糸球体疾患の重要な特徴はタンパク尿であり,ネフローゼレベル(3g/日以上)となることも多い。
糸球体疾患は,以下のような所見を主に伴って現れるような尿の変化に基づいて分類される:
ネフローゼレベルのタンパク尿およびネフローゼ型の尿沈渣所見(nephrotic urine sediment;脂肪円柱,卵円形脂肪体を認めるが,細胞と細胞円柱はほとんどない)
血尿,通常はタンパク尿(ネフローゼレベルの場合もある)と併発;赤血球は通常変形しており,しばしば赤血球円柱または様々な細胞が混合された円柱を認める(腎炎型の尿沈渣所見[nephritic urine sediment])
ネフローゼ症候群では,ネフローゼ型の尿沈渣に加えて,浮腫と低アルブミン血症もみられる(典型的には高コレステロール血症および高トリグリセリド血症を伴う)。
腎炎症候群では,腎炎型の尿沈渣所見を認めるほか,高血圧,血清クレアチニン値上昇,および乏尿を伴う場合がある。
いくつかの糸球体疾患は,典型的に腎炎症候群とネフローゼ症候群の両方の特徴を併せもつ。そのような疾患としては,細線維性糸球体腎炎とイムノタクトイド糸球体症,膜性増殖性糸球体腎炎,ループス腎炎などがあるが,これに限定されるものではない。
腎炎とネフローゼの病態生理は大きく異なるが,臨床的にはかなりの重複がみられ(例,いくつかの疾患は同じ臨床像を呈することがある),血尿またはタンパク尿の存在それ自体は,治療に対する反応や予後の予測因子とならない。
発症年齢はそれぞれで異なる傾向があるが(糸球体疾患の年齢と臨床像による分類の表を参照),かなりの重複もある。本疾患は以下の場合がある:
原発性(特発性)
続発性(糸球体腎炎の原因およびネフローゼ症候群の原因の各表を参照)
糸球体疾患の年齢と臨床像による分類
糸球体疾患の診断
血清クレアチニン値および尿検査
糸球体疾患は通常,スクリーニングまたは診断検査において血清クレアチニン値の上昇と尿検査の異常(円柱を伴うまたは伴わない血尿,タンパク尿,またはこれら両方)が認められた場合に疑われる。患者へのアプローチは,腎炎優勢の特徴とネフローゼ優勢の特徴を鑑別することと,可能性の高い原因を患者の年齢,併存疾患(糸球体疾患の年齢と臨床像による分類およびネフローゼ症候群の原因の各表を参照),病歴の他の要素(例,時間経過,全身徴候,家族歴)から同定することである。
腎生検は,病歴から診断がつかない場合,または組織診断が治療の選択肢および予後に影響する場合(例,ループス腎炎)に適応となる。