胆道閉鎖症は、胆管が進行性に狭くなり生後すぐに閉塞することで、胆汁が腸に到達できなくなる先天異常です。
この異常により、肝臓に胆汁が貯留し、非可逆的な損傷が肝臓に起こります。
典型的な症状としては、黄疸(皮膚の黄色の変色)、濃い尿、灰白色便、肝臓の腫大などがあります。
診断は血液検査、核医学検査、および肝臓と胆管の外科的検査の結果に基づいて下されます。
肝臓から胆汁を排出させるための経路をつくる手術が必要になります。
肝臓から分泌される消化液である胆汁は、肝臓の老廃物を運び去り、小腸で脂肪が消化されるのを助けます。胆管は胆汁が肝臓から腸に流れる経路です。
胆道閉鎖症では、生後数週間から数カ月で胆管が進行性に狭くなり、やがて閉塞します。そのため、胆汁が腸に到達できなくなります。結果として胆汁が肝臓内にたまっていき、やがて行き場をなくして血液中に流れ込むことで、皮膚が黄色っぽく変色します(黄疸)。胆道閉鎖症を治療しないと、「肝硬変」と呼ばれる進行性で不可逆的な肝臓の瘢痕化が生後2カ月までに始まります。
胆道閉鎖症が発生する理由は不明ですが、感染症の原因となる微生物や遺伝子異常が関与している可能性があります。約15~25%の患児では他の先天異常がみられます。
(消化管先天異常の概要も参照のこと。)
胆道閉鎖症の症状
胆道閉鎖症の乳児では、尿の色が濃くなって便の色が白っぽくなり、皮膚が次第に黄疸を示してきます。生後2週間頃にこれらの症状と腫大して硬くなった肝臓に最初に気づくのが普通です。
生後2~3カ月になる頃までに、その乳児は成長が阻害され、かゆがり、興奮しやすく、腹部には大きくなった静脈が見え、脾臓も肥大します。
胆道閉鎖症の診断
予後(経過の見通し)
胆道閉鎖症は進行性に悪化していきます。治療をしない場合、生後数カ月までに肝臓に不可逆的な瘢痕化(肝硬変)が起こり、肝不全になって、1歳までに死に至ります。
胆道閉鎖症の治療
手術
しばしば肝移植
肝臓から胆汁を排出させるための経路をつくる手術が必要になります。その経路は、小腸の一部を肝臓の胆管が出てくる部分に縫い付けることで作製します。この手術は、肝臓が瘢痕化する前の生後1カ月以内に行うべきです。手術が不成功に終わった場合は、肝移植が必要になります。たとえ手術が成功した場合でも、約半数の患児は引き続き肝臓の病状が悪化していき、最終的に肝移植が必要になります。残りの患児は通常の生活を送れる可能性があります。
手術後、患児には胆管の炎症を予防するためにしばしば1年間にわたって抗菌薬が投与されます。ウルソデオキシコール酸という薬剤が投与されることもあります。ウルソデオキシコール酸は胆汁の流れを促進し、胆汁の排出路の開通を維持するのに役立ちます。十分な栄養補給が重要であるため、患児には脂溶性ビタミンの補充も行われます。
この手術を受けられない患児の場合、通常は1歳までに肝移植が必要になります。