早産児

執筆者:Arcangela Lattari Balest, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 10月
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在胎37週未満で出生した児は早産児とみなされる。

未熟性は出生時点での在胎期間により定義される。かつては,体重2.5kg未満の新生児であれば全て早産児と呼ばれていた。早産児は小さい傾向にあるが,多くの体重2.5kg未満の乳児は,正期産の場合も,過期産の場合も,在胎不当過小である場合もあるため,この体重に基づいた定義は不適切である;これらの新生児は外観も異なれば,抱える問題も異なる。

米国において2021年には,出生のうち10.48%が早産児であり(1),2018には出生の26.53%が早期正期産であった(2017年の26%から有意に増加)(2)。早産児は,一部の正期産児と同じ大きさとなる後期早産児でさえも,その未熟性ゆえに,正期産児と比べて罹病率および死亡率が高くなっている。

在胎期間

在胎期間は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前から分娩日までの期間を指す。在胎期間は実際の胎齢とは異なるが,産科医および新生児専門医が胎児の成熟を議論する上での世界共通の基準となっている。

在胎37週より前に出生した場合は早産児とみなされる。早産児はさらに以下のように分類される:

出生体重

早産児は,正期産児と比べて体格が小さい傾向にある。Fenton成長曲線により,在胎期間に対するより正確な発育の評価が可能になる( see figure 早産男児のFenton成長曲線および see figure 早産女児のFenton成長曲線)。

早産児は出生体重により分類される:

  • 1000g未満:超低出生体重児(ELBW)

  • 1000~1499g:極低出生体重児(VLBW)

  • 1500~2500g:低出生体重児(LBW)

総論の参考文献

  1. 1.Hamilton BE, Martin JA, Osterman MJ: Births: Provisional Data for 2021.National Center for Health Statistics.National Vital Statistics System, Vital Statistics Rapid Release Program, no 20.Hyattsville, MD.National Center for Health Statistics.2022.

  2. 2.Martin JA, Hamilton BE, Osterman MJ: Births in the United States, 2018.NCHS Data Brief, no 346.Hyattsville, MD.National Center for Health Statistics.2019.

未熟性の病因

早産は以下の場合がある:

  • 選択的な早産

  • 自然早産

選択的な早産

American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)は,合併症を伴う多胎妊娠妊娠高血圧腎症前置胎盤/癒着胎盤前期破水などの病態において,後期早産期での分娩を推奨している。

ACOGは,合併症を伴う多胎妊娠の選択された症例では,32週という早期での分娩を推奨している。32週より早期での亜選択的な分娩は,重度の母体および/または胎児合併症の管理を目的としてケースバイケースで行われる。

自然早産

ある患者において,自然早産には明らかな直接的誘因(例,感染[羊膜感染および妊娠中の感染症を参照],常位胎盤早期剥離)がみられる場合もあれば,みられない場合もある。多くの危険因子がある:

妊娠・分娩歴

現在の妊娠に関連した因子

多胎妊娠は重要な危険因子である;双胎の59%,より数の多い多胎妊娠では98%超が早産である。このうち多くが極早産児である;双胎の10.7%,品胎の37%,より数の多い多胎妊娠の胎児の80%超が32週未満で出生する(1)。

社会経済的因子

  • 社会経済的に低い地位

  • 公的教育をあまり受けていない母親

これらの社会経済的因子が他の危険因子(例,栄養,医療へのアクセス)に及ぼす影響とは無関係に自然早産にどの程度のリスクを及ぼすのかは不明である。

未熟性による合併症

未熟性による合併症の発生率および重症度は,在胎期間および出生体重が少なくなるほど上昇する。一部の合併症(例,壊死性腸炎,未熟児網膜症,気管支肺異形成症,脳室内出血)は後期早産児ではまれである。

大半の合併症は未熟な器官系の機能不全に関係する。合併症が完全に消失する例もあれば器官機能障害が残存する例もある。

心臓

早産児における構造的先天性心疾患の全体の発生率は低い。最もよくみられる心合併症は以下の通りである:

