尿道カテーテル挿入は,軟性カテーテルを尿道から膀胱内に挿入する手技である。
いくつかの種類のカテーテルが使用できる。カテーテルが挿入できない場合は,恥骨上膀胱穿刺が必要になることがある。(膀胱カテーテル挿入,女性における尿道カテーテル挿入,および小児における尿路感染症も参照のこと。)
適応
禁忌
絶対的禁忌
最近の外傷による下部尿路の断裂の疑い
外傷患者では,膀胱カテーテルを挿入する前に,逆行性尿道造影または内診(およびときに膀胱鏡検査)により下部尿路の断裂(会陰血腫,外尿道口からの出血,または骨盤損傷により示唆される)を除外すべきである。
相対的禁忌
下部尿路に重大な異常がある
尿道狭窄の既往
尿道または膀胱頸部の再建術の既往
カテーテル挿入に困難を来したことがある
合併症
器具
パッケージキットが利用できる場合もあるが,そうでない場合,一般的に必要となる器具として以下のものがある:
滅菌ドレープおよび滅菌手袋
吸収性の敷きパッド
消毒液(例,ポビドンヨード,クロルヘキシジン)と綿棒,綿球,またはガーゼ
無菌の水溶性潤滑剤(2%リドカイン含有または非含有)
採尿用の滅菌済みカップ
尿道カテーテルのサイズは年齢によって異なる:新生児(正期産児)から生後6カ月までは5~6Fr,乳幼児には6~8Fr,思春期前の小児には10~12Fr,青年には12~14Fr
処置後に消毒液を除去するための布
その他の留意事項
下部尿路感染症を予防するため,無菌操作が必要である。
患者にラテックスおよびポビドンヨードに対するアレルギーがないことを確認する。
複数の手技を行う場合は,他の手技中に患児が排尿する可能性があるため,先に膀胱カテーテル挿入を済ませる。
重要な解剖
女児の解剖は成人女性と同様であるが,大きさに違いがある。
女性の外尿道口は陰核のすぐ下にある開口部で,腟開口部の上方に位置する。外尿道口が閉鎖しているように見える場合は,観察が困難なことがある。また,幼児では陰唇癒着を認めることがあり,その場合は外尿道口の観察がより困難になる可能性がある。
尿道が短く直線であるため,カテーテルは容易に挿入できる。
体位
患者を仰向けのfrog position(股関節と膝関節をやや屈曲し,踵をベッド上に置き,股関節を不快感のない範囲で外転した体位)にする。
助手に下肢または膝を保持させるべきである。
ステップ-バイ-ステップの手順
ここでは,間欠的導尿のためのカテーテルの挿入と抜去について説明する。
患児を安心させるため,親または養育者を同席させる。親に患児の手を握らせたり,患児にぬいぐるみを与えて遊ばせたり,その他の気を紛らわせる方法を用いたりすることが役立つ可能性がある。ときに鎮静が必要となる。
全ての器具を,ベッドサイドに置いたトレイ上の汚染されていない清潔野の,容易に手が届く範囲に配置する。
中身を汚染しないように注意しながら,キットを開封する。
吸収性の敷きパッドを,合成樹脂面が下を向くように殿部の下に敷く。
おむつが付いている場合は脱がせ,石鹸と水で湿らせた布で処置領域を洗浄する。乾いたタオルで処置領域を拭いて乾燥させる。その後,石鹸と水で手洗いをする。
無菌操作で手袋をはめる。
カテーテルの先端に滅菌潤滑剤を塗布し,清潔野に置く。
綿棒,綿球,またはガーゼに消毒液(例,ポビドンヨード)を染み込ませる。
滅菌穴あきドレープを外陰部が露出するように骨盤の上にかける。
利き手ではない方の手で陰唇を開き,外尿道口を露出させる。
ポビドンヨードを染み込ませた綿棒,ガーゼ,または綿球で外尿道口の周囲を消毒する。消毒は前方から後方に向かって進める。新たに不潔になった綿棒,ガーゼ,または綿球は廃棄するか,脇によけておく。ポビドンヨードを使用する場合は,対象の領域を3回消毒してから,乾燥するまで待つ。
空いている利き手でカテーテルを把持する。利き手でない方の手で陰唇を開く。外尿道口が見えにくい場合は,腟口の粘膜を愛護的に下方に牽引する。
カテーテルを愛護的に尿道の中を通し,尿が出てくるまで進める。カテーテルを繰り返し突いたり,無理に押したりしてはならない。尿は自然に流れ出るはずである。
カテーテルが腟内に入った場合は,そのカテーテルは目印としてそのままにしておき,別のカテーテルを使用する。
尿を検体容器に採取する。十分な量が得られない場合は,下腹部の膀胱上(恥骨上部付近)を愛護的にマッサージする。
カテーテルを愛護的に抜去する。
湿らせた布で残留したポビドンヨードを拭き取る。
アフターケア
ドレープを除去する。
注意点とよくあるエラー
尿路感染症の発生を予防するため,手技中は厳格な無菌操作に従うこと。
偽尿道の形成や尿道損傷を予防するため,挿入時に力を加え過ぎないこと。
アドバイスとこつ
著しい抵抗がある場合や,カテーテルが中で屈曲して前進しないように感じられる場合は,カテーテルの挿入を続けてはならない。
カテーテルが正しく入っているように見えるが尿が出てこない場合は,潤滑剤が尿の排出を妨げている可能性がある。カテーテルをその位置に保持した状態で,カテーテルを生理食塩水でフラッシュして潤滑剤を洗い流し,尿が出ることを確認した後,残りの手順に進む。
カテーテルが正しく入っているように見えるが尿が出てこず,かつ脱水による無尿の可能性が考えられる場合は,手技を再度試みる前に(患者の臨床状態に応じた)水分補給を考慮する。
カテーテル挿入に関する問題や特定の臨床状況におけるカテーテルのサイズおよび形状に関する指針については,泌尿器科医へのコンサルテーションを行う。カテーテルを挿入できない特定の状況は,経皮的な恥骨上穿刺の適応となる場合がある。