新生児および乳児における呼吸補助

執筆者:Arcangela Lattari Balest, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 7月
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最初の安定化手技として,軽度の触覚刺激,頭部のポジショニング,および口腔と鼻腔の吸引を行い,その後必要に応じて以下を実施する:

  • 酸素投与

  • 持続陽圧呼吸療法(CPAP)

  • 非侵襲的陽圧換気(NIPPV)

  • バッグマスク換気または機械的人工換気

これらいずれの手段でも酸素化できない新生児には,先天性の心肺異常を除外するための詳細な心臓の評価,および高頻度振動換気法,一酸化窒素,体外式膜型人工肺,またはそれらの併用による治療が必要になることがある。

周産期呼吸器疾患の概要および新生児の蘇生も参照のこと。)

新生児蘇生のアルゴリズム

* PPV:在胎期間35週以上の乳児には室内気(21%酸素)で,在胎期間35週未満の乳児には21~30%酸素で蘇生を開始する。SpO2目標値に達しない場合,吸入酸素濃度を漸増する。

†3:1の圧迫・換気比(1分間に圧迫90回と呼吸30回)圧迫と換気は同時ではなく連続的に行う。つまり,120回/分の速度で3回圧迫後,0.5秒の換気を1回行う。

CPAP = 持続陽圧呼吸;ECG = 心電図;ETT = 気管内チューブ;HR =心拍数;PPV = 陽圧換気;SpO2 = 酸素飽和度;UVC = 臍静脈カテーテル。

Based on Weiner GM: Textbook of Neonatal Resuscitation, ed.8.Itasca, American Academy of Pediatrics, 2021.

新生児および乳児における酸素投与

鼻カニューレまたはフェイスマスクを使用して酸素が投与されることがある。酸素濃度は,早期産児でPaO2 50~70mmHg,正期産児で50~80mmHgを達成するか,または早期産児で酸素飽和度90~94%,正期産児で92~96%を達成するように設定すべきである。胎児ヘモグロビンは酸素に対する親和性が高いために,乳児の低いPaO2でもほぼ完全にヘモグロビンを飽和させることができ,またPaO2をこれより高く維持した場合,未熟児網膜症および気管支肺異形成症のリスクが高まる。酸素は投与方法に関係なく,冷えと乾燥による分泌物の産生および気管支攣縮を防ぐために,加温(36~37℃)および加湿すべきである。

臍動脈カテーテルが,40%以上の吸入気酸素濃度(FIO2)を必要とする新生児において,動脈血ガス検査のために通常留置される。臍動脈カテーテルが留置できない場合は,アレンテスト(十分な側副循環があることを確認するために行う)の結果が正常であれば,血圧の連続的モニタリングおよび採血のために経皮的に橈骨動脈カテーテルを留置できる。

これらの処置に反応しない新生児は,心拍出量を改善するための輸液が必要なことがあり,また,CPAP換気またはバッグマスク換気(40~60呼吸/分)も考慮される。CPAP(人工呼吸器またはバブル式のいずれか)は,超早産児においても挿管を回避するのに役立つ可能性がある(これにより人工呼吸器関連肺損傷を最小限に抑えることができる)。しかしながら,バッグマスク換気では酸素化が進まないもしくは長時間かかる場合,気管挿管による機械的人工換気の適応となる;ただし非常に未熟な新生児(例,在胎28週未満または1000g未満)では,予防的なサーファクタント療法を行えるよう,ときに分娩直後から気管挿管による換気補助を開始する(1も参照)。細菌性敗血症が新生児呼吸窮迫の一般的な原因であるため,血液培養を行い,酸素所要量の多い新生児では培養結果が出る前に抗菌薬を投与することが通例である。

酸素に関する参考文献

  1. 1.Lista G, Fontana P, Castoldi F, et al: ELBW infants: To intubate or not to intubate in the delivery room?J Matern Fetal Neonatal Med 25 (supplement 4):63–65, 2012.doi: 10.3109/14767058.2012.715008

