妊娠中の合併症の危険因子

執筆者:Raul Artal-Mittelmark, MD, Saint Louis University School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 9月
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妊娠中の合併症の危険因子としては以下のものがある:

高血圧

高血圧疾患は以下のように分類される(1):

  • 慢性高血圧:妊娠前に高血圧であった場合または妊娠20週以前に発生した場合

  • 妊娠高血圧症:妊娠20週以降に収縮期および/または拡張期血圧 ≥ 140/≥ 90mmHgが4時間以上の間隔を空けて2回新たに発現

  • 妊娠高血圧腎症:妊娠20週以降の新たな発症で,収縮期および/または拡張期血圧が ≥ 140/≥ 90mmHgで持続する(4時間以内に2回発生)か,または収縮期血圧および/または拡張期血圧が ≥ 160/≥ 110mmHgで少なくとも1回測定され,かつ新たに原因不明のタンパク尿(> 300mg/24時間または尿タンパク/クレアチニン比 ≥ 0.3または試験紙で2+)が認められる;タンパク尿が認められない場合には,新たに発症した高血圧とともに他の末端臓器損傷の徴候(例,血小板減少[血小板数<100,000/μL],肝機能障害,腎機能不全,肺水腫,新たに発症した頭痛[薬剤に反応せず,他の診断では説明できない],視覚症状)が新たに認められる。

  • 重症所見を伴う妊娠高血圧腎症:持続的な(4時間以内に2回)収縮期および/または拡張期血圧が高値(≥ 160/≥ 110mmHg)および/または他の末端臓器損傷の徴候が認められる妊娠高血圧腎症

  • HELLP症候群:重度の妊娠高血圧腎症の1形態で溶血,肝酵素高値,血小板数低値を伴う

  • 慢性高血圧と加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia):既存の高血圧を有する女性において,20週以降にタンパク尿が新たに発生するか悪化する,または末端臓器損傷の他の徴候がみられる

  • 子癇:新たに発症した強直間代発作,焦点発作,または多焦点性の発作で,他の原因では説明できないもの

慢性高血圧は以下のリスクを上昇させる:

高血圧の女性は,妊娠を試みる前に妊娠のリスクについてのカウンセリングを受けるべきである。妊娠した場合はできるだけ早期に出生前ケアを開始するべきである。妊娠中の慢性高血圧の管理としては,ベースライン腎機能の測定(例,血清クレアチニン,血中尿素窒素[BUN]),眼底検査,および狙いを定めた心血管評価(聴診,およびときに心電図,心エコー検査,または両方による)などが含まれる。各トリメスターで,24時間尿タンパク,血清尿酸,血清クレアチニン,およびヘマトクリットを測定する。胎児の発育をモニタリングするための超音波検査を妊娠28週目に行い,その後は4週間毎に実施する。発育遅滞は,母体・胎児医療の専門医が複数血管でドプラ検査を行って評価する。

妊娠高血圧腎症のリスクが高い場合,医師は,妊娠12~28週から開始し分娩まで毎日服用する低用量アスピリン(81mg,経口,1日1回)を処方すべきである(2)。

妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧症の既往がある女性は心血管イベントの生涯リスクが高く,分娩後は適切な心血管リスク評価およびフォローアップのための紹介を行うべきである。

高血圧に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetrics and Gynecology (ACOG): ACOG Practice Bulletin, Number 222: Gestational hypertension and preeclampsia.Obstet Gynecol 133 (1):1, 2019.doi: 10.1097/AOG.0000000000003018

  2. 2.ACOG Committee Opinion No. 743: Low-dose aspirin use during pregnancy.Obstet Gynecol 132 (1):e44–e52, 2018.doi: 10.1097/AOG.0000000000002708.

