髄芽腫

執筆者:Kee Kiat Yeo, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2023年 1月
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髄芽腫は浸潤性で急速に増殖する小児中枢神経系腫瘍であり,後頭蓋窩(脳幹と小脳を含む)に生じる。診断はMRIおよび生検/腫瘍切除に基づく。治療は手術,放射線療法,および化学療法の併用である。

髄芽腫は,小児で最も頻度の高い後頭蓋窩の悪性腫瘍であり,小児の中枢神経系腫瘍全体でも2番目に頻度の高い悪性腫瘍である(1)。3~4歳および8~10歳の二峰性のピークを示すが,小児期を通じて生じる可能性がある。髄芽腫は中枢神経系胎児性腫瘍の一種である。

大半の患者で髄芽腫の病因は不明であるが,髄芽腫は特定の症候群(例,Gorlin症候群,Turcot症候群)で発生することがある。

参考文献

  1. 1.Ostrom QT, Price M, Neff C, et al: CBTRUS statistical report: Primary brain and other central nervous system tumors diagnosed in the United States in 2015-2019. Neuro Oncol 24(Suppl 5):v1–v95, 2022.doi: 10.1093/neuonc/noac202

髄芽腫の症状と徴候

大半の患者は頭蓋内圧亢進および小脳機能障害に関連した症状を理由に受診し,具体的には嘔吐,頭痛,悪心,視覚変化(例,複視),不安定歩行または巧緻運動障害などがみられる。

髄芽腫の診断

  • MRI

  • 生検検体または切除腫瘍全体の組織学的評価

ガドリニウム造影MRIは,髄芽腫が疑われる場合の初期評価で選択すべき検査である。確定診断は,初回来院時に生検または理想的には肉眼的全摘出により得た腫瘍組織を用いて行う。

髄芽腫では,初期診断が確立した後は,病期診断およびリスク群の判定が極めて重要である。

病期診断検査としては以下のものがある:

  • 脊椎全体のMRI

  • 髄液細胞診用の腰椎穿刺

  • 残存腫瘍評価のための術後脳MRI

リスク評価は残存腫瘍の量と病変の進展を示す所見に基づいて行う:

  • 高リスク:術後残存病変が1.5cm2以上または顕微鏡的もしくは肉眼的播種性病変が認められる。

  • 平均リスク:術後残存病変が1.5cm2未満で,かつ播種が認められない。

分子生物学的分類も診断評価の一部であり,それらの分類をベースとして治療法が進化している。髄芽腫の分子生物学的分類は,WNT活性化型,SHH活性化型,グループ3,およびグループ4で構成される。これら4つの主要グループを細分した下位分類として,新たに複数のサブグループが設定されている。

(世界保健機関[World Health Organization]の2021年版の中枢神経系腫瘍分類も参照のこと。)

髄芽腫の治療

  • 手術,放射線療法,および化学療法

髄芽腫の治療法としては,手術,放射線療法,化学療法などがある。

3歳未満の小児の一部では,放射線療法を回避または延期するレジメンを用いた化学療法のみで治癒が得られており,通常は手術と自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が併用される。

典型的には併用療法で最良の長期生存率が得られる。

髄芽腫の予後

予後は年齢,病期,組織型,細胞遺伝学的所見,および腫瘍の分子生物学的パラメータに依存する(1):

  • 3歳以上:5年無病生存率は,腫瘍が高リスクの場合で60~70%,平均的リスクの場合で80%である。

  • 3歳以下:予後はより不良で,その理由として,診断時に最高40%の患児で播種が起きていることと,この年齢群では放射線療法が回避/延期されるのが一般的であることが挙げられる。生存した小児には長期の重度神経認知障害(例,記憶,言語学習,および遂行機能)のリスクがある。

WNT活性化型は最も予後良好であり,全生存率は90~100%である。現在,WNT活性化型の髄芽腫患者を対象として,治療の軽減が可能かどうかを明らかにするための小児臨床試験が実施されている。

予後に関する参考文献

  1. 1.Ramaswamy V, Remke M, Bouffet E, et al: Risk stratification of childhood medulloblastoma in the molecular era: The current consensus. Acta Neuropathol 131(6):821–831, 2016.doi: 10.1007/s00401-016-1569-6

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. World Health Organization (WHO): The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: A summary

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