スティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死融解症(TEN)

執筆者:Julia Benedetti, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2024年 5月
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やさしくわかる病気事典

スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は、生命を脅かす同じ皮膚の病気がそれぞれ異なる形態で生じたもので、どちらも発疹、皮膚の剥離、粘膜のただれを引き起こします。

過敏症と反応性皮膚疾患の概要も参照のこと。)

  • スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は、一般的に薬剤または感染が原因となって発生します。

  • 両方の病気に典型的な症状としては、皮膚の剥離、発熱、全身の痛み、赤色または紫色の平坦な発疹、粘膜(口や眼など)の水疱とただれなどがあります。

  • 典型的には熱傷専門治療室での治療になり、そこで水分補給のほか、ときに薬剤を投与するとともに、原因として疑われる薬剤(被疑薬)の使用をすべて中止します。

皮膚の剥離は、これらの病気の大きな特徴です。皮膚の剥離は皮膚の最上層(表皮)で生じ、ときに広い範囲で大きく剥がれることもあります(皮膚の構造と機能を参照)。

  • スティーブンス-ジョンソン症候群では、狭い範囲で皮膚の剥離がみられます(体表面積の10%未満)。

  • 中毒性表皮壊死融解症では、広い範囲で皮膚の剥離がみられます(体表面積の30%を超える)。

  • 体表面積の10~30%が侵されている場合は、スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症を併発しているとみなされます。

どちらの場合も、粘膜の水疱は典型的には口の中、眼、腟に生じるほか、ときに消化管や呼吸器、尿路に生じることもあります。

どちらの病気も生命を脅かすことがあります。

スティーブンス-ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死融解症の症例の大半は、薬剤に対する反応を原因として発生し、該当する薬剤で最も一般的なものは、サルファ剤などの抗菌薬、フェニトインカルバマゼピンなどの抗てんかん薬、ピロキシカムアロプリノールなど他の特定の薬剤です。

一部の症例では、細菌感染、ワクチン接種、または移植片対宿主病が原因になります。スティーブンス-ジョンソン症候群の小児では、感染が最も一般的な原因です。

まれに原因を特定できません。

これらの病気はあらゆる年齢層でみられます。免疫系に異常がある人でよく発生し、例えば骨髄移植を受けた患者、全身性エリテマトーデスの患者、その他の慢性関節疾患および慢性結合組織疾患の患者、またはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者(特にニューモシスチス・イロベチイ[Pneumocystis jirovecii]による肺炎もみられる場合)によくみられます。これらの病気のいずれかを発症する傾向が家系内で受け継がれる場合もあります。

SJSとTENの症状

スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は通常、発熱、頭痛、せき、角結膜炎(眼の結膜と角膜の炎症)、および全身の痛みで発症します。薬剤が原因の場合、通常はその使用開始から1~3週間後に、これらの症状が出現します。続いて皮膚の変化が現れ始め、赤色または紫色の平坦な発疹が顔面、首、体幹に生じ、その後はしばしば他の部位に不規則なパターンで広がっていきます。発疹のある部位は大きくなって広がり、しばしばその中心部に水疱が現れます。水疱ができた部分の皮膚は非常にもろく、こすると(しばしば軽く触れたり引っ張ったりしただけも)簡単に破れ、水疱は1~3日かけて剥がれ落ちます。患部は痛みを伴い、患者は非常に具合が悪くなり、悪寒と発熱がみられます。まゆ毛と爪が脱落する患者もいます。手のひらと足の裏が侵されることもあります。

どちらの病気でも、口の中、のど、肛門、性器、および眼の粘膜にただれが生じます。口の中の損傷により物を食べることが困難になり、口を閉じると痛むことがあるため、よだれを垂らすようになる場合もあります。眼は強く痛んで腫れ、痂皮(かひ)ができて眼がふさがることもあります。角膜に瘢痕(はんこん)ができることもあります。尿道(尿が体外に出るところの経路)にも症状が現れ、排尿が困難になり、痛みを伴うことがあります。ときに消化管や呼吸器の粘膜に症状が生じ、下痢、せき、肺炎、呼吸困難がみられることもあります。

