の最大56%に拡張がみられるとされる(2)。
総論の参考文献
1.Freeze SL, Landis BJ, Ware SM, Helm BM: Bicuspid aortic valve: a review with recommendations for genetic counseling.J Genet Couns 25(6):1171–1178, 2016.
2.Tadros TM, Klein MD, Shapira OM: Ascending aortic dilatation associated with bicuspid aortic valve: pathophysiology, molecular biology, and clinical implications.Circulation 119(6):880–890, 2009. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.108.795401
大動脈二尖弁の症状と徴候
大動脈二尖弁の小児は,弁の機能障害がないかあってもわずかな場合,おおよそ無症状である。症状は合併症の種類によって異なるが,具体的には感染性心内膜炎による発熱や,弁の逆流または狭窄による呼吸困難,疲労,失神,動悸,および運動耐容能低下などがある。
診察では収縮早期クリック,収縮期駆出性雑音のほか,大動脈弁逆流が存在する場合は漸減性の拡張期雑音が聴取される。
大動脈二尖弁の診断
身体診察
心エコー検査
診断は身体診察および心エコー検査による。身体診察では通常,心尖部および基部に顕著な収縮早期の駆出音(クリック)が聴取される。この所見は,多くの場合,患者を座らせた状態で最もよく聴取することができ,I音の直後に心尖部でクリックが聴取されるが,これはI音の顕著な分裂に似る。大動脈弁狭窄による収縮期雑音が心基部で聴取されたり,大動脈弁逆流がある場合には高調な拡張期雑音が聴取されたりすることがある。
心エコー検査では,大動脈弁の3つの弁尖のうち2つが融合している特徴的な所見がみられる。右冠尖と左冠尖の融合が最も一般的な形態である。右冠尖と左冠尖が融合している小児では,弁の機能障害が進行して小児期に介入が必要になる可能性が高くなる。
大動脈二尖弁の治療
バルーン拡張術または外科的修復
大動脈二尖弁の治療は,重度の弁機能障害が発生した場合と症状が現れた場合に適応となる。治療としては,狭窄した弁のバルーンによる拡張または外科的修復を行う。弁の逆流は手術で治療する。
上行大動脈または大動脈基部に重度または進行性の拡張が認められる場合,これらの部分の置換が適応となることがある。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
American Heart Association: Common Heart Defects: Provides overview of common congenital heart defects for parents and caregivers