早産児では出生後に動脈管が閉鎖しない可能性が高い。PDAの発生率は未熟性が高いほど上昇し,出生体重が1750g未満の乳児の約半数,および1000g未満の乳児の約80%に起こる。PDA患児の約3分の1から2分の1に,ある程度の心不全がみられる。在胎29週以下で出生した呼吸窮迫症候群のある早産児では,症候性PDAのリスクは65~88%である。在胎30週以上で出生した乳児の場合,退院までに98%で動脈管が自然閉鎖する。

中枢神経系

中枢神経系合併症には以下のものがある:

在胎34週未満で出生した新生児は吸啜反射と嚥下反射の協調が不十分であり,静注または経管栄養によって栄養を与える必要がある。

脳幹の呼吸中枢の未熟性により無呼吸発作を起こす(中枢性無呼吸)。また,無呼吸は下咽喉閉塞単独で生じることもある(閉塞性無呼吸)。両方が存在することがある(混合性無呼吸)。

脳室周囲の胚芽層(胎児の側脳室側壁の尾状核上を覆う,胚性細胞の密集塊)は出血しやすく,これが脳室まで広がることがある(脳室内出血)。脳室周囲白質部の梗塞(脳室周囲白質軟化症)も生じることがあるが,その理由は完全にはわかっていない。低血圧,不十分または不安定な脳血液灌流,血圧の急上昇(輸液またはコロイドを急速静注した場合など)が,脳梗塞または脳出血に寄与している可能性がある。脳室周囲白質部の損傷は,脳性麻痺および神経発達遅滞の主要な危険因子である。

早産児,特に敗血症壊死性腸炎,低酸素症,および脳室内および/または脳室周囲出血の既往がある早産児では,発達および認知機能に遅れが生じるリスクがある(小児の発達も参照)。このような乳児は聴覚,視覚,および神経発達に関する遅延を同定するため生後1年間は注意深いフォローアップを必要とする。発達のマイルストーン,筋緊張,言語能力,および成長体重身長,および頭囲)に注意を払わなければならない。視覚に遅延が認められた乳児は,小児眼科医に紹介すべきである。聴覚および神経発達に遅延(筋緊張増加および異常な防御反射など)を認める乳児は,理学療法,作業療法,および言語療法を提供する早期介入プログラムに紹介すべきである。重度の神経発達障害を有する乳児は,小児神経科医への紹介も必要となりうる。

眼合併症としては以下のものがある:

網膜の血管形成は満期近くまで完了しない。早産は正常な血管形成過程を妨げることから,血管の発達異常,およびときに失明を含む視野欠損が発生する。ROPの発生率は在胎期間に反比例する。疾患は通常,在胎32週から34週の間に発現する。

近視および斜視の発生率はROPとは関係なく上昇する。

消化管

消化管合併症としては以下のものがある:

  • 哺乳不良(feeding intolerance),誤嚥のリスク増大を伴う

  • 壊死性腸炎

早産児は胃が小さく,吸啜反射および嚥下反射は未熟であり,胃および腸管運動が不十分であるため,哺乳不良(feeding intolerance)がみられることが極めて多い。このような因子により経口栄養および経鼻胃管栄養への耐容能が共に妨げられ,誤嚥リスクが生じる。哺乳耐容(feeding tolerance)は,通常は経時的に増す。

壊死性腸炎は通常,血便,哺乳不良(feeding intolerance),ならびに腹部の膨隆および圧痛で発症する。壊死性腸炎は,早産児において最も頻度が高い外科的緊急事態である。新生児壊死性腸炎の合併症として,気腹症を伴う腸穿孔,腹腔内膿瘍形成,狭窄形成,短腸症候群,敗血症,および死亡などがある。

感染

感染性合併症としては以下のものがある:

敗血症または髄膜炎は,早産児でみられる可能性が約4倍高く,極低出生体重児の約25%に起こる。このような可能性の増大は,血管内カテーテルおよび気管内チューブの留置,皮膚の損傷部分,ならびに血清免疫グロブリンの著明な低値による( see page 新生児の免疫機能)。

腎臓

腎合併症としては以下のものがある:

腎機能が限られているため,尿の濃縮および希釈限度が低い。未熟な腎臓が,高タンパク質人工乳の利用や骨成長の結果として蓄積する固定酸を排泄できず,代謝性アシドーシスおよび発育不全が遅れて起こることがある。ナトリウムおよび重炭酸塩の尿中喪失がみられる。

肺合併症としては以下のものがある:

