出生時に、四肢の欠損や変形、発育不全がみられることがあります。
先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。(顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。)
四肢の形成に異常がみられることがあります。例えば、遺伝的異常のため、手や前腕の骨が欠損していたり(染色体異常を参照)、ときには手や足の一部または全部が欠損している場合があります。四肢の正常な発達が子宮内で中断することもあります。羊膜索症候群では、羊膜腔(子宮内で発育中の胎児の周囲を満たす羊水が入っている袋)から出た細い組織の束によって腕や脚が締めつけられ、その発育に異常が起こります。
四肢の異常は先天性感染症や催奇形物質(母親が妊娠中に接触し先天異常を引き起こす有害物質)によって引き起こされることもあります。1950年代後期から1960年代初期にかけて一部の妊婦がつわりのために服用したサリドマイドという薬剤は、四肢に様々な異常を引き起こしました。たいていは短くて変形した未発達の腕や脚が生じ、機能が限られていました。
腕と脚の異常は水平方向にも(例えば、腕が正常より短い場合)、あるいは垂直方向にも(例えば、腕の親指側が肘から親指にかけて異常だが、小指側は正常である場合)起こります。
腕や脚に先天異常が1つある小児には、別の異常もみられる傾向があります。
四肢の欠損または形成不全の診断
出生前には、超音波検査
出生後には、X線検査
ときに遺伝子検査
出生前に、これらの異常を超音波検査で診断できることがあります。
出生後には、どの骨に異常があるかを調べるために、一般的にはX線検査を行い、場合によっては他の画像検査を行います。
四肢の先天異常に遺伝子の異常が関与している可能性があるため、患児は遺伝専門医の診察を受けるべきです。遺伝専門医とは、遺伝学(遺伝子と、特定の性質や形質が親から子にどのように受け継がれるかについての科学)を専門とする医師です。乳児の血液サンプルの遺伝子検査を行い、染色体や遺伝子の異常がないか調べることがあります。この検査は、特定の遺伝性疾患が原因なのかどうかを判断し、他の原因を否定するために役立ちます。
四肢の欠損または形成不全の治療
義肢
小児はしばしば奇形の四肢や義肢を使うことにうまく適応します。
多くの場合、義手や義足(義肢)を装着して、奇形の四肢を使いやすくしたり、ほとんどまたは完全に欠損している四肢の代わりにすることができます(たいていは、小児が自力で座れる場合に行います)。義肢を早期に装着してそれが発達の過程で体と身体像に不可欠な一部となった場合に、小児は最もうまく義肢を使いこなします。乳児期の義肢はできるだけ単純で耐久性の高いものにするべきです。例えば、乳児に筋電義手ではなくフックを装着することができます。
腕や脚の先天異常をもって生まれた小児のほとんどは、普通の生活を送ります。
遺伝子の異常が特定された場合、患者がいる家族には遺伝カウンセリングが有益なことがあります。