皮膚弛緩(しかん)症は、皮膚が伸びやすく、たるんだしわになって垂れ下がる、まれな結合組織疾患です。
この病気は通常、ある遺伝子の異常によって引き起こされますが、特定の病気の後に発生することもあります。
主な症状は異常な皮膚のたるみです。
通常、診断は症状と身体診察の結果に基づいて下されます。
皮膚弛緩症には根治的な治療法がありませんが、皮膚の外観を改善するのに形成手術が助けになることがあります。
伸びた組織が再び元に戻るようにするための線維は、弾性線維と呼ばれています。この線維は、結合組織内に存在しています。結合組織は頑丈で、その多くは線維性であり、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしています。
皮膚弛緩症では、弾性線維が緩みます。ときには、皮膚だけに影響がみられる場合がありますが、全身の結合組織が影響を受けることもあります。
皮膚弛緩症は一般に遺伝性です。一部の皮膚弛緩症では、遺伝子の異常によって結合組織とは無関係の障害が生じます。例えば、心臓、肺、消化管の病気、または知的障害などが引き起こされることがあります。
乳児の場合、まれに、発熱を引き起こす病気の後やペニシリンに対するアレルギー反応が起こった後に、皮膚弛緩症が発生することがあります。
小児や青年では通常、発熱、肺や心臓を覆っている膜といった臓器の炎症、赤く隆起した斑点が皮膚のあちこちにできる多形紅斑など、重い病気の後に症状が現れます。
成人では、皮膚弛緩症はほかの病気に合併することがあります(特に形質細胞の病気)。
皮膚弛緩症の症状
皮膚弛緩症の症状には、主に皮膚だけに現れる軽いものもあれば、内臓に障害が現れる重いものもあります。出生時に皮膚がひどくたるんでいる場合もあれば、成長してから皮膚がたるみ始める場合もあります。皮膚のたるみは顔面に最も顕著に現れることが多いため、年不相応に老けた容貌になり、かぎ鼻がみられます。
心臓弁から血液が逆流したり、その他の血管の問題が起こったりすることもあります。腹壁からこぶ状の突出がみられたり(ヘルニア)や、肺にある空気の袋が破壊される病気(肺気腫)がみられることもよくあります。
出生後すぐに症状が顕著になることが多いものの、小児や青年で突然症状が現れることもあります。成人になってから徐々に症状が現れることもあります。
皮膚弛緩症の診断
皮膚弛緩症の予後(経過の見通し)
心臓、肺、動脈、腸などに重い障害があると、死に至るおそれがあります。
皮膚弛緩症の治療
ときに形成手術
皮膚弛緩症に対する特別な治療法はありません。
多くの場合、形成外科手術によって皮膚の見た目を改善することができますが、一時的な改善にしかならないことがあります。
皮膚以外の合併症(心疾患や肺疾患など)は、適宜治療します。
理学療法が皮膚の張りの改善に役立つことがあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
Cutis Laxa Internationale:皮膚弛緩症に関する支援、教育、地域情報などが世界的なレベルで掲載されています。