糖尿病

妊娠の6%以上で既存の糖尿病がみられ,妊娠の約8.5%で妊娠糖尿病が起こる。発生頻度は肥満の発生率が増加するにつれて上昇している。

既存のインスリン依存性糖尿病は以下のリスクを上昇させる:

巨大児の発生率は,一般集団の妊婦よりも既存の糖尿病がある妊婦の方が約50%高い。周産期死亡率も高い。

既存の糖尿病を有する女性は,産科的または医学的適応のために早期の分娩が必要になる可能性が高い。妊娠中の運動(適切な食事の変更を伴う)は,このような女性において帝王切開および鉗子・吸引分娩の必要性を低下させる(1, 2)。

胎児形成異常を予防するため,受胎前および妊娠早期の厳密な血糖コントロールが不可欠である。

インスリン必要量は妊娠中に通常増加する。

妊娠糖尿病は以下のリスクを上昇させる:

妊娠糖尿病は,妊娠24~28週でルーチンにスクリーニングされるが,妊婦に危険因子がある場合には第1トリメスターで行われる。危険因子としては以下のものがある:

  • 妊娠糖尿病の既往

  • 以前の妊娠における巨大児

  • 原因不明の胎児死亡

  • 妊娠前のBMI(body mass index)> 30kg/m2

  • 母親が40歳以上

  • 糖尿病の家族歴

  • 糖尿病の発生率の高さと関連している一部の人種または民族(例,ヒスパニック系アメリカ人,アフリカ系アメリカ人,アメリカンインディアン,アジア人,または太平洋諸島系の祖先をもつ人々)

妊娠糖尿病のスクリーニングおよび診断の確定は,1回または2段階の検査で行うことができる:

  • 1回検査:空腹時,75gブドウ糖,2時間経口ブドウ糖負荷試験(GTT)

  • 2段階検査:非空腹時,50gブドウ糖,1時間GTT;異常(≥ 135mg/dL/7.5mmol/L)の場合,次に空腹時,100g,3時間GTT

診断は経口ブドウ糖負荷試験の結果に基づいて行うのが最善である(OGTT—3時間経口ブドウ糖負荷試験を用いた妊娠糖尿病診断のための血糖閾値を参照)。OGTTは1回または2段階で行われる。2013年の米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のコンセンサス会議の推奨に基づくと,スクリーニングは50gブドウ糖負荷試験(GLT)1時間値の測定から開始する;結果が陽性(血漿血糖値 > 130~140mg/dL[ 7.2~7.8mmol/L])であれば,100gOGTTの3時間値を測定する。

表&コラム
表&コラム

至適な妊娠糖尿病の治療(食習慣の改善,運動,および血糖値の綿密なモニタリングと必要時のインスリン)は母体,胎児,および新生児の不良転帰のリスクを軽減する。妊娠糖尿病の女性は心血管イベントの生涯リスクが高く,分娩後は適切な心血管リスク評価およびフォローアップのために紹介すべきである。

表&コラム
表&コラム

妊娠糖尿病の女性は,妊娠前に未診断の糖尿病であった可能性がある。そのため妊娠糖尿病の女性には,分娩の6~12週間後に,妊娠していない患者に用いるものと同じ検査と基準を用いて糖尿病のスクリーニングを行うべきである。

糖尿病に関する参考文献

  1. 1.Artal R: Exercise: The alternative therapeutic intervention for gestational diabetes.Clinical Obstetrics and Gynecology 46 (2):479–487, 2003.

  2. 2.Artal R: The role of exercise in reducing the risks of gestational diabetes mellitus in obese women.Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 29 (1):123–4132, 2015.

性感染症(STI)

性感染症および妊娠中の感染症も参照のこと。)

治療を可能にし,子宮内または周産期の性感染症による胎児または新生児への有害作用を予防するため,妊娠中に性感染症のスクリーニングを行うべきである。

初回の妊婦健診で行うルーチンの出生前ケアとして,HIV感染症,B型肝炎,梅毒,ならびに25歳以上の場合はクラミジア感染症および淋菌感染症のスクリーニング検査が含まれている。梅毒検査は,妊娠中に繰り返し行い,リスクが持続していれば分娩時に行う(1)。これらの感染症のいずれかに罹患している妊婦は,抗菌薬で治療する。

