感受性試験は,標準化した濃度の微生物を一連の濃度の抗菌薬に曝露することにより,抗菌薬に対する微生物の脆弱性を判定する。感受性試験は細菌,真菌,およびウイルスに対して行うことができる。一部の微生物では,1つの薬剤で得られた結果から類似の薬剤での結果を予測することができる。そのため,有用と考えられる薬剤を全て試験するわけではない。
感受性試験はin vitroで行うものであり,治療の成否に影響する多くのin vivo因子(例,薬力学と薬物動態,部位毎の薬物濃度,宿主の免疫状態,部位毎の宿主防御能)は考慮されない。したがって,感受性試験の結果は必ずしも治療成績を予測しない。
感受性試験は定性的方法,半定量的方法,または核酸検出法を用いて施行される。検査では複数の抗菌薬を併用した場合の効果も判定できる(相乗作用の試験)。
定性的方法
定性的方法は半定量的方法より精度が低い。結果は通常以下のうちの1つとして報告される:
感性(S)
中間(I)
耐性(R)
耐性の基準が確立されていない一部の菌株については,感性と非感性のみの分類で報告してもよい。S,I,Rに対応する規定の薬物濃度は,複数の因子,特に薬物動態,薬力学,臨床的,および微生物学的データに基づいて決定される。
一般的に用いられるディスク拡散法(Kirby-Bauer法としても知られる)は,急速に発育する微生物に適している。この方法では,被験微生物を接種した寒天平板上に抗菌薬を浸透させたディスクを配置する。培養後(典型的には16~18時間),各ディスクの周囲にできた阻止円の直径を測定する。微生物と抗菌薬の組合せごとに,S,I,Rに対応する直径がそれぞれ設定されている。
半定量的方法
半定量的方法では,in vitroで特定の微生物の発育を阻止する最小薬物濃度を判定する。この最小発育阻止濃度(MIC)が数値で報告されるともに,その値からS(感性),I(中間),R(耐性),ときに非感性という4つの判定群のいずれかに変換されることもある。MICの測定は主に,抗酸菌と嫌気性菌を含む細菌のほか,ときに真菌(特にCandida属)の分離株に対して用いられる。
最小殺菌濃度(MBC)も測定できるが,技術的に難しく,解釈の基準が定まっていない。MBC試験の値は薬剤が静菌的か殺菌的かを示す。
抗菌薬は寒天または液体培地で希釈することができ,その後に微生物を接種する。液体培地による希釈がゴールドスタンダードであるが,1本のチューブで1つの薬物濃度しか試験できないため,多くの労力がかかる。より効率的な方法では,抗菌薬を浸透させて長さに応じた薬物の濃度勾配を生じさせたポリエステルフィルム片を使用する。このフィルム片を接種微生物が含まれる寒天平板に置き,フィルム片上で発育阻止が始まった位置によってMICを判定することから,1枚の平板で複数の抗菌薬を試験することができる。
MICにより,微生物の薬剤感受性と達成可能な遊離薬物(すなわち,タンパク質と結合していない薬物)の組織内濃度とを関連づけることができる。遊離薬物の組織内濃度がMICより高ければ,治療成功の可能性が高い。通常,MIC試験に由来するS,I,Rの表示は,達成可能な遊離薬物の血清,血漿または尿中濃度と相関する。
核酸検出法
この種の検査では,微生物の同定に用いられる手法と類似するが,既知の耐性遺伝子または変異を検出するように改変された核酸検出法が用いられる。例として,黄色ブドウ球菌(S. aureus)のオキサシリン耐性遺伝子であるmecAを挙げると,この遺伝子を保有している微生物は,感受性試験での見かけの結果にかかわらず,ほとんどのβ-ラクタム系薬剤に耐性を示すと考えられる。ただし,そのような遺伝子はいくつか知られているものの,それらの存在が一様にin vivoでの耐性獲得につながるわけではない。また,新たな変異や他の耐性遺伝子が存在する可能性もあるため,既知の変異や耐性遺伝子がないだけで薬剤感受性が保証されるわけではない。これらの理由から,抗微生物薬に対する細菌および真菌の感受性を評価する上では,依然として表現型に基づくルーチンの感受性試験法が標準のアプローチとなっている。
ただし,以下の目的に対しては核酸検査が望ましい:
リスク群における多剤耐性結核の迅速な診断
陽性の血液培養検体から直接得られた微生物における耐性の迅速な検出