サーファクタント産生が肺胞虚脱および無気肺を防ぐには不十分であることが多く,結果,呼吸窮迫症候群が引き起こされる(肺硝子膜症)。生後1週の間に他の多くの因子が呼吸窮迫に寄与しうる。原因にかかわらず,超早産児および極早産児の多くに呼吸窮迫が持続してみられ,継続的な呼吸補助が必要である(Wilson-Mikity症候群,未熟児の慢性肺機能不全,あるいは未熟児の呼吸不全と呼ばれる)。数週間かけて補助からの離脱に成功する新生児もいるが,慢性肺疾患(気管支肺異形成症)を発症し,高流量鼻カニューレ,持続陽圧呼吸(CPAP)もしくはその他の非侵襲的換気補助,または機械的人工換気を用いた長期にわたる呼吸補助が必要な乳児もいる。呼吸補助は室内気または酸素投与による場合がある。酸素投与が必要な場合,目標酸素飽和度の90~95%を維持できる最低酸素濃度を用いるべきである( see table 新生児の酸素飽和度の目標値)。

慢性肺疾患の乳児には,RSウイルスに対するパリビズマブ予防投与が重要である。

代謝障害

代謝性合併症としては以下のものがある:

新生児低血糖および新生児高血糖症については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

早産児では正期産児と比べて高ビリルビン血症がみられる頻度が高く,小柄で病的な早産児では血清ビリルビン値が10mg/dL(170μmol/L)という低値でも核黄疸(高ビリルビン血症により引き起こされる脳損傷)が起こりうる。ビリルビンの高値は,一部には,血清から肝へのビリルビンの取込み,肝でのビリルビンジグルクロニドへの抱合,および胆道系への排泄が全て不十分であるなど,子宮外での生活のための肝の排泄機構が十分に発達していないことによる。腸管運動が弱いため,より多くのビリルビンジグルクロニドが腸内酵素であるβグルクロニダーゼによって腸管内腔で脱抱合され,非抱合型ビリルビン再吸収の増加につながる(ビリルビンの腸肝循環)。逆に,早期の哺乳により腸管運動が亢進しビリルビン再吸収が減少するため,生理的黄疸の頻度や重症度が大いに低下しうる。まれに,臍帯結紮を遅らせることにより(いくつかの便益をもたらし,一般に推奨されている),赤血球が移行してしまうことで赤血球崩壊とビリルビン産生が亢進し,高ビリルビン血症のリスクが高まる可能性がある。

骨減少症を伴う代謝性骨疾患はよくみられ,特に超早産児でその傾向がある。カルシウム,リン,およびビタミンDの摂取が不十分であることと,利尿薬およびコルチコステロイドの投与による増悪が原因である。母乳中のカルシウムおよびリンも不十分であるため,強化すべきである。カルシウムの腸管吸収を最適化し,尿中排泄をコントロールするためにビタミンDの補給が必要である。

先天性甲状腺機能低下症は,サイロキシン(T4)の低値と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇を特徴とし,早産児では正期産児と比べてはるかに頻度が高い。出生体重が1500g未満の乳児では,TSHの上昇が数週間遅れる場合があるため,発見のためにスクリーニングを繰り返すことが必要となる。一過性低サイロキシン血症は,T4の低下および正常なTSH値を特徴とし,超早産児において非常に頻度が高い;レボチロキシンによる治療は有益ではない(1)。

合併症に関する参考文献

  1. 1.Wassner AJ, Brown RS: Hypothyroidism in the newborn period.Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes 20(5):449–454, 2013.doi: 10.1097/01.med.0000433063.78799.c2

体温調節

体温調節関連の最も多い合併症は以下のものである:

早産児の体表面積は,体の体積と比して極めて大きい。したがって,中性温度環境(neutral thermal environment)より低い温度に曝露すると,急速に熱を失い,体温の維持が困難となる。中性温度環境とは,正常な体温(36.5~37.5℃,直腸温)を維持する代謝要求(したがってカロリー消費量も)が最小となる環境温度である。

