外陰がん

執筆者:Pedro T. Ramirez, MD, Houston Methodist Hospital;
Gloria Salvo, MD, MD Anderson Cancer Center
レビュー/改訂 2022年 8月
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外陰がんは通常、腟の開口部周辺の組織である陰唇に生じます。

  • しこりやかゆみ、あるいは、なかなか治らないただれとして現れます。

  • 異常がある組織のサンプルを採取して検査します(生検)。

  • 外陰部の一部もしくは全体とその他の病変部を手術で切除します。

  • 再建手術を行うことで、外観や機能が改善します。

女性生殖器のがんの概要も参照のこと。)

外陰がんは、米国では婦人科がんの中で4番目に多く発生しているがんですが、婦人科がん全体に占める割合は5%です。外陰がんは通常は閉経後にみられます。外陰がんの診断時の平均年齢は70歳です。女性の寿命が長くなるにつれて、このがんは増えていくと考えられています。最近では、外陰がんが若い女性でもより一般的になってきていることを示唆する科学的根拠があります。

外陰部とは腟の開口部の周辺部分のことで、女性の外性器がある部分です。

外陰部の位置

外陰がんは通常、何年にもわたってゆっくりと発生します。

外陰がんのほとんどは腟の開口部周辺の陰唇を覆う皮膚のがんです。外陰がんの約90%は扁平上皮がんと呼ばれる種類のもので、これは皮膚の最も外側の層を構成している平らな細胞から発生します。外陰がんの5%は黒色腫と呼ばれるもので、これは皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)から発生するがんです。残りの5%は、腺細胞から発生する腺がん、基底細胞がん(めったに転移しません)、バルトリン腺がんなどのまれながんです。バルトリン腺は非常に小さな丸い腺で、外陰部の深部の腟口の両側にあります。

外陰がんは外陰部の表面から発生します。多くの場合、ゆっくりと増殖し、何年も表面にとどまっています。ただし、なかには増殖の速いがん(黒色腫など)もあります。治療を受けずにいると、やがて腟、尿道、肛門などにがんが広がり、骨盤部および腹部のリンパ節へ転移し、また血流に入って広がります。

外陰がんの危険因子

外陰がんの発生リスクは以下の要因によって高まります。

外陰がんの大半は、持続的なヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。

外陰がんの症状

外陰部にみられる発赤や皮膚の変色は前がん病変である可能性があります(いずれがんを発症する可能性があることを示しています)。

外陰がんでは通常、異常なしこりや、ただれが生じ、ただれは治りにくく、目で見たり触れたりして分かるもので、平坦で滑らかであったりざらざらしており、赤かったり皮膚と同じ色をしています。平らなただれがうろこ状になったり、その部分だけ皮膚の変色が起きたりすることもあります。周囲の組織にひきつれや、しわが生じることもあります。ただれが出血することもあります。黒色腫は、青みがかった黒色や茶色で、盛り上がっています。ただれは、いぼのように見えることがあります。

多くの女性では、外陰部に長期にわたるかゆみの経験があります。

外陰がんでは不快感はあまりありませんが、かゆみはよくみられます。やがて、しこりやただれの部分から出血したり、水っぽいおりものが出たりするようになります。このような症状があれば、速やかに医師の評価を受けるべきです。

外陰がんの診断

  • 生検

外陰がんの診断では、皮膚の患部のサンプルを採取して検査します(生検)。生検によって皮膚の異常が悪性(がん)なのか、ただの感染や刺激によるものなのかを判定できます。また、がんであればその種類も特定できるため、治療計画を立てる上で役立ちます。皮膚の異常領域がはっきりしていない場合は、生検用サンプルの採取位置を決めるため、患部を染色します。代わりに、コルポスコープと呼ばれる双眼の拡大鏡が付いた機器を使って外陰部の表面を観察することもあります(この検査はコルポスコピーと呼ばれます)。

外陰がんの病期診断

医師は、がんの大きさ、がんの位置、がんが近くのリンパ節に広がっているかどうかをがんを切除する手術中に判断し、それに基づいて外陰がんの病期を診断します。病期は、I期(早期がん)からIV期(進行がん)に分類されます。

