血球貪食性リンパ組織球症 (HLH)

執筆者:Jeffrey M. Lipton, MD, PhD, Zucker School of Medicine at Hofstra/Northwell;
Carolyn Fein Levy, MD, Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/Northwell
レビュー/改訂 2021年 12月
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血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は,乳幼児にみられるまれな疾患で,免疫機能障害を引き起こす。基礎疾患として免疫疾患が認められる患者が多いが,基礎疾患が不明な患者もいる。症状として,リンパ節腫脹,肝脾腫,発熱,および神経学的異常がみられる場合がある。診断は,特異的な臨床的基準および検査(遺伝学的検査)基準による。治療は通常は化学療法であるが,難治例または遺伝的原因がある例では,造血幹細胞移植による。

組織球症症候群の概要も参照のこと。)

血球貪食性リンパ組織球症(HLH)はまれである。主に生後18カ月未満の乳児が罹患するが,あらゆる年齢で発生する可能性がある。ナチュラルキラー細胞および細胞傷害性T細胞による標的殺傷の障害およびそれを抑制する制御に関係しており,過剰なサイトカイン産生を引き起こし,様々な臓器へ活性化T細胞およびマクロファージが集積する。骨髄および/または脾臓の細胞が赤血球,白血球,および/または血小板を攻撃することがある。

HLHとしては以下のものがある:

  • 家族性(原発性)

  • 後天性(二次性)

HLHは,後述する基準の5つ以上に該当するか,既知のHLH関連遺伝子に突然変異が認められた場合に診断される。

後天性HLHは,感染(例,エプスタイン-バーウイルスサイトメガロウイルス,またはその他),悪性腫瘍(例,白血病リンパ腫),免疫疾患(全身性エリテマトーデス関節リウマチ結節性多発動脈炎サルコイドーシス,進行性全身性強皮症シェーグレン症候群川崎病)に伴って現れることがあり,腎臓または肝臓移植患者に発生することもある。

家族性と後天性のどちらの場合も,臨床像は類似する。

HLHの症状と徴候

血球貪食性リンパ組織球症でよくみられる症状としては,発熱,肝腫大,脾腫,発疹,リンパ節腫脹,神経学的異常(例,痙攣発作,網膜出血,運動失調,意識変容または昏睡)などがある。

HLHの診断

  • 臨床基準および検査基準

既知の原因遺伝子に変異が認められるか,HLH-2004プロトコル(1)に基づく以下の8項目の診断基準のうち少なくとも5項目に該当した場合,血球貪食性リンパ組織球症と診断することができる:

  • 発熱(最高体温が38.5℃を上回る日が7日間を超える場合)

  • 脾腫(触知可能な脾臓が肋骨下縁の下3cmを超える)

  • 2系統を超える血球減少症(ヘモグロビン値 < 9g/dL[90g/L],好中球数 < 100/μL[0.10 × 109/L],血小板数 < 100,000/μL[100 × 109/L])

  • 高トリグリセリド血症(空腹時トリグリセリド値 > 177mg/dL[2.0mmol/L]または年齢正常値より3標準偏差[SD]を超える増加)または低フィブリノーゲン血症(フィブリノーゲン値 < 150mg/dL[1.5g/L]または年齢正常値より3SDを超える減少)

  • 血球貪食(骨髄,脾臓,またはリンパ節の生検検体で確認)

  • ナチュラルキラー細胞の活性低下または活性喪失

  • 血清フェリチン値 > 500ng/mL(> 1123.5pmol/Lng/mL)

  • 可溶性インターロイキン2(CD25)高値(> 2400U/mLまたは年齢の割に非常に高い)

HLHに伴う遺伝子変異としては以下のものがある:

  • PRF1

  • RAB27

  • STX11

  • STXBP2

  • UNC13D

  • XLP

これらの検査法の一部は,広く利用できない場合があり,HLHはまれなため,通常は評価のために専門医療機関へ患者を紹介する。原発性HLHの変異と免疫調節異常を特徴とする変異を検索するための遺伝子検査が推奨される。家族性と後天性の病型は家族歴でのみ鑑別される。

診断に関する参考文献

  1. 1.Henter JI, Horne A, Aricó M, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis.Pediatr Blood Cancer 48(2):124–131, 2007.doi: 10.1002/pbc.21039

HLHの治療

  • 化学療法,サイトカイン阻害薬,免疫抑制,ときに造血幹細胞移植

血球貪食性リンパ組織球症の治療は,本疾患が疑われるのであれば,診断基準を全て満たさなくとも開始すべきである。通常はHLH患者の治療経験が豊富な紹介医療センターで小児血液専門医が治療を担当する。HLHの家族歴,併存感染症,および証明された免疫系障害などの因子の有無に応じて治療法は異なる。HLHの治療には,サイトカイン阻害薬,免疫療法,化学療法,これらの併用療法のほか,場合により造血幹細胞移植を含めてもよい。

二次性HLH患者においてアナキンラ(anakinra)(IL-1拮抗薬)の早期開始に対する奏効例が報告されており,強力な化学療法を回避できる可能性があるが,さらなる検討が必要である(1)。HLHに対する初期治療としてのルキソリチニブ(JAK-STAT経路阻害薬)が,North American Consortium for Histiocytosis(NACHO)が主導する臨床試験で探索的に検討されている。

インターフェロンγを阻害するモノクローナル抗体であるエマパルマブが,難治性,再発,または進行性のHLH患者と従来の治療法に耐えられないHLH患者に対して使用可能である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bami S, Vagrecha A, Soberman D, et al: The use of anakinra in the treatment of secondary hemophagocytic lymphohistiocytosis.Pediatr Blood Cancer 67(11):e28581, 2020.doi: 10.1002/pbc.28581

要点

  • 血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は,頻度の低いまれな疾患で,通常は生後18カ月未満の乳児が罹患する。

  • HLHは家族性(遺伝性)の場合と後天性の場合がある。

  • 公表された診断基準の8項目中5項目以上に該当する場合,またはHLHと関連する変異が認められた場合に,HLHと診断する。

  • 化学療法,サイトカイン阻害薬,免疫抑制,ときに造血幹細胞移植により治療する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Canna SW, Marsh RA: Pediatric hemophagocytic lymphohistiocytosis.Blood 135(16):1332–1343, 2020.doi: 10.1182/blood.2019000936

  2. Histiocyte Society: International society for research into treatment of histiocytic diseases

  3. North American Consortium for Histiocytosis: Conducts clinical and translational studies on histiocytosis and supports researchers and clinicians working in the field

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