未熟性の診断

  • 妊娠・分娩歴および出生後の身体的パラメータ

  • 胎児超音波検査

  • 合併症のスクリーニング検査

月経が規則的で,同時期に記録されている場合,在胎期間の決定において月経歴は比較的信頼できる。第1トリメスターにおける胎児の超音波検査による測定により,最も正確に在胎期間を推定できる。超音波検査による推定は妊娠の後半になると精度が低下するため,第1トリメスターで算出された予定日を第2および第3トリメスターでの超音波検査結果で修正する状況はまれである。分娩後には,新生児の身体所見によっても在胎期間を推定できるが,これはNew Ballardスコアにより確定できる。

特定された問題または疾患に対する適切な検査に加え,パルスオキシメトリー,血算,電解質,ビリルビン値,血液培養,血清カルシウム,アルカリホスファターゼおよびリン値(未熟児骨減少症スクリーニングのため),聴覚検査,頭部超音波検査(脳室内出血および脳室周囲白質軟化症スクリーニングのため),ならびに眼科医による未熟児網膜症スクリーニングなどがルーチンの評価として挙げられる。体重,身長,および頭囲を1週間に1度の間隔で該当する成長曲線にプロットすべきである。

在胎期間が長い新生児と同様に,ルーチンの新生児スクリーニング検査を生後24時間および48時間で行う。正期産児とは異なり,早産児,特に超早産児では偽陽性率が高い(1)。いくつかのアミノ酸の軽度高値とアシルカルニチンプロファイルの異常は一般的であり,17-ヒドロキシプロゲステロンの軽度高値とサイロキシン(T4)の低値(典型的には甲状腺刺激ホルモン値は正常)がしばしばみられる。超早産児および極早産児では,先天性甲状腺機能低下症が遅れて顕在化するリスクがあり,定期的なスクリーニングを行うべきである。

しばしば他の理由で施行されたX線から,骨減少症および/または想定外の骨折の所見が得られることがある。DXAおよび超音波検査による定量的スキャンにより骨減少症が発見される場合があるが,これらは広くは用いられていない。

診断に関する参考文献

  1. 1.Clark RH, Kelleher AS, Chace DH, Spitzer AR: Gestational age and age at sampling influence metabolic profiles in premature infants.Pediatrics 134(1):e37–e46, 2014.doi: 10.1542/peds.2014-0329

早産児,極早産児,および超早産児

合併症

早産児の合併症の発生率および重症度は,在胎期間および出生体重が少なくなるほど上昇する。一部の合併症(例,壊死性腸炎未熟児網膜症気管支肺異形成症脳室内出血)は,主に34週未満で出生した児に生じる。

症状と徴候

早産児は小さく,通常は2.5kg未満であり,薄くてつやのあるピンク色の皮膚で,皮下の静脈が容易に見える傾向がある。皮下脂肪,毛髪,外耳軟骨はほとんど存在しない。自発運動や筋緊張は少なく,四肢は正期産児に典型的な屈曲位に保持されない。

男児においては,陰嚢はほとんどしわをもたず,精巣は下降していない場合がある。女児においては,大陰唇はまだ小陰唇を覆っていない。

反射は在胎中の様々な時期に発達する。Moro反射は在胎28~32週までに始まり,37週までには十分に確立される。手掌反射は28週に始まり,32週までには十分に確立される。緊張性頸反射は35週に始まり,満期後1カ月で最も顕著である。

評価

  • 新生児集中治療室(NICU)でのモニタリング

  • 合併症のスクリーニング

NICUでのモニタリングおよびスクリーニング

一連の身体診察は児の経過のモニタリングおよび新たな問題(例,呼吸の問題,黄疸)の検出において重要である。体重に基づいた薬剤の用量および哺乳を最適化するため,頻繁な体重評価が必要である。

  • 発育および栄養:体重は注意深くモニタリングすべきであり,細胞外容積の減少がみられる生後最初の数日間には特に注意する;重度の高ナトリウム血症を伴う脱水が発生することがある。体重は可能であれば毎日評価すべきである;身長,および頭囲を毎週評価し,該当する成長曲線にプロットすべきである。

  • 電解質バランス:血清電解質,グルコース,カルシウム,およびリンの濃度は定期的に測定する必要があり,特に児が輸液および/または静脈栄養を受けているとき(例,極早産児および超早産児),および生後数日間にみられる尿量増加時はこれに該当する。

  • 呼吸状態:パルスオキシメトリーのほか,ときに経皮的または呼気終末PCO2を持続的にモニタリングする;動脈血ガスまたは毛細血管の血液ガス検査は必要に応じて行う。

