血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、全身に小さな血栓ができて、脳、心臓、腎臓などの重要臓器への血液の流れを妨げる重篤な病気です。
症状は血栓ができた場所に関係します。
診断は患者の症状と血液検査の結果に基づいて下されます。
血栓性血小板減少性紫斑病の治療は、血漿交換、コルチコステロイド、リツキシマブのほか、まれにカプラシズマブによって行います。
血栓性の意味は、血栓ができること、血小板減少性の意味は、血小板数が低下すること、そして紫斑病の意味は、皮膚に斑点やあざ(通常は赤、紫、または黒)がみられることです。血栓性血小板減少性紫斑病はまれな病気で、多くの小さな血のかたまり(血栓)が突然全身にできます。溶血性尿毒症症候群(HUS)と関連がありますが、小児により多くみられる溶血性尿毒症症候群と比べると成人に発生する傾向があります。
血栓性血小板減少性紫斑病でみられる血栓は、深部静脈血栓症でみられるような、太い血管を閉塞させる大きな血栓ではありません。その代わり、血栓性血小板減少性紫斑病では小さな血栓がたくさんできて全身の毛細血管を詰まらせますが、特に脳、心臓、腎臓の血管でそれがよく起こります。血管が詰まると組織が損傷を受けるとともに、赤血球が分裂を起こし、部分的に詰まった血管を通り抜けます。血栓の形成は、異常に大量の血小板を消費するため、血液中の血小板数が急激に減少することになります(血小板減少症といいます)。
血小板は、骨髄で作られて血液中を循環している細胞で、血液凝固を助けます。血液には、通常1マイクロリットル当たり14万~44万個(1リットル当たり約140~440 × 109個)の血小板が含まれています。血液中の血小板数が1マイクロリットル当たり約5万個(1リットル当たり約50 × 109個)を下回ると、比較的軽いけがでも出血する可能性があります。しかし、出血リスクが最も大きくなるのは、一般に血液中の血小板数が1マイクロリットル当たり1万~2万個(1リットル当たり10~20 × 109個)を下回ってからです。血小板数がここまで少なくなると、傷が認められなくても出血する可能性があります。
血栓性血小板減少性紫斑病の原因は多くの場合不明ですが、一部の患者では特定の薬剤(キニーネ、シクロスポリン、マイトマイシンCなど)を使用した後、特定の腸管感染症の後、または妊娠中に発症したり、まれに遺伝性疾患として発症したりすることがあります。
血栓性血小板減少性紫斑病は、たいていの場合、ある酵素(ADAMTS13)を破壊する抗体が体の免疫系によって作られる自己免疫疾患です。この酵素が欠乏すると、血小板が血管内で不適切に凝集し始めて、血液中の血小板の数(血小板数)が減少するとともに、血栓ができた臓器(脳や腎臓など)が損傷を受ける可能性があります。
血栓性血小板減少性紫斑病の症状
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では、症状が突然現れます。
血栓性血小板減少性紫斑病でみられる症状は、他の大半の血小板減少症でみられる症状とかなり異なります。
血栓性血小板減少性紫斑病では、(血小板を使い果たして)形成された小さな血栓が様々な症状や合併症を引き起こし、その中には生命を脅かすものもあります。脳内の血栓による症状には、頭痛、錯乱、けいれん、昏睡(こんすい)などがあります。脳内の血栓による症状は、出現と消失を繰り返すことがあり、程度も様々です。体内の別の部位の血栓による症状としては、不整脈、血尿、腹痛などがみられます。
血栓性血小板減少性紫斑病の診断
血小板数とADAMTS13酵素を測定する血液検査
ADAMTS13酵素に対する自己抗体の検査
血小板数の減少や出血を引き起こす他の病気を否定するための検査
体調不良が続いている人、特定の薬剤を使用している人、または妊娠している人に、血小板数が少ないことが確認されたときに、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)が疑われます。
血栓性血小板減少性紫斑病の診断に特化した血液検査はありませんが、症状と併せて診断に役立つ血液検査がいくつか行われます。そのような血液検査としては、多くの場合、赤血球の破壊を確認する検査、腎臓がどの程度機能しているかを調べる検査、ADAMTS13という酵素の量とこの酵素に対する抗体の有無を調べる検査などが行われます。
血栓性血小板減少性紫斑病の治療
コルチコステロイドと血漿交換
ときにリツキシマブ
カプラシズマ(まれ)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では、多くの場合、コルチコステロイドと血漿交換(プラズマフェレーシスと併せて血漿輸血)による治療が行われます。プラズマフェレーシスでは、患者の体から血液を抜き出して、血球と血漿(血液の液体部分)を分離する装置に送ります。病気を引き起こしている抗体を含んだ血漿は廃棄する一方、血球は健康なドナーから提供された新鮮な血漿と併せて体内に戻します。
免疫機能を抑える薬剤であるリツキシマブは、コルチコステロイドとプラズマフェレーシスによる治療後に血栓性血小板減少性紫斑病が再発するのを予防する目的で、しばしば使用されます。
カプラシズマブは、血液の凝固に関与するタンパク質と血小板の相互作用を阻害する薬剤です。カプラシズマブは、血漿交換の必要性を減らしTTPの回復を早める可能性がありますが、出血のリスクを高める可能性もあります。