子宮内における胎児の梅毒は,胎児死亡,先天性形成異常,および重度の障害を引き起こしうる。

無治療の場合,妊産婦から児へのHIV感染のリスクは,分娩前で約30%,分娩時で約25%である。妊婦の妊娠前および妊娠中,および生後6~12時間以内の新生児における抗レトロウイルス療法により胎児へのHIV伝播のリスクが3分の2低下する;2~3種類の抗ウイルス薬の併用によっておそらくリスクはさらに低くなる(2%未満)。このような薬物は,胎児および妊婦に毒性作用を及ぼす可能性はあるものの,推奨されている。

妊娠中の肝炎,細菌性腟症,淋菌感染症,および性器クラミジア感染症は,切迫早産および前期破水のリスクを増大させる。

細菌性腟症,淋菌感染症,またはクラミジア感染症の治療は,破水から分娩までの間隔を延長し,胎児炎症を抑制することにより胎児の転帰を改善しうる。

STIに関する参考文献

  1. 1.Workowski KA. , Laura H. Bachmann LH, Chan PA: Sexually transmitted infections treatment guidelines, 2021.MMWR Recomm Rep 70 (4):1–187, 2021.doi: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.rr7004a1external icon

腎盂腎炎

妊娠中の尿路感染症も参照のこと。)

妊娠中は,細菌尿が繰り返し認められる頻度が比較的高く,腎盂腎炎の発生率がより高い。細菌尿がみられる場合,妊婦の20~35%に尿路感染症(UTI)が発生し,腎盂腎炎の可能性がある。

腎盂腎炎は以下のリスクを上昇させる:

腎盂腎炎は,妊娠中における非産科的な入院原因として最も多い。

腎盂腎炎の妊婦は評価および治療のため入院させ,主に尿培養と感受性試験,抗菌薬の静注(例,第3世代セファロスポリン系薬剤を単独で,またはアミノグリコシド系薬剤と併用),解熱薬投与,および水分補給などを行う。解熱して24~48時間後から原因微生物に特異的な経口抗菌薬投与を開始し,抗菌薬療法の全過程を完了(通常7~10日間)するまで継続する。

残る妊娠期間中,定期的に尿培養を行いながら予防的抗菌薬(例,ニトロフラントイン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール)投与を継続する。

緊急手術に関する問題

妊娠中に外科手術を要する疾患も参照のこと。)

非産科的な腹腔内緊急手術の理由として最も頻度が高いものには,虫垂炎および胆道疾患などがある。有病率は,過体重,喫煙,高齢,経産婦,および/または多胎妊娠の女性で最も高い(1)。

緊急手術および大手術(特に腹腔内)により以下のリスクが増大する:

しかしながら,適切な支持療法および麻酔(血圧と酸素飽和度を正常レベルに維持しながら)が行われれば,妊婦および胎児は通常十分手術に耐えられるため,医師は手術に対し消極的になるべきではない;腹部の緊急事態の治療の遅れの方がはるかに危険である。

手術後,抗菌薬および子宮収縮抑制薬を12~24時間投与する。

妊娠中に非緊急手術を行う必要がある場合は,第2トリメスターが最も安全である。

緊急手術の問題に関する参考文献

  1. 1.Rasmussen A, Christiansen C, Uldbjerg N, et al: Obstetric and non-obstetric surgery during pregnancy: A 20-year Danish population-based prevalence study.BMJ Open (2019) 9 (5), 2019.doi: 10.1136/bmjopen-2018-028136

性器の異常

子宮および頸部の構造的異常(例,中隔子宮,双角子宮)により,以下の可能性が高くなる:

子宮筋腫はまれではあるが胎盤異常(例,前置胎盤),切迫早産,および繰り返す自然流産の原因となりうる。子宮筋腫は妊娠中に急速に成長または変性しうる;変性はしばしば重度の疼痛および腹膜刺激徴候を引き起こす。