  • I期:がんが外陰に限局している。

  • II期:がんが近くの組織(尿道および/または腟の下部または肛門)に広がっているが、周囲のリンパ節には転移していない。

  • III期:がんが近くの構造物の上部またはリンパ節に転移している。

  • IV期:がんが遠隔部位(例、骨盤外)に転移している、または鼠径部のリンパ節に転移しており、ただれを形成しているか固くくっついている、または骨に付着している。

外陰がんの予後(経過の見通し)

早期に発見されて治療を受けた外陰がんの患者では、およそ4人中3人で診断から5年後の時点でがんの徴候がまったく認められません。診断と治療から5年後に生存している人の割合(5年生存率)は、診断時にがんが広がっているかどうかと、広がりの範囲によって異なります。5年全生存率は約70%です。

黒色腫は扁平上皮がんより転移しやすい傾向があります。

外陰がんの治療

  • 外陰部の一部または全体の切除

  • 通常は近くのリンパ節の切除

  • より進行したがんでは、手術と放射線療法にしばしば化学療法を併用

外陰部の一部もしくは全体を手術により切除します(外陰切除術)。通常は近くのリンパ節も切除しますが、ときに、センチネルリンパ節郭清術(がんに最初に侵されるリンパ節の切除)を行うこともあります。外陰部の基底細胞がんは離れた部位に転移しにくいため、手術ではがんの部分のみを切除するのが通常です。基底細胞がんが大きく広がっている場合のみ、外陰部全体を切除します。

センチネルリンパ節を特定するには、青もしくは緑の色素または放射性物質を外陰部の腫瘍に近い位置に注入します。これらの物質が通過する経路により、外陰部から最初にたどり着く骨盤部のリンパ節(複数の場合もあります)を特定できます。そして手術中に、青または緑色をしているか放射線(手持ち式の装置で検出)を発しているリンパ節がないか調べます。医師はこのリンパ節を切除し、検査室に送ってがんがないかを調べます。もしがんがなければ、ほかのリンパ節を切除する必要はありません(異常にみえるものがある場合を除く)。早期であれば、必要な治療は通常はこれだけです。腫瘍の大きさによっては、外陰部の片側または両側のセンチネルリンパ節を切除することがあります。

センチネルリンパ節に2mm未満のがんの領域(微小転移と呼ばれます)が検出された場合は、放射線療法で治療します。領域が大きい場合(肉眼的転移)、鼠径部のリンパ節を切除(リンパ節郭清)します。

外陰がんがより進行した患者では、通常はまず放射線療法を、しばしばシスプラチンまたはフルオロウラシルを用いた化学療法と併用して行ってから、外陰切除術を実施します。がんが非常に大きい場合でも、このような治療によって縮小し、切除しやすくなります。場合によっては陰核や骨盤内にある他の臓器の切除も必要になります。

外陰がんが非常に進行した患者では、すべての骨盤内臓器を切除する手術(骨盤除臓術と呼ばれます)、放射線療法、化学療法を単独または組み合わせて行います。対象となる臓器には、生殖器(腟、子宮、卵管、および卵巣)、膀胱、尿道、直腸、および肛門が含まれます。どの臓器を切除するかや、すべてを切除するかどうかは、がんの位置、患者の解剖学的構造、手術後の目標など、多くの要因によって異なります。尿(人工膀胱造設術)と便(人工肛門造設術)を排出するため、腹部に固定した開口部を作り、そこを通して排泄物を体外に出し、バッグに貯められるようにします。

がんを切除した後は、外陰部やその他の患部(腟など)を再建する手術を行うことがあります。このような手術によって、機能と外観が改善されます。

医師と患者の間で十分に話し合い、患者の年齢や性生活、他の病気などを考慮した上で、その人に最も合った治療計画を立てます。通常、外陰切除術の実施後も性交は可能です。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国国立がん研究所:外陰がん(National Cancer Institute: Vulvar Cancer):このウェブサイトには、外陰がんに関する一般的な情報へのリンクのほか、原因、統計、予防、スクリーニング、治療、研究、がんへの対処に関する情報へのリンクが掲載されています。

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