男児における膀胱へのカテーテル挿入

執筆者:Keara N. DeCotiis, MD, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children
レビュー/改訂 2020年 12月
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尿道カテーテル挿入は,軟性カテーテルを尿道から膀胱内に挿入する手技である。

いくつかの種類のカテーテルが使用できる。カテーテルが挿入できない場合は,恥骨上膀胱穿刺が必要になることがある。(膀胱カテーテル挿入男性における尿道カテーテル挿入,および小児における尿路感染症も参照のこと。)

適応

膀胱カテーテル挿入は,診断および/または治療を目的として行うことができる。

男児に膀胱カテーテルを挿入する主な理由は以下の通りである:

  • 指示に従って排尿することができない非常に年少の小児における尿検体の無菌的採取

比較的まれな理由としては以下のものがある:

  • 急性または慢性の尿閉(閉塞性尿路疾患)の解除

  • 神経因性膀胱の間欠的導尿

  • 膀胱尿道造影のための造影剤の注入

  • 膀胱洗浄

  • 薬剤の注入

  • 特定の入院患者における尿量のモニタリング(留置カテーテル;ここでは考察しない)

禁忌

絶対的禁忌

外傷患者では,膀胱カテーテルを挿入する前に,逆行性尿道造影(およびときに膀胱鏡検査)により下部尿路の断裂(会陰血腫,外尿道口からの出血,または骨盤損傷により示唆される)を除外すべきである。

相対的禁忌

  • 下部尿路に重大な異常がある

  • 尿道狭窄の既往

  • 尿道または膀胱頸部の再建術の既往

  • カテーテル挿入に困難を来したことがある

合併症

合併症としては以下のものがある:

  • 出血を伴う表在性の尿道または膀胱損傷(よくみられる)

  • 尿路感染症(よくみられる)

  • 偽尿道の形成

  • 瘢痕形成および狭窄

  • 膀胱穿孔(まれ)

  • 嵌頓包茎(本手技後に包皮を整復しなかった場合)

器具

パッケージキットが利用できる場合もあるが,そうでない場合,一般的に必要となる器具として以下のものがある:

  • 滅菌ドレープおよび滅菌手袋

  • 吸収性の敷きパッド

  • 消毒液(例,ポビドンヨード,クロルヘキシジン)と綿棒,綿球,またはガーゼ

  • 無菌の水溶性潤滑剤(2%リドカイン含有または非含有)

  • 採尿用の滅菌済みカップ

  • 尿道カテーテルのサイズは年齢によって異なる:新生児(正期産児)から生後6カ月までは5~6Fr,乳幼児には6~8Fr,思春期前の小児には10~12Fr,青年には12~14Fr

  • 処置後に消毒液を除去するための布

その他の留意事項

  • 下部尿路感染症を予防するため,無菌操作が必要である。

  • 患者にラテックスおよびポビドンヨードに対するアレルギーがないことを確認する。

  • 複数の手技を行う場合は,他の手技中に患児が排尿する可能性があるため,先に膀胱カテーテル挿入を済ませる。

重要な解剖

  • 男児の解剖は成人男性と同様であるが,大きさに違いがある。

  • 男性の尿道は,恥骨部で鋭角に屈曲する。尿道にカテーテルを挿入するときは,陰茎をまっすぐに伸ばして立て,弯曲をなくす。

体位

  • 患者を仰臥位にして,股関節を不快感のない範囲で外転し,膝を曲げたfrog position(股関節と膝関節をやや屈曲し,踵をベッド上に置き,股関節を不快感のない範囲で外転した体位)にする。

  • 助手に下肢または膝を保持させるべきである。

ステップ-バイ-ステップの手順

ここでは,間欠的導尿のためのカテーテルの挿入と抜去について説明する。

  • 患児を安心させるため,親または養育者を同席させる。親に患児の手を握らせたり,患児にぬいぐるみを与えて遊ばせたり,その他の気を紛らわせる方法を用いたりすることが役立つ可能性がある。ときに鎮静が必要となる。