子宮頸管無力症(不全症)により早産の可能性が高くなる。子宮頸管無力症のリスクは,以前の手技(例,治療的流産,器具による経腟分娩)の際に子宮頸管に裂傷または損傷があった女性でより高い。子宮頸管無力症は外科的介入(頸管縫縮術),腟内プロゲステロン,またはときに腟内ペッサリーにより治療可能である。

妊娠前に子宮筋腫核出術を受けて子宮腔が開放されていた場合は,以降の経腟分娩では子宮破裂のリスクがあるため,帝王切開が必要となる。

不良な産科転帰につながる子宮の異常では,しばしば外科的修正が必要となるが,それは分娩後に行われる。

母体の年齢

青年期の妊娠は,全妊娠の13%を占めるが,妊娠高血圧腎症切迫早産,および貧血の発生率が高くなり,しばしば胎児発育不全につながる。青年が出生前ケアを怠り,頻繁に喫煙し,性感染症を有する率が高い傾向にあることが少なくとも一因にある。

35歳以上の妊婦では,妊娠高血圧腎症の発生率が増大するが,妊娠糖尿病分娩遷延常位胎盤早期剥離死産,および前置胎盤も同様である。こうした妊婦はまた,既存疾患(例,慢性高血圧糖尿病)をもっている可能性も高い。胎児の染色体異常のリスクは母体年齢の上昇に従って増加するため,遺伝学的検査および胎児形成異常についての超音波による詳細なスクリーニングを勧めるべきである。

最もよくみられる染色体異常は,常染色体のトリソミーである。米国National Birth Defects Prevention Study(NBDPS)では,40歳以上の女性から出生した児では心臓の異常,食道閉鎖症,尿道下裂,および頭蓋縫合早期癒合症のリスクが高いことが明らかにされた(1)。

母体の年齢に関する参考文献

  1. 1.Gill SK, Broussard C, Devine O, et al: Association between maternal age and birth defects of unknown etiology: United States, 1997-2007.Birth Defects Res A Clin Mol Teratol 94 (12):1010–1018, 2012.doi: 10.1002/bdra.23049 Epub 2012 Jul 23.

母体の体重

妊娠前のBMI(body mass index)が18.5kg/m2未満であった妊婦は低体重とみなされ,新生児の低出生体重(2.5kg未満)の素因となる。こうした妊婦には,妊娠中に最低12.5kg体重を増やすよう推奨する。

妊娠前のBMIが25~29.9kg/m2(過体重)または30kg/m2以上(肥満)であった妊婦は,母体の高血圧および糖尿病過期妊娠流産巨大児,先天性形成異常,胎児発育不全妊娠高血圧腎症,および帝王切開のリスクがある。理想的には減量は妊娠前に始めるべきであり,まず生活習慣の改善を試みること(例,身体活動を増やす,食習慣の変更)から始める。過体重または肥満の妊婦には妊娠中の体重増加を制限するよう推奨し,これは生活習慣の改善によるのが理想的である。Institute of Medicine(IOM)は以下のガイドラインを用いている:

  • 過体重:体重増加を6.8~11.3kg(15~25lb)に制限

  • 肥満:体重増加を5~9kg(11~20lb)未満に制限

しかし,全ての専門家がIOMの推奨に同意しているわけではない。多くの専門家が,体重増加のさらなる制限と生活習慣の改善(例,身体活動を増やす,食習慣の変更)を含む個別化したアプローチを推奨しており,これは特に肥満の女性において当てはまる(1)。大部分の女性には妊娠中,少なくとも週に3回,合計で毎週150分の運動を行うよう推奨すべきである(2)。

過体重および肥満の妊婦では,妊娠中の生活習慣の改善により,妊娠糖尿病および妊娠高血圧腎症のリスクが減少する。

適正な体重増加,食事,および運動について初回の来院時および妊娠中を通じて定期的に話し合うことが重要である。2016 ACOG (American College of Obstetricians and Gynecologists) obesity toolkitは過体重および肥満の管理に役立つ情報源である。

医学計算ツール(学習用)

母体の体重に関する参考文献

  1. 1.Artal R, Lockwood CJ, Brown HL: Weight gain recommendations in pregnancy and the obesity epidemic. Obstet Gynecol115 (1):152–155, 2010.doi: 10.1097/AOG.0b013e3181c51908

