口腔顔面裂は,口唇,口蓋,またはその両方が正中線で閉鎖せず開口したままとなる先天異常であり,結果として口唇裂,口蓋裂,またはその両方がみられる。これらの異常は出生時からみられ,哺乳やその後の言語発達の妨げになる。
口唇裂,口唇口蓋裂,および単独の口蓋裂を総称して口腔裂と呼ぶが,これは最も頻度の高い頭頸部先天異常であり,全体での有病率は出生1000人当たり2.1例である。
環境因子と遺伝因子の両方が原因として推定されている。出生前の母親による喫煙および飲酒によってリスクが増大する。罹患児が1人いると,2人目の罹患リスクが高くなる。このリスクは,妊娠前から第1トリメスターにかけて葉酸を摂取することで低減できる。
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(頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。)
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口腔裂は2群に分けられる:
症候群性(30%)
非症候群性(70%)
症候群性の口腔裂は,認識された先天性症候群または複数の先天異常を有する患者にみられるものである。この種の口腔裂は,典型的には染色体異常や明らかな単一遺伝子症候群によって引き起こされる。
非症候群性(孤発性)の口腔裂は,合併異常および発達遅滞がない患者にみられるものである。症候群性口腔裂に関与する遺伝子の突然変異など,いくつかの遺伝子変異がこの表現型の原因となる可能性があり,症候群性の口腔裂と非症候群性の口腔裂の間には有意な重複があることが示唆される。
裂隙は軟口蓋に限られるものから,軟口蓋および硬口蓋,上顎歯槽突起,ならびに口唇の全てに及ぶものまであり,その程度は様々である。最も軽度の状態は二分口蓋垂である。口唇裂が単独で発生することもある。
口蓋裂は哺乳と言語発達に支障を来し,耳感染症のリスクを増大させる。治療の目標は,正常な哺乳,発話,および顎顔面部の発育を確保することと,瘻孔形成を回避することである。
診断
臨床的な外観
遺伝学的検査
たとえ先天異常が単独で存在するように見える場合でも,臨床遺伝専門医が患者の評価を行うべきである。
先天性頭蓋顔面異常がある患者の評価では,染色体マイクロアレイ解析,特異的遺伝子検査,または広範な遺伝子パネル検査を考慮すべきである。これらの検査で診断に至らない場合には,全エクソーム配列決定が推奨される。
口唇裂および口蓋裂の治療
外科的修復
外科的修復に先立つ初期治療は,個々の異常で異なるものの,特注の哺乳瓶用乳首(流入を円滑化する)または歯科補綴物(裂隙を埋めて吸啜を可能にする)と,圧搾により調製乳を送り出すことのできる哺乳器,テーピング,患児の口蓋に合わせた人工口蓋が使用される。頻回に生じる急性中耳炎を認識して治療しなければならない。
最終的な治療法は外科的閉鎖であるが,前上顎部(premaxilla)周囲の成長点に干渉する恐れがあるため,手術の施行時期については議論がある。口蓋裂に対しては,しばしば二期的手術が行われる。その場合,乳児期(生後3~6カ月)に口唇,鼻,および軟口蓋の裂隙を修復する。続いて生後15~18カ月時に,残る硬口蓋の裂隙を修復する。手術により有意な改善が得られることもあるが,変形が重度である場合や治療が不十分であった場合には,鼻声,美容的問題,逆流傾向が残ることがある。
歯科および歯科矯正治療,言語療法,ならびに遺伝カウンセリングが推奨される。