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薬疹

執筆者:Julia Benedetti, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2024年 5月
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やさしくわかる病気事典

薬疹とは、薬剤の副作用が皮膚の反応として現れたもののことです。

本ページのリソース

  • 薬疹は通常、薬に対するアレルギー反応によって引き起こされますが、なかにはアレルギーではない薬疹もあります。

  • 典型的な症状としては、発赤、膨らみ、水疱、じんま疹、かゆみのほか、ときに皮膚の脱落や痛みなどがあります。

  • どの薬剤が発疹を引き起こしているかを特定するために、使用している薬を1つずつ中止しなければならないこともあります。

  • 大半の薬疹は、原因の薬剤を中止すれば消失しますが、軽度の反応であれば症状を抑えるためにクリーム剤で治療することもあり、重篤な反応に対しては、合併症を予防するために、アドレナリン(注射で投与)、ジフェンヒドラミン、またはコルチコステロイドによる治療が必要になることもあります。

過敏症と反応性皮膚疾患の概要も参照のこと。)

「発疹(ほっしん)」という用語は、皮膚の変色(発赤など)や性状の変化(膨らみや腫れなど)を指します。アレルギー反応の後にしばしば生じるものなど、多くの発疹はかゆみを伴いますが、痛みを伴うものもあれば、症状を引き起こさないものもあります。

薬剤によって生じる発疹には、いくつかのパターンがあります。

アレルギーによる薬疹

大半の薬疹は、薬剤に対するアレルギー反応によって生じます。そのような反応は通常、内服で投与された薬剤か、注射で投与された薬剤または違法薬物に対して生じたものです。薬剤を皮膚に塗らなければ薬疹は生じないというわけではありません。

免疫系がある薬剤(または違法薬物)にさらされると(曝露)、その薬剤に対して敏感になります(このプロセスは感作と呼ばれます)。薬剤に対する感作は、1回の曝露だけで生じることもあれば、何回もの曝露の後にようやく生じることもあります。ある薬剤に対して感作が生じると、後にその薬剤にさらされた際に発疹などのアレルギー反応が誘発されるようになります。

アレルギーによらない薬疹

ときに、アレルギー反応の関与なしで、発疹が直接生じることがあります。例えば、コルチコステロイドとリチウムによって、にきびに似た発疹が生じることがあり、また抗凝固薬によって皮膚の下に血液が漏れることで青あざができることがあります。

ある種の薬剤を使用すると、皮膚が日光などの紫外線の作用に対して非常に敏感になります(光線過敏症)。そのような薬剤としては、特定の抗精神病薬、テトラサイクリン系薬剤、サルファ剤(抗菌薬の一種)、ヒドロクロロチアジド、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などがあります。問題の薬剤を使用した際には発疹は現れませんが、その薬を使用している間に日光にあたると光線過敏症が生じることがあります。

薬剤により生じる発疹として、ほかにスティーブンス-ジョンソン症候群中毒性表皮壊死融解症、および結節性紅斑で発生するものがあります。

薬疹の症状

薬疹の重症度は、小さな部分に小さな膨らみを伴う軽度の発赤がみられるものから、皮膚全体が剥がれるものまで様々です。発疹は薬剤の使用後数分以内に突然生じる場合もあれば、数時間、数日、さらには数週間遅れて生じる場合もあります。発疹により、皮膚が赤色、紫色、青色、または灰色に変色することもあります。一部の発疹は痛みを伴い、口内炎が生じるものもあります。

薬に対する反応による発疹
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この写真には、薬剤に対するアレルギー反応の結果生じた発疹が写っています。
Photo courtesy of Anar Mikailov, MD, FAAD.

アレルギー性の発疹がみられる患者では、じんま疹やその他のアレルギー症状(鼻水や涙目など)が現れることがあります。また、喘鳴(ぜんめい)や危険なレベルの血圧低下など、より重大な症状が現れることもあります。じんま疹は強いかゆみを伴うのに対し、かゆみがほとんど生じない薬疹もあります。

じんましん
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じんま疹しんは、皮膚ひふの盛もり上あがった斑点はんてんで、かゆみと発赤ほっせきを伴ともないます。
Photo provided by Thomas Habif, MD.

薬疹の診断

  • 使用中の処方薬および市販薬の確認

  • 反応の原因になっている可能性の最も高い薬剤を中止して、発疹が消えるかどうかを確認する

  • ときに皮膚生検

薬疹はごく少量の投与で生じる場合もあれば、薬剤の最初の使用からかなり時間が経過して生じる場合や、使用を中止しても数週間から数カ月持続する場合もあるため、ある薬剤が発疹の原因かどうかを判断するのは難しいことがあります。点眼薬、点鼻薬、坐薬、ハーブ製品などの処方なしで購入できるものも含めて、患者が使用しているあらゆる薬剤が原因として疑われるため、医師は患者が使用している処方薬と市販薬をすべて確認します。医師は、患者が使用を開始した直後に発疹が現れた薬剤がないかを調べます。そして多くの場合、発疹を引き起こしている可能性が最も高い薬剤の使用を中止して、それにより発疹が消失するかどうかを確認します。

どの薬が発疹の原因であるかを特定するために、使用をやめると命にかかわる重要な薬剤を除く、すべての薬剤の使用を中止しなければならない場合もあります。可能な限り、化学的に関係のない別の薬剤で代用します。そのような代替薬がない場合は、疑われる薬剤の使用を一度に1つずつ再開し、どの薬が反応を引き起こしているかを判断します。しかし、患者がその薬剤に対する重度のアレルギー反応を経験したことがある場合には、この方法は危険となる可能性があります。

ときとして、医師は反応を引き起こす物質(アレルゲン)を皮膚に塗ることがあり(パッチテストと呼ばれます)、これが特定の発疹の診断に役立つことがあります。場合によっては、皮膚のサンプルを切除して顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行うこともあり、特に重度またはまれな薬物反応が疑われる場合によく行われます。

薬疹の治療

  • 原因薬剤の中止

  • 軽度の反応には、ときにかゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドクリーム

  • 重度の反応には、ときに薬剤の静脈内投与と入院

大半の薬物反応は原因薬剤を中止すると消失します。

抗ヒスタミン薬の内服薬やコルチコステロイドのクリーム剤など、かゆみに対する標準的な治療法が必要に応じて用いられます。

重度のアレルギー性皮膚反応、特に喘鳴や呼吸困難などの重篤な症状を伴う場合(アナフィラキシーと呼ばれます)には、アドレナリン(注射で投与)のほか、通常は抗ヒスタミン薬とコルチコステロイドによる治療を行います。

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