  2. 2.Mottola MF, Davenport MH, Ruchat SM, et al: 2019 Canadian guideline for physical activity throughout pregnancy.Br J Sports Med 52 (21):1339–1346, 2018.doi: 10.1136/bjsports-2018-100056

母体の身長

低身長(約 < 152cm)の女性は骨盤が小さい可能性が高く,胎児骨盤不均衡または肩甲難産を伴う難産につながりうる。低身長の女性ではまた,切迫早産および胎児発育不全も起こる可能性が高い。

催奇形因子への曝露

一般的な催奇形因子(胎児の奇形を引き起こす因子)として,感染症,薬物,および物理的因子がある。器官形成期である受胎後2~8週の間(最終月経後4~10週目)に曝露があると,最も形成異常が生じる可能性が高い。また他の不良な妊娠転帰も生じる可能性がより高い。催奇形因子に曝露した妊婦には,リスクの増大についてカウンセリングを受けさせ,奇形を発見するための詳細な超音波検査に紹介する。

催奇形因子となりうる一般的な感染症には以下のものがある:

一般的に使用される薬物で,催奇形因子となりうるものには,以下のものがある:

第1トリメスター中の高体温または39℃を超える温度への曝露(例,サウナ)は二分脊椎と関連付けられている。

水銀への曝露

魚介類に含まれる水銀は胎児に有毒である可能性がある。FDA(Advice about Eating Fish For Those Who Might Become or Are Pregnant or Breastfeeding and Children Ages 1–11 Yearsを参照)は以下を推奨している:

  • メキシコ湾産のタイルフィッシュ(アマダイの仲間)のほか,サメ,メカジキ,メバチマグロ,マカジキ,オレンジラフィー,キングマカレル(サワラの一種)を避ける

  • ビンナガマグロの摂取量は4オンス(113g)(1回の食事の平均的な量)/週に制限する

  • 地域の湖,河川,沿岸部で獲れた魚を食べる前にその地域の担当行政機関(米国)に魚の安全性について確認し,水銀量が低いかどうか不明な場合は摂取量を4オンス(113.4g)/週に制限し,その週は他の魚介類を避ける

メキシコ湾産のタイルフィッシュ(アマダイの仲間)は,全ての魚の中で水銀濃度が最も高い(米国食品医薬品局[Food and Drug Administration:FDA]の検査による);大西洋産のアマダイは安全に摂取することができる。

専門家は,妊娠中または授乳中の女性は水銀含有量の低い様々な種類の魚介類を週に8~12オンス(226.8~340.2g)(2~3回の食事の平均的な量)摂取することを推奨している。このような魚介類には,カレイ科の一部の魚,エビ,ライトツナ缶詰,サケ科の魚,ポロック,ティラピア,タラ,ナマズなどがある。魚には胎児の成長と発達に重要な栄養素が含まれている。

死産の既往

死産とは,Centers for Disease Control and Prevention(CDC:米国疾病予防管理センター[1])では妊娠前20週以降または分娩中における胎児の死亡と定義され,世界保健機関(World Health Organization:WHO)では28週以降における胎児の死亡と定義される(2)。妊娠後期の胎児死亡は,母体,胎盤,または胎児に解剖学的または遺伝学的な原因がある可能性がある(死産の一般的な原因の表を参照)。死産または妊娠後期の流産(すなわち,16~20週)の既往があると,その後の妊娠における胎児死亡のリスクは増大する。リスクの程度は以前の死産の原因により異なる。分娩前検査(例,ノンストレステスト,バイオフィジカルプロファイル)を用いた胎児のサーベイランスが推奨される。

母体疾患(例,慢性高血圧,糖尿病,感染症)の治療により,現在の妊娠における死産のリスクが低下する可能性がある。

死産の既往に関する参考文献

  1. 1.CDC: What is stillbirth?Accessed 8/16/22.

