硬化性苔癬は,原因不明であるが,おそらく自己免疫によるものと考えられている炎症性皮膚疾患で,通常は肛門性器部を侵す。
最も早期に認められる徴候は,皮膚の脆弱化と皮下出血であり,ときに水疱形成もみられる。典型的には,病変により軽度から重度のそう痒が引き起こされる。硬化性苔癬が小児に発生すると,その外観から,性的虐待と混同されることがある。時間とともに患部の組織は萎縮して菲薄化し,色素減少がみられ(炎症後色素沈着による色素斑がみられることもある),亀裂が生じ,鱗屑を伴うようになる。過角化型と線維化型もある。
罹病期間の長い重症例では,瘢痕が形成され,肛門性器部の正常構造の歪みや吸収が生じる。女性では,この歪みから小陰唇と陰核の完全な破壊に至ることさえある。男性では,包茎または環状溝への包皮の癒合が生じることがある。
硬化性苔癬は自己炎症性症疾患であり,萎縮,色素減少(色素沈着の斑点をみることもある)を引き起こし,重症例では,肛門性器部の皮膚の線維化と正常な解剖学的構造の変形が生じる。
Images courtesy of Joe Miller (top) and Brian Hill (bottom) via the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.
この写真には,外陰および肛門周囲部に生じた萎縮および色素減少が写っている。
Image provided by Steven E. Laurie Tolman, MD.
この写真には,肛門周囲部に生じた瘢痕形成,萎縮,および解剖の歪みが写っている。
Image provided by Steven E. Laurie Tolman, MD.
この写真には,小陰唇に生じた磁器様の白色斑と複数の紫斑,さらに早期の陰唇癒合が写っている。
Image provided by Steven E. Laurie Tolman, MD.
この画像には,硬化性苔癬の色素減少を来した磁器様の白色斑が写っている。
Image courtesy of Karen McKoy, MD.
硬化性苔癬の診断
臨床的評価
ときに生検
硬化性苔癬は通常は外観から診断できるが(特に進行例),従来の強度の低い治療法(例,ヒドロコルチゾン,抗真菌薬の外用)で消退しない肛門性器部の皮膚病変には生検を行うべきである。硬化性苔癬は有棘細胞癌の頻度増加と関連するため,生検では肥厚または潰瘍化した全ての部位から検体を採取することが特に重要である。
硬化性苔癬の治療
外用コルチコステロイド
硬化性苔癬の治療は,強力なコルチコステロイド(この部位では極めて慎重に使用する必要がある薬剤)の外用で構成される。この疾患は一般に難治性であるため,長期の治療およびフォローアップが必要となる。
有棘細胞癌および性機能障害に対するモニタリングと心理的支援の提供が適応となる。
要点
硬化性苔癬は,早期には肛門性器部の皮下出血,そう痒,または水疱形成を,晩期には萎縮および瘢痕形成を引き起こす可能性がある。
続発性の有棘細胞癌のリスクが高まる。
肛門性器部の持続性の皮膚病変では,本症の診断を考慮すること。
高力価の外用コルチコステロイドの長期使用,綿密なモニタリング,ならびに性的および心理的支援により治療する。