  • 無呼吸および徐脈:呼吸循環モニタリングは通常,退院まで継続される。

  • 血液学的異常:血算,網状赤血球数,および白血球分画を最初に測定し,よくみられる異常を検出するために定期的に測定する。

  • 高ビリルビン血症:この疾患の検出およびモニタリングのため,経皮的および/または血清ビリルビン濃度を測定する。

  • 全身性感染症:新生児敗血症の早期発見を容易にするため,血算,C反応性タンパク(CRP)の測定,血液培養,およびときにプロカルシトニン値の測定がしばしば行われる。

  • 中枢神経系感染症:腰椎穿刺は典型的に,感染および/または痙攣の明らかな徴候,血液培養陽性,または抗菌薬に反応しない感染症がみられる乳児に限定される。

  • 脳室内出血(IVH):頭部超音波検査によるスクリーニングは,32週未満で出生した早産児およびそれより在胎週数が長く,経過が複雑な早産児(例,既知のIVH,心肺系および/または代謝が不安定)で生後7~10日に適応となる。

超早産児では脳室内出血は通常,臨床的に無症状であり,これらの乳児ではルーチンの頭部超音波検査が推奨される。IVHの発生率は在胎期間が長くなるに従い減少するため,32週以降に出生した早産児におけるルーチンのスクリーニングは,重大な合併症がない限り有用とは考えられていない。多くのIVHは生後1週目に発生するため,臨床的に出血が示唆されない限り,生後7~10日で検査を行うことで最大の成果が得られる。超早産児には脳室周囲白質軟化症のリスクがあり,これはしばらく経過してから発生するため(出血を伴うことも伴わないこともある),生後6週で頭部超音波検査を行うべきである。中等度から重度の出血がある乳児は,水頭症の検出およびモニタリングのために頭囲測定と定期的な頭部超音波検査によりフォローアップすべきであるが,軽微な出血のみの乳児に画像検査を繰り返すことは無益である。ただし,出血がみられる乳児には神経発達の綿密なフォローアップが推奨される。

以降のスクリーニング

未熟児網膜症のスクリーニングは,1500g以下または在胎期間30週以下で出生した乳児に,また,これより体重が重く成熟していた乳児でも臨床経過が不安定な場合に推奨される。乳児の在胎期間に基づいたスケジュールに従って初回の検査を行う(未熟児網膜症のスクリーニングの表を参照)。検査は通常,初回の検査所見に応じて1~3週間の間隔を空けて繰り返し,網膜が成熟するまで継続する。これらのフォローアップ検査の一部は,乳児の退院後に行われる。網膜デジタル画像の利用は,経験豊富な検者がルーチンに対応できない場所での診察およびフォローアップの代替法となる。

表&コラム

評価に関する参考文献

  1. 1.Narvey MR; Canadian Paediatric Society, Fetus and Newborn Committee: Assessment of cardiorespiratory stability using the infant car seat challenge before discharge in preterm infants (< 37 weeks' gestational age).Paediatr Child Health 21(3):155–162, 2016.doi: 10.1093/pch/21.3.155

早期産児の予後

予後は合併症の有無および重症度,または多胎出産であるかどうかによって様々であるが,通常は在胎期間および出生体重の増加に伴い,死亡率および合併症の可能性は大幅に低下する(早期産児における単胎と多胎の障害発生率の比較の図を参照)。

医学計算ツール(学習用)

早期産児における単胎と多胎の障害発生率の比較

未熟性が高いほど障害発生率は上昇する。在胎25週前に出生した乳児の場合,多胎の障害発生率は単胎より高く(A),多胎出生の中では,最初に出生した児より2番目以降に出生した児の障害率が高い(B)。(Adapted from Gnanendran L, Bajuk B, Oei J, et al: Neurodevelopmental outcomes of preterm singletons, twins and higher-order gestations: A population-based cohort study. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 100(2):F106–F114, 2015.doi: 10.1136/archdischild-2013-305677)

早産児の治療

  • 支持療法

具体的な疾患があれば,本マニュアルの別の箇所で論じているように治療する。早産児に対する全般的な支持療法は,NICUまたは新生児特別治療室で施すのが最善であり,サーボ制御の保育器を使用し,温度環境への細心の注意を必要とする。全患者との接触前後に,手洗い実行を徹底厳守する。在胎34.5週または35週まで絶えず,無呼吸,徐脈,および低酸素血症に関して新生児のモニタリングを行う。