新生児および乳児に対するCPAP

CPAPにおいては,呼吸サイクルを通して一定の圧力(通常は5~7cmH2O)が維持されるが,吸気時の追加のプレッシャーサポートは行わない。CPAPにより肺胞は開いたままに維持され,無気肺が減少して無気肺領域による血液の短絡量も減少することで酸素化が改善する(その間乳児は自発呼吸を行う)。CPAPでは鼻カニューレまたはマスクと陽圧を発生させる種々の装置を用いるが,従来の人工呼吸器(換気回数はゼロに設定)に接続した気管内チューブを用いることも可能である。

バブルCPAP(1)は,高い技術を使わないCPAPの提供方法であり,呼出管を単に水に浸けて,水に浸かった管の深さに等しい呼気抵抗を与えるものである(呼気により水泡が出ることからこう呼ばれている)。

CPAPは,持続期間が限られる呼吸器疾患(例,びまん性無気肺,軽度の呼吸窮迫症候群,肺水腫)を有する乳児において,許容範囲のPaO2(50~70mmHg)の維持に40%以上のFIO2が必要になる場合に適応となる。こうした乳児では,CPAPを行うことで陽圧換気を行わずに済むことがある。

経鼻的CPAPの一般的な合併症は,胃拡張,誤嚥,気胸,および圧による鼻の損傷である。FIO2および/または圧の上昇が必要になる場合は,挿管を要する可能性がある徴候である(2)。

CPAPに関する参考文献

  1. 1.Gupta S, Donn SM: Continuous positive airway pressure: To bubble or not to bubble?Clin Perinatol 43(4):647–659, 2016.doi: 10.1016/j.clp.2016.07.003

  2. 2.Fedor KL: Noninvasive respiratory support in infants and children.Respir Care 62(6):699–717, 2017.doi: 10.4187/respcare.05244

新生児および乳児におけるNIPPV

NIPPV(非侵襲的陽圧換気[NIPPV]も参照)は,鼻カニューレまたは鼻マスクを用いて陽圧をかけ,換気を行う。同期性のもの(すなわち,乳児の吸気努力により作動)と非同期性のものがある。NIPPVでは,バックアップ呼吸の設定,および乳児の自発呼吸の増強が可能である。最大圧は望む値に設定できる。無呼吸がある患児に特に有用であり,抜管を促し無気肺の予防に役立つ。NIPPVは,抜管の不成功率および1週間以内の再挿管の必要性を経鼻的CPAPよりも効果的に低下させることがわかっている;しかしながら,慢性肺疾患の発生や死亡率への影響はない。

新生児および乳児に対する機械的人工換気

機械的人工換気には気管内チューブ(endotracheal tube:ETT)が必要である(気管挿管も参照)。

ETTの口径:

  • 1000g未満または在胎28週未満の乳児では2.5mm(最小)

  • 1000~2000gまたは在胎28~34週の乳児では3mm

  • 2000gを超えているか在胎34週を超えている乳児では3.5mm

挿管は,手技の間に酸素を乳児の気道に送気すると,より安全に行える。経口気管挿管が望ましい。

挿管の深さに関しては,チューブを以下のように挿入する:

  • 1kg未満の乳児では口唇に5.5~6.5cmの印がくるまで

  • 1kgでは7cm

  • 2kgでは8cm

  • 3kgでは9cm

胸部X線上では鎖骨と気管分岐部のほぼ中央に気管内チューブの先端が位置し,椎骨レベルT2とほぼ一致しなければならない。位置または開通性が疑わしい場合は,チューブを抜去し,新たにチューブを挿入するまでバッグマスク換気による補助を行うべきである。CO2検知器は,チューブが気道に入っていることを判断するのに役立つ(食道に入っているとCO2は検出されない)。容態が急激に悪化した場合(酸素化,動脈血ガス,血圧,または灌流の突然の変化)は,チューブ位置の変化,開通性の変化,またはその両方を疑うべきである。

換気モード:

  • 同期式間欠的強制換気(SIMV)

