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頭蓋縫合早期癒合症

執筆者:Joan Pellegrino, MD, Upstate Medical University
レビュー/改訂 2024年 7月
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頭蓋縫合早期癒合症は、1カ所以上の頭蓋骨の縫合が早期に閉鎖する先天異常です。

先天異常とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは「生まれたときから存在する」という意味です。(顔面および頭蓋骨の先天異常に関する序論も参照のこと。)

頭蓋縫合

頭蓋骨の縫合とは、複数ある頭蓋骨同士をつないでいる帯状の組織です。縫合によって、中の脳の成長に伴い頭蓋骨が成長することができます。

縫合とは、頭蓋骨を構成している別々の骨同士をつないでいる帯状の組織です。頭蓋骨は一つの骨ではありません。縫合によって、中の脳の成長に伴い頭蓋骨が成長することができます。生後数年間は柔らかいままであり、乳児が成長するに従って閉じて固くなっていきます。縫合が閉じた後は、頭蓋骨はそれ以上大きくなることはできません。

頭蓋縫合早期癒合症は、これらの縫合が早期に閉じることで発生し、それにより、脳と頭蓋骨が正常な形や大きさに成長するのが難しくなります。頭蓋縫合早期癒合症は、自然に発生することもあれば、乳児の遺伝子の変異が原因であることもあります。

この異常は乳児2500人に1人の割合でみられます。頭蓋縫合早期癒合症には、どの縫合が閉じたかに応じていくつかの型があります。

矢状縫合早期癒合症の診断

矢状縫合(頭頂部にあって新生児の泉門[柔らかい部分]から頭の後方まで続いている縫合)の早期癒合症が、最もよくみられる型です。この型の頭蓋縫合早期癒合症では、頭蓋骨が長細くなります(長頭症)。

この型の頭蓋縫合早期癒合症がある小児の約20~50%に学習障害が生じます。

矢状縫合の頭蓋縫合早期癒合症(矢状縫合早期癒合症)
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この写真には、矢状縫合に頭蓋縫合早期癒合症(矢状縫合早期癒合症)がある生後6週間の乳児が写っていて、この異常は頭蓋骨が細長くなる頭蓋変形(長頭症)を引き起こします。
© Springer Science+Business Media

冠状縫合早期癒合症

冠状縫合(泉門の左右に横方向に続いている縫合)の早期癒合症が次に多くみられる型です。この型の頭蓋縫合早期癒合症では、泉門の両側の縫合が閉じた場合は頭蓋骨が短く幅広になり(短頭症)、泉門の片側の縫合だけが閉じた場合は頭蓋骨の形が斜めになります(斜頭症)。この型の頭蓋縫合早期癒合症患児では、顔面や頭蓋骨に他の異常がよくみられます。

左冠状縫合の早期頭蓋癒合症(冠状縫合早期癒合症)
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この写真には、左側に冠状縫合早期癒合がみられる生後10週間の乳児が写っています。この異常によって、額の右側がより突出して見え、眼の位置が同じ高さではなくなっています。
© Springer Science+Business Media

頭蓋縫合早期癒合症の診断

  • 医師による評価

  • 場合により、CT検査などの画像検査

  • ときに遺伝子検査

頭蓋縫合早期癒合症は身体診察の際に特定することができます。

頭蓋骨や脳の画像検査を行うこともあります。

頭蓋縫合早期癒合症のある乳児に対しては、遺伝専門医が診察を行うことがあります。遺伝専門医とは、遺伝学(遺伝子と、特定の性質や形質が親から子にどのように受け継がれるかについての科学)を専門とする医師です。乳児の血液サンプルの遺伝子検査を行い、染色体や遺伝子の異常がないか調べることがあります。この検査は、特定の遺伝性疾患が原因なのかどうかを判断し、他の原因を否定するために役立ちます。

頭蓋縫合早期癒合症の治療

  • 手術

  • 特殊なヘルメット

通常、頭蓋縫合早期癒合症は手術で修復します。手術の後には、頭蓋骨がより整った形になるよう促すために、しばしば特殊なヘルメットを着用させます。

頭蓋縫合早期癒合症の形成に遺伝子の異常が関与している可能性があるため、患者がいる家族には遺伝カウンセリングが有益なことがあります。

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