親は,児の医学的状態が許す範囲で,可能な限り児との面会および交流を勧められるべきである。母子接触(skin-to-skin contact)ケア(カンガルーケア)は,乳児の健康にとって有益であり,母親との絆を強める。カンガルーケアは,乳児が呼吸器および輸液による管理を受けている場合も実行可能で安全である。

哺乳

哺乳は,在胎34週前後に吸啜,嚥下,および呼吸の統合が確立されるまでは経鼻胃管を介する必要があり,その後は母乳栄養が強く勧められる。大半の早産児は母乳(牛乳を原料とする人工乳にはない免疫因子および栄養因子を供給する)に耐容性を示す。しかしながら,母乳は極低出生体重児(すなわち,1500g未満)に十分なカルシウム,リン,およびタンパク質を供給しないため,母乳に母乳強化剤を混合する必要がある。代わりに,20~24kcal/oz(0.7~0.8kcal/mL,2.8~3.3ジュール/mL)の早産児用人工乳を使用することもできる。

最初の1~2日は,乳児の状態が原因で経口または経鼻胃管によって十分な水分およびカロリーが与えられない場合,脱水や低栄養を予防するためにタンパク質,ブドウ糖,および脂肪を含めた静脈栄養を与える。経鼻胃管を介した母乳または人工乳投与により,小さく病的な早産児,特に呼吸窮迫または無呼吸発作の反復がみられる早産児において,十分なカロリー摂取が維持できる。哺乳は消化管を刺激するため,少量(例,1~2mLを3~6時間毎)から開始する。耐容性を示せば,7~10日間かけて哺乳量および濃度を徐々に増やす。非常に小さいまたは重症(critically sick)の乳児には,完全な経腸栄養に耐えられるようになるまで,末梢静脈,または経皮的もしくは外科的に留置した中心静脈カテーテルを介した,完全非経腸の高カロリー輸液が長期間必要になると思われる。

退院

早産児は典型的には,医学的問題が十分にコントロールされ,以下の状態になるまで入院したままとする:

  • 特別な補助なしに十分な量のミルクを摂取している

  • 体重が着実に増加している

  • ベビーベッドで正常体温を維持できている

多くの早産児は,在胎期間で35~37週となり,かつ体重が2~2.5kgになれば,退院可能な状態にある。ただし,これには大きな個人差がある。早期に退院できる乳児もいれば,長期の入院が必要な乳児もいる。入院期間の長さは,長期予後に影響しない。

早産児は,退院前に仰臥位睡眠へ移行させるべきである。親には,予測不能な乳児突然死(SUID)のリスク増大と関連がある,毛布,キルト,枕,およびぬいぐるみなどのふわふわした物体をベビーベッドから取り除くよう指導するべきである。

早産児はチャイルドシート使用時に無呼吸,酸素飽和度の低下,および徐脈が起きるリスクがあるため,American Academy of Pediatricsは現在,退院前に全ての早産児に対し,退院後に使用するチャイルドシートに90~120分座らせた状態で酸素飽和度のモニタリングを行うことを推奨している。しかしながら,この試験については合意が得られた合否基準がなく,Canadian Paediatric Society(CPS)の最近の報告では,このチャイルドシート試験は再現性が不良で,死亡または神経発達の遅れのリスクを予想できなかったことが明らかにされた。そのため,CPSは退院前のルーチンの試験実施を推奨していない(1)。チャイルドシート試験に関する懸念を考慮すると,新たに退院する早産児を車に乗せて移動する際の常識的なアプローチは,予定日になり,かつ乳児がチャイルドシートに確実に耐えられるようになるまで,チャイルドシートに乗せて移動する間は運転していない大人が絶えず監視するというものである。乳児の皮膚色を観察する必要があるため,移動は日中に限定すべきである。長時間の移動の際には,乳児をチャイルドシートから下ろして姿勢を変えられるよう,45~60分毎に休憩を入れるべきである。

