まれな遺伝性凝固障害

執筆者:Joel L. Moake, MD, Baylor College of Medicine
レビュー/改訂 2021年 9月
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    血友病以外の遺伝性凝固障害は,その大半がまれな常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,潜性(劣性)遺伝子変異のホモ接合体でのみ過度の出血を引き起こす。まれな遺伝性凝固障害によって,第II,第V,第VII,第X,第XI,および第XIII因子が侵されることがある。そのうち,第XI因子欠乏症が最も一般的である。(凝固障害の概要も参照のこと。)

    第XI因子が欠乏している患者において,第XI因子の血漿中濃度と出血の重症度の間に明らかな関連性は認められないことから,正常な止血における第XI因子の分子的作用は正確に解明されているわけではないことが示唆される。

    他のまれな凝固障害(血友病AおよびBを除く)では通常,正常な止血には欠乏因子の血漿中濃度が正常値に対して約20%過剰であることが必要となる。

    薬剤のフィツシランおよびコンシズマブは,一部のまれな先天性凝固障害の治療に有用となる可能性があるが,臨床試験が必要である。

    表&コラム
    表&コラム

    第XI因子欠乏症

    第XI因子欠乏症は,一般集団においてまれであるが,欧州系ユダヤ人の子孫にはよくみられる(遺伝子頻度は約5~9%)。出血は,第XI因子の遺伝子異常についてホモ接合体または複合ヘテロ接合体の人で,典型的に外傷または外科手術後に発生する。血漿中第XI因子濃度と出血の重症度との間に明確な関係は認められていない。

    α2-アンチプラスミン欠乏症

    プラスミンの主要な生理的阻害因子であるα2-アンチプラスミンの重度の欠乏症(正常濃度の1~3%)でも,プラスミンを介したフィブリンポリマーのタンパク質分解が制御不良になる結果,出血が起きることがある。診断は特異的なα2-アンチプラスミンの測定に基づく。プラスミノーゲンのフィブリンポリマーへの結合を阻害することで急性出血をコントロールまたは予防する目的で,アミノカプロン酸またはトラネキサム酸が使用される。α2-アンチプラスミン濃度が正常値の40~60%であるヘテロ接合体の人では,二次線溶が過剰な場合(例,開腹による前立腺摘除術中に過剰な量のウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターが放出された患者),ときに手術時に過度の出血を起こすことがある。

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