  • 補助/調節換気(A/C)換気

  • 高頻度振動換気

SIMVでは,人工呼吸器から一定の圧または容量の呼吸が一定時間内に設定回数だけ与えられる。これらの呼吸は児の自発呼吸と同期されるが,呼吸努力がない場合にも与えられる。児はその合間に人工呼吸器をトリガーすることなく自発呼吸を行うことができる。

A/Cでは,児の吸気のたびに人工呼吸器がトリガーされ,あらかじめ設定された容量または圧の呼吸が与えられる。児が全くまたは十分に呼吸を行っていない場合に備えて,バックアップ呼吸を設定する。

高頻度振動換気(設定した平均気道圧で400~900回/分の呼吸が与えられる)は乳児に使用することができ,超早産児(在胎28週未満)およびエアリーク,広範囲の無気肺,または肺水腫がある患児の一部でしばしば好まれる。

換気の至適モードまたは種類は乳児の反応によって異なる。従量式人工呼吸器は,設定された容量のガスを呼吸の度に送り出し十分な換気が確実に行えるため,肺コンプライアンスまたは抵抗が変動する(例,気管支肺異形成症において)大柄の乳児に有用であると考えられている。A/Cモードは比較的軽度の肺疾患の治療,および自発呼吸の度に気道内圧をわずかに上昇させるかまたは少量のガスを供給しつつ人工呼吸器への依存を減少させる場合に使用される。

最初の人工呼吸器の設定値は,呼吸器障害の重症度を判定し推定する。中等度の呼吸窮迫がある乳児における一般的な設定は以下の通りである:

  • FIO2 = 40%

  • 吸気時間(IT)= 0.4秒

  • 呼気時間 = 1.1秒(吸気時間および呼気時間はいずれも呼吸回数および必要に基づいて変動する;吸気時間が長いほど酸素化が改善し,呼気時間が長いほど換気が改善する)

  • SIMVまたはA/Cによる呼吸回数 = 40回/分(乳児の自発呼吸の回数に依存し,乳児が自発呼吸努力を行わない場合これよりも多い呼吸回数[例えば60回/分など]が必要になることもあれば,乳児の呼吸努力の質によってはこれよりも少ない呼吸回数で良いこともある;呼吸回数をこれよりも多くする場合は,吸気時間および/または呼気時間を必ず上記より短くする必要がある)

  • 最大吸気圧(PIP)= 極低出生体重児および低出生体重児では15~20cmH2O,ほぼ正期産および正期産の乳児では20~25cmH2O

  • 呼気終末陽圧(PEEP)= 5cmH2O。

これらの設定は,動脈または毛細血管の血液ガス分析に加え,患児の酸素化,胸壁の動き,呼吸音,呼吸努力に基づいて調節される。

  • PaCO2は,1回換気量の増加(PIPを上げるかPEEPを下げる)または換気回数の増加によって,分時換気量を増加させることにより低下する。

  • PaO2は,FIO2を上げるか,平均気道内圧を上げる(PIPおよび/またはPEEPを上げるか,ITを延長する)ことによって,上昇する。

補助換気(patient-triggered ventilation:PTV)は,人工呼吸器による陽圧換気を患者自身の自発呼吸の開始に同期させるためにしばしば用いられる。この換気法は人工呼吸器の使用期間を短縮し,また圧外傷の発生を減少させると考えられる。

人工呼吸器の圧または容量は,圧外傷および気管支肺異形成症を防ぐために,できるだけ低く設定すべきである;PaCO2の上昇は,pHが7.25以上である限りは許容される(許容範囲の高炭酸ガス血症[permissive hypercapnia])。同様に,40mmHgという低いPaO2も,血圧が正常で代謝性アシドーシスがみられない場合は許容される。

一部の患児で機械的人工換気に併用される補助的治療として以下のものがある:

  • 筋弛緩薬

  • 鎮静

  • 一酸化窒素

筋弛緩薬(例,ベクロニウム,臭化パンクロニウム)は気管挿管を容易にし,患児の動きおよび自発呼吸により至適な換気が妨げられている場合の患児の安定化に役立つ可能性がある。これらの薬剤は選択的に使用すべきであり,挿管および人工呼吸器管理の経験が豊富なスタッフが集中治療室でのみ使用すべきであるが,これは,挿管が失敗したり意図せず抜管されてしまった場合,筋弛緩された乳児は自発呼吸ができないためである;さらに,筋弛緩された乳児では人工呼吸器による補助を増やさなければならない場合があり,それにより圧外傷が増大する可能性がある。フェンタニルは胸壁の硬直または喉頭痙攣を引き起こす可能性があり,それにより挿管が困難になることがある。

5~20ppmの一酸化窒素吸入は,肺血管収縮が低酸素症の一因である場合(例,特発性/遷延性肺高血圧症肺炎先天性横隔膜ヘルニア)において,難治性の低酸素血症に対して使用されることがあり,これによってECMOを回避できる場合がある。

呼吸状態が改善すれば,人工呼吸器から離脱できる。児は,以下の設定を下げることで離脱しうる:

  • FIO2

  • 吸気圧

  • 換気回数

換気回数の減少につれ,乳児の呼吸仕事量が増加する。設定を下げても十分な酸素化と換気を維持できる乳児は,一般に抜管に耐えられる。人工呼吸器離脱の最終段階には,抜管,場合によって鼻腔(または上咽頭)CPAPまたはNIPPVによる補助,そして最終的に,加湿酸素または空気を供給するためのフードまたは鼻カニューレの使用を伴う。

極低出生体重児には,離脱過程でメチルキサンチン類(例,アミノフィリン,テオフィリン,カフェイン)を追加すると有益となりうる。メチルキサンチン類は中枢神経系に作用し,換気努力を増加させる呼吸刺激薬であり,離脱成功の妨げとなる無呼吸および徐脈のエピソードを減少させる可能性がある。カフェインは,忍容性が良好で投与しやすく,安全性が高く,かつモニタリングの必要性が低いため,望ましい薬剤である。

コルチコステロイドは,かつては離脱や慢性肺疾患の治療にルーチンに使用されていたが,リスク(例,成長障害,肥大型心筋症)が便益を上回るため,もはや早産児においては推奨されない。例外の可能性としては,末期に近い病状において最後の手段としての投与があるが,その場合は親にリスクを十分に説明すべきである。

機械的人工換気の合併症

新生児でより多くみられる機械的人工換気の合併症には以下が含まれる:

  • 気胸

  • 気管内チューブ閉塞による窒息

  • 呼吸を補助するため装置から送られる圧に起因する潰瘍形成,びらん,気道構造の狭小化

  • 気管支肺異形成症

新生児および乳児に対するECMO

ECMOは人工心肺の一種で,従来の人工呼吸器や振動換気法では十分に酸素化ができない,または換気ができない呼吸不全の乳児に対して用いられる。適格基準は医療機関毎に異なるが,一般的に,可逆的疾患(例,新生児遷延性肺高血圧症先天性横隔膜ヘルニア,重篤な肺炎)を有し,機械的人工換気の使用が7日未満の児とすべきである。原発性心疾患もECMOの適応となることがある。

全身的な抗凝固処置後(通常はヘパリンを用いる),血液は大口径カテーテルを通って内頸静脈から膜型人工肺に循環され,膜型人工肺は人工の肺としてCO2を除去し酸素を添加する役目を果たす。酸素化された血液は内頸静脈(静脈ECMO)または内頸動脈(静脈動脈ECMO)へ還流される。静脈動脈ECMOは換気補助と循環補助の両方が必要な場合(例,重篤な敗血症)に用いられる。望ましい酸素飽和度と血圧を得るために,流速を調節できる。

在胎34週未満,体重2kg未満,またはその両方の乳児では,全身ヘパリン化に伴って脳室内出血リスクが生じるため,ECMOは禁忌である。

ECMOの合併症には血栓塞栓症,空気塞栓,神経学的障害(例,脳卒中,痙攣)および血液の障害(例,溶血,好中球減少症,血小板減少症),胆汁うっ滞性黄疸などがある。

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