調査では多くのチャイルドシートが最適に取り付けられていないことが分かっており,資格をもつチャイルドシート点検者によるチャイルドシートの点検が勧められている。点検を受けられる場所はこちらで探すことができる。点検サービスを提供している病院もあるが,無資格の病院スタッフが提供する正式ではないアドバイスは,資格をもつチャイルドシートの専門家による点検と同等とみなすべきではない。

American Academy of Pediatricsは,チャイルドシートは車での移動のためのみに使用すべきで,乳児用椅子やベッドとして使用すべきではないと勧告している。

退院した超早産児および極早産児には,神経発達について綿密なフォローアップを行うほか,必要に応じて理学療法,作業療法,および言語療法を受けるための適切な介入プログラムに早期に紹介すべきである。

早産の予防

早期かつ適切な出生前ケアが全体として重要であるが,そのようなケアおよび他の介入が早産の発生率を低下させるという良好なエビデンスはない。

切迫早産を防止し,肺の成熟促進のために出生前にコルチコステロイドを投与する時間を得るための子宮収縮抑制薬の使用については,本マニュアルの別の箇所( see page 治療)で考察されている。

要点

  • 早産に対する多数の危険因子があるが,大半の症例に危険因子は存在しない。

  • 合併症として,低体温症,低血糖,呼吸窮迫症候群,無呼吸エピソード,脳室内出血,発達遅滞,敗血症,未熟児網膜症,高ビリルビン血症,壊死性腸炎,および哺乳不良などがある。

  • 在胎期間および出生体重の増加に伴い,死亡率および合併症の可能性は大幅に低下する。

  • 疾患を治療し体温および哺乳に関する支持療法を行う。

  • 一貫した出生前ケアを受けた妊婦では早産の発生率が低いが,出生前ケアの改善または他の介入が早産の発生率を低下させるというエビデンスはない。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Highway Traffic Safety Administration: Child car seat inspection station locator

後期早産児

後期早産児の合併症

臨床医は在胎34週未満で出生する早産児のより顕著で明白な問題に着目する傾向があるが,後期早産児にも多くの同じ疾患に対するリスクがある(早産児の合併症を参照)。後期早産児は,正期産児と比べて入院期間が長く,再入院率が高く,医学的疾患の診断率も高い。大半の合併症は未熟な器官系の機能障害に関連しており,より未熟に出生した乳児にみられるもの(ただし典型的にはそれほど重症度は高くないが)と同様である。しかし,未熟性による一部の合併症(例,壊死性腸炎未熟児網膜症気管支肺異形成症脳室内出血)は後期早産児ではまれである。ほとんどの場合,合併症は完全に消失する。

早産児でより多くみられる合併症としては以下のものがある:

  • 中枢神経系:無呼吸エピソード( see page 未熟児無呼吸発作

  • 消化管:吸啜および嚥下機序の成熟遅延による哺乳不良(入院延長および/または再入院の主な原因)

  • 高ビリルビン血症:肝ビリルビン代謝機序の未熟性および/またはビリルビンの腸管再吸収増加(例,哺乳困難により腸管運動が減少した場合)に起因する

  • 低血糖:貯蔵グリコーゲンの減少に起因する

  • 体温不安定:半数の新生児でいくらかの新生児低体温がみられる(体積に対する表面積比の上昇,脂肪組織の減少,および褐色脂肪による非効率な熱産生による)

後期早産児の評価

  • 合併症に対するルーチンのスクリーニング

後期早産児のケアは実際には様々であり,特にルーチンにNICU収容とする在胎期間や出生体重に関してはばらつきがある。在胎35週未満の乳児をルーチンにNICU収容にする病院もあれば,34週未満をカットオフとする病院もある。依然として,自由裁量のアプローチを採用している病院もある。児の入院場所にかかわらず,全ての後期早産児において以下を注意深くモニタリングする必要がある:

  • 体温:低体温症のリスクが高く,一部の後期早産児には保育器への収容が必要になる場合がある。児の体温をルーチンに評価すべきである。母親の病室にいる乳児の場合,室温は新生児をケアする場所の推奨温度と同程度の22~25℃(72~77°F)に維持すべきである。

  • 体重:乳児の摂取量に応じて,過度の体重減少,脱水,高ナトリウム血症がみられる場合がある。乳児の体重は毎日測定し,体重減少率を算出し,追跡すべきである。体重減少が10%を超えた場合は電解質をチェックすべきである。