  2. 2.World Health Organization: Stillbirth.Accessed 8/16/22

早産の既往

早産とは37週未満の分娩である。切迫早産による早産の既往により,将来早産となるリスクが上昇する;以前の早産で新生児の体重が1.5kg未満であった場合,次の妊娠における早産のリスクは50%である。

切迫早産による早産の既往がある女性は20週以降,2週間の間隔で注意深くモニタリングすべきである。モニタリングには以下を含める:

  • 14~16週での頸管長の測定を含む超音波検査による評価

  • 細菌性腟症の検査

  • 胎児性フィブロネクチン測定

切迫早産または頸管の短縮( 25mm)による早産の既往がある女性に対しては17α-ヒドロキシプロゲステロンの筋肉内投与を行うべきである。

遺伝性疾患または先天性疾患を有する児の出産歴

胎児に染色体異常が伴うリスクは,(認識されたまたは見逃された)染色体異常の胎児や新生児をもった経験のある多くのカップルで高くなる。多くの遺伝性疾患において,疾患が繰り返されるリスクは不明である。大半の先天性形成異常が多因子性である;以降の妊娠で胎児に先天性形成異常を伴うリスクは1%以下である。

カップルに遺伝性疾患や染色体異常の新生児をもった経験がある場合,遺伝学的スクリーニングが推奨される。カップルに先天性形成異常の新生児をもった経験がある場合,遺伝学的スクリーニング,高分解能超音波検査,および母体・胎児専門医による評価が推奨される。

羊水過多および羊水過少

羊水過多(羊水の過剰)により母体の重度の息切れおよび切迫早産が起こりうる。危険因子として以下のものがある:

  • コントロール不良の母体糖尿病

  • 多胎妊娠

  • 同種免疫

  • 胎児形成異常(例,食道閉鎖,無脳症,二分脊椎)

羊水過少(羊水の不足)には,しばしば胎児尿路の先天性形成異常および重度の胎児発育不全(3パーセンタイル未満)が伴う。さらに,肺低形成や胎児の表面圧迫による異常を伴うPotter症候群が通常は第2トリメスターに発生し,胎児死亡を引き起こしうる。

羊水過多や羊水過少は,子宮の大きさが妊娠期間に比して大きいあるいは小さい場合に疑われるが,診察時の超音波検査によって偶然発見されることもあり,これにより診断に至る。

症状のある患者(息切れおよび/または腹部不快感)では,羊水穿刺による過剰な羊水の除去(羊水減量)を考慮すべきである。まれではあるが,母体の症状が重度の場合,コルチコステロイドおよび早産を考慮する必要がある。羊水減量により母体の症状は軽減するが,羊水は急速に再貯留し,処置を繰り返し行う必要が生じることがある。軽度から中等度の羊水過多の患者では,39週(または,症状によってはより早い段階が適応となる)での選択的分娩が勧められることがある;この決定を下す際には,医師は頸管開大の程度ならびに前期破水および臍帯脱出のリスクも考慮すべきである。

多胎妊娠

多胎妊娠により,以下のリスクが増大する:

多胎妊娠は妊娠16~20週におけるルーチンの超音波検査中に発見される。多胎妊娠の発生率が増加しており,生殖補助医療の利用がこの増加に大きく寄与している(1)。

多胎妊娠に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Practice Bulletin No. 231: Multifetal gestations: Twin, triplet, and higher-order multifetal pregnancies.Obstet Gynecol 137 (6):e145–e162, 2021.doi: 10.1097/AOG.0000000000004397       

分娩損傷の既往

大部分の脳性麻痺および神経発達症は,分娩損傷とは関連のない要因により起こる。腕神経叢損傷などの損傷は鉗子や吸引器による分娩などの手技により生じる場合もあるが,分娩中の子宮内の圧力または妊娠の最後の数週間の胎位異常により生じることが多い。

肩甲難産の既往は将来の難産の危険因子であり,損傷の素因となったかもしれない修正可能な危険因子(例,巨大児,鉗子・吸引分娩)がないか,以前の分娩記録をレビューすべきである。

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