スティーブンス-ジョンソン症候群しょうこうぐん
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この写真しゃしんには、スティーブンス-ジョンソン症候群しょうこうぐんの患者かんじゃの皮膚ひふや眼めの粘膜ねんまく、そして口くちに生しょうじた赤あかい発疹ほっしんと水疱すいほうが写うつっています。
DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

中毒性表皮壊死融解症でみられる広範囲の皮膚の剥離は、重度の熱傷と似ており、同様に生命を脅かすものとなります。患者は非常に具合が悪くなり、食べたり、眼を開けたりすることができなくなる場合もあります。広い範囲で皮膚が剥がれて損傷を受け、むき出しになったところから多量の体液やミネラル類がしみ出します。この病気を発症した人では、臓器不全に陥る可能性が非常に高くなります。損傷してむき出しになった組織の部位では、感染のリスクも高まります。中毒性表皮壊死融解症の人の死因としては、そのような感染症が最も多くなっています。

SJSとTENの診断

  • 医師による評価

  • ときに皮膚生検

通常、スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症の診断は、患部の皮膚および粘膜の外観、症状(かゆみではなく痛み)、皮膚症状が進行する速さ、ならびに侵されている皮膚の広さに基づいて下されます。

皮膚のサンプルを採取して顕微鏡で調べることもあります(この検査は皮膚生検と呼ばれます)。

SJSとTENの治療

  • 熱傷治療専門施設または集中治療室での治療

  • 場合により、シクロスポリン、コルチコステロイド、プラズマフェレーシス、免疫グロブリン製剤、または免疫抑制薬

スティーブンス-ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症の患者は入院させます。これらの病気の原因として疑われるすべての薬剤の使用を直ちに中止します。可能であれば、熱傷治療専門施設または集中治療室で治療を行い、感染を予防するために入念なケアを行います(重度の熱傷を参照)。死を免れれば、皮膚は自然に元の状態に戻り、熱傷の場合と異なり、皮膚移植の必要はありません。損傷した皮膚から失われる体液とミネラル類は静脈から補給します。

理論的には一部の薬剤が有用になると考えられるものの、明確に生存率を改善することが示されている薬剤がないことから、これらの病気の治療に薬剤を使用することには賛否があります。シクロスポリンは、活発な水疱形成と皮膚の剥離が続く期間を短縮する効果が期待でき、生存率を高める可能性もあります。最初の数日のうちに大量のコルチコステロイドを投与するのが有益と考える医師もいますが、重篤な感染症のリスクを高めかねないので、そのような治療は行うべきではないとする医師もいます。感染症が発生した場合は、直ちに抗菌薬を投与します。

プラズマフェレーシスを行うこともあります。この処置では、患者の血液を体外に抜き出して、血漿を血球と分離して廃棄します。この処置により、病気の原因と考えられる薬剤や抗体(免疫系のタンパク質)などの特定の有害物質を血液から取り除きます。有害物質を除去したら、その血液を患者の体内に戻します。

中毒性表皮壊死融解症の治療として、ヒト免疫グロブリン製剤を静脈から投与することもあります。この物質で皮膚細胞のさらなる損傷を予防できるかどうかは明らかになっていません。

免疫抑制薬と呼ばれる薬剤が使用されることもあります。免疫抑制薬は、免疫機能を弱め(抑制し)、免疫系が自分自身の組織を攻撃しないようにします。腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬は免疫抑制薬の一種です。インフリキシマブやエタネルセプトなどのTNF阻害薬は、スティーブンス-ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症の患者に対して、炎症を引き起こしている免疫反応を抑えるために投与されます。

SJSとTENの予後(経過の見通し)

中毒性表皮壊死融解症では、死亡率が成人で25~35%にも上り、非常に重度の水疱がみられる高齢者では、さらに高い可能性があります。小児での死亡率はこれより低いです。

スティーブンス-ジョンソン症候群の死亡率は、中毒性表皮壊死融解症のそれより低いです。

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