  • 哺乳および摂取量:後期早産児は,母乳または哺乳瓶による哺育で哺乳不良になり,十分な哺乳ができなくなる場合がある。一般的に経鼻胃管による哺乳補助が必要であり,特に在胎34週の乳児でその傾向が強い。母乳が出始めるまでに1~4日かかることがあるため,ドナーミルクまたは人工乳が必要になる場合がある。児が摂取した乳の量および濡れたおむつの枚数または尿量(mL/kg/時で算出)を追跡すべきである。

  • グルコース:早期の低血糖(出生12時間以内)がよくみられるため,American Academy of Pediatricsが推奨しているように早期の授乳と生後24時間の血糖値スクリーニングを行うべきである(1)。さらに一部の専門家は,乳の摂取量不足による乳児の低血糖を検出するため,退院まで12時間毎のスクリーニングの継続を推奨している。

評価に関する参考文献

  1. 1.Committee on Fetus and Newborn, Adamkin DH: Postnatal glucose homeostasis in late-preterm and term infants.Pediatrics 127(3):575–579, 2011.doi: 10.1542/peds.2010-3851

後期早産児の予後

予後は合併症の有無および重症度により様々である。一般に,在胎期間および出生体重の増加に伴い,死亡率および合併症の可能性は大幅に低下する。

典型的には呼吸の問題は消失し,長期にわたる後遺症もみられない。無呼吸エピソードは典型的には在胎37~38週までに,ほぼ必ず43週までに消失する。

後期早産児では,2歳時および幼稚園年齢での評価時に神経発達症(小児の発達を参照)が(正期産児と比べて)多くみられる(1)。発達のマイルストーンのモニタリングによる早期同定および遅れがみられる乳児の介入プログラムへの紹介が役立つ可能性がある。

予後に関する参考文献

  1. 1.McGowan JE, Alderdice FA, Holmes VA, Johnston L: Early childhood development of late-preterm infants: A systematic review.Pediatrics 127:1111–1124, 2011.doi: 10.1542/peds.2010-2257

後期早産児の治療

  • 支持療法

  • 合併症に対する特異的な治療

同定された疾患を治療する。特定の病態のない乳児では,体温および哺乳に焦点を置いて支持療法を行う。

後期早産児は深部体温を正常範囲36.5~37.5℃(97.7~99.5°F)に維持するための代謝要求がストレスになる可能性があり,この温度範囲は腋窩温で概ね36.5~37.3℃(97.7~99.1°F)に相当する。深部体温を正常範囲に維持するための代謝要求(とひいてはカロリー消費量)が最小限に抑えられる環境温度を中性温度(thermoneutral temperature)と呼ぶ。正常な深部体温は,環境温度が低くても代謝活性の亢進という代償を払って維持することができるため,深部体温が正常であることは環境温度が十分に高いことの保証にはならない。深部体温が正常範囲を超えて低下したならば,環境温度は体温調節可能域(thermoregulatory range)と呼ばれる温度より低い状態にあり,したがって中性温域(thermoneutral range)より大幅に低いということになる。臨床では,室温を22.2~25.6℃(72~78°F)に設定する,毛布をかけて母子接触(skin-to-skin contact)ケアを行う,何枚もの毛布で包む,帽子をかぶせるという対策を併用すれば,ある程度成熟した大きな後期早産児にとっての中性温度環境(thermoneutral environment)を確保できる可能性がある。あまり成熟していない小さな後期早産児には,中性温度環境を確保するために一定期間の保育器使用が必要になるのが通常である。

母乳哺育が強く推奨される。母乳は牛乳を原料とする人工乳にはない免疫因子および栄養因子を供給し,早産児に良好に耐容される。十分に吸啜および/または嚥下ができない乳児の場合,経鼻胃管により少量から哺乳を開始し徐々に増量すべきである。

要点

  • 後期早産(在胎34週以上36週6日未満で出生)児は正期産児と同程度の大きさおよび外観を呈することがあるが,合併症リスクは高い。

  • 合併症として,低体温症,低血糖,哺乳不良,過度の体重減少,呼吸窮迫,高ビリルビン血症,および退院後の再入院の可能性上昇などがある。

  • 疾患を治療し体温および哺乳に関する支持療法を行う。

  • 神経発達の状況をモニタリングし,障害があれば対処するために適切な紹介を行う。

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