  • 全ての器具を,ベッドサイドに置いたトレイ上の汚染されていない清潔野の,容易に手が届く範囲に配置する。

  • 中身を汚染しないように注意しながら,キットを開封する。

  • 吸収性の敷きパッドを,合成樹脂面が下を向くように殿部の下に敷く。

  • おむつが付いている場合は脱がせ,石鹸と水で湿らせた布で処置領域を洗浄する。乾いたタオルで処置領域を拭いて乾燥させる。その後,石鹸と水で手洗いをする。

  • 無菌操作で手袋をはめる。

  • カテーテルの先端に滅菌潤滑剤を塗布し,清潔野に置く。

  • 綿棒,綿球,またはガーゼにポビドンヨードを染み込ませる。

  • 滅菌穴あきドレープを陰茎が露出するように骨盤の上にかける。

  • 利き手でない方の手で陰茎幹を把持し,陰茎を腹壁に対して垂直に保ち,愛護的に牽引する。包皮切除を受けていない患者では,包皮を翻転させる。包皮を無理に翻転させてはならない。陰茎のすぐ下ではなく,両側面をつかむようにする;すぐ下には尿道が通っており,その部分を圧迫してしまうとカテーテルの進展が困難になることがある。この時点でこの手は不潔となるため,残りの手技中に陰茎から離したり,その手で器具に触れたりしてはならない。必要であれば,新しい滅菌手袋を使用してもよい。

  • ポビドンヨードを染み込ませた綿棒,ガーゼ,または綿球で亀頭を消毒する。外尿道口から始めて外側に向かって円を描くような動きを用いる。新たに不潔になった綿棒,ガーゼ,または綿球は廃棄するか,脇によけておく。ポビドンヨードを使用する場合は,対象の領域を3回消毒してから,乾燥するまで待つ。

  • 空いている利き手でカテーテルを把持する。

  • カテーテルをゆっくりと尿道に通し,尿が出てくるまで進める。患児が協力できる年齢であれば,一定の圧をかけ続けながら,患児にリラックスしてゆっくりと深呼吸するように指示する。カテーテルの挿入中は,膀胱括約筋の収縮によりいくらかの抵抗が生じることがある。膀胱括約筋が弛緩したときにカテーテルが進むよう,愛護的に一定の圧をかけ続ける。カテーテルを繰り返し突いたり,無理に押したりしてはならない。尿は自然に流れ出るはずである。

  • 尿を検体容器に採取する。十分な量が得られない場合は,下腹部の膀胱上(恥骨上部付近)を愛護的にマッサージする。

  • カテーテルを愛護的に抜去する。

  • 湿らせた布で残留したポビドンヨードを拭き取る。

  • 包皮切除を受けていない男児では,嵌頓包茎を予防するため,包皮を亀頭の上に戻しておく。

アフターケア

  • 包皮切除を受けていない患者では,嵌頓包茎を予防するため,包皮を亀頭上の正常な位置に戻すこと。

  • ドレープを除去する。

注意点とよくあるエラー

  • 尿路感染症の発生を予防するため,手技中は厳格な無菌操作に従うこと。

  • 嵌頓包茎の発生を予防するため,手技後に包皮を亀頭上の正常な位置に戻すこと。

  • 偽尿道の形成や尿道損傷を予防するため,挿入時に力を加え過ぎないこと。

アドバイスとこつ

  • 包皮を完全に翻転できない場合は,無理に翻転しないこと。外尿道口を十分に露出するには,愛護的に軽く引くだけで十分である。

  • 陰茎のすぐ下ではなく,両側面をつかむようにする;すぐ下には尿道が通っており,その部分を圧迫してしまうとカテーテルの進展が困難になることがある。

  • 著しい抵抗がある場合や,カテーテルが中で屈曲して前進しないように感じられる場合は,カテーテルの挿入を続けてはならない。

  • カテーテルが正しく入っているように見えるが尿が出てこない場合は,潤滑剤が尿の排出を妨げている可能性がある。カテーテルをその位置に保持した状態で,カテーテルを生理食塩水でフラッシュして潤滑剤を洗い流し,尿が出ることを確認した後,残りの手順に進む。

  • カテーテルが正しく入っているように見えるが尿が出てこず,かつ脱水による無尿の可能性が考えられる場合は,手技を再度試みる前に(患者の臨床状態に応じた)水分補給を考慮する。

  • カテーテル挿入に関する問題や特定の臨床状況におけるカテーテルのサイズおよび形状に関する指針については,泌尿器科医へのコンサルテーションを行う。カテーテルを挿入できない特定の状況は,経皮的な恥骨上穿刺の適応となる場合がある。

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