炭水化物、タンパク質、脂肪

執筆者:Adrienne Youdim, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA
レビュー/改訂 2021年 12月
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炭水化物、タンパク質、および脂肪は、食物に含まれている主要な多量栄養素(毎日大量に必要とされる栄養素)です。食物の乾燥重量の90%を占め、食物のエネルギーの100%を供給しています。3つともエネルギー(単位はカロリー)を供給しますが、1グラム当たりのエネルギーの量は次のように異なります。

  • 炭水化物とタンパク質は1グラムにつき4キロカロリー

  • 脂肪は1グラムにつき9キロカロリー

これらの栄養素はエネルギーを供給する速度も異なります。最も速いのが炭水化物、最も遅いのが脂肪です。

炭水化物、タンパク質、脂肪は腸で消化され、次の通り最も小さい基本的な構成単位にまで分解されます。

  • 炭水化物は糖になります

  • タンパク質はアミノ酸になります

  • 脂肪は脂肪酸とグリセロールになります

体はこれらの基本的な構成単位を使って、他の炭水化物、タンパク質、脂肪など、体の成長、維持、活動に必要な物質をつくります。

炭水化物

炭水化物は分子の大きさによって、単純炭水化物と複合炭水化物に分けられます。

  • 単純炭水化物:単純炭水化物は、果糖(フルクトース)やショ糖(スクロース)をはじめとする様々な糖類です。小さな分子なので体内ですぐに分解、吸収されます。そのため最も速くエネルギー源として働き、血糖値を速やかに上昇させます。果物、乳製品、ハチミツ、メープルシロップには多量の単純炭水化物が含まれており、ほとんどのキャンディーやケーキなどの甘味のもととなります。

  • 複合炭水化物:複合炭水化物は、単純炭水化物が集まって長くつながったものです。単純炭水化物よりも分子が大きいため、分解されて単純炭水化物になってからでなければ吸収されません。そのため体へのエネルギー供給は単純炭水化物よりも遅い傾向がありますが、それでもタンパク質や脂肪よりは速やかです。単純炭水化物よりも消化に時間がかかるため、脂肪に変換されにくい傾向があります。さらに、単純炭水化物より血糖値の上昇が遅く、上昇幅も小さいですが、より長い時間上昇します。複合炭水化物には、小麦製品(パン、めん類など)、小麦以外の穀類(ライ麦、トウモロコシなど)、豆類、根菜類(ジャガイモ、サツマイモなど)に含まれるデンプンや食物繊維などがあります。

炭水化物には次の2種類があります。

  • 精製された炭水化物

  • 精製されていない炭水化物

精製とは、食品が高度に加工されることを意味します。精製の過程で繊維やふすまとともに多くのビタミンやミネラルが除去されています。そうすることで、体は精製された炭水化物を速やかに分解し、また精製した炭水化物に含まれるカロリーは精製前とほぼ同じですが、栄養分は少なくなります。精製食品はしばしば栄養を強化されており、すなわち、栄養価を高めるためにビタミンやミネラルが再添加されています。単純炭水化物または精製炭水化物を多く含む食生活は、肥満糖尿病のリスクを高める傾向があります。

必要以上の炭水化物を摂取すると、体はその炭水化物の一部をグリコーゲンとして細胞内に蓄え、残りを脂肪に変換します。グリコーゲンは複合炭水化物で、体内で簡単かつ素早くエネルギーに変換できます。グリコーゲンは肝臓と筋肉に蓄えられます。筋肉は激しい運動をしているときにエネルギー源としてグリコーゲンを使います。グリコーゲンとして蓄えられた炭水化物で、ほぼ1日分のカロリーを供給できます。そのほかにも、エネルギー供給には利用できない複合炭水化物として、炭水化物を蓄える組織もいくつかあります。

大半の専門家が、1日の総カロリーの約50~55%を主に果物、野菜、豆類および精製されていない穀物からの炭水化物で摂取することを推奨しています。添加糖類からの摂取は、1日の総カロリーの10%以下にするべきです。添加糖類とは、シロップやその他の甘味料で、他の食品中に使用したものを指します。添加糖類は食品表示の原材料の1つとして表記されます。ブラウンシュガー(brown sugar)、コーン由来の甘味料、コーンシロップ、デキストロース、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、高果糖コーンシロップ、ハチミツ、転化糖、乳糖(ラクトース)、麦芽シロップ、麦芽糖(マルトース)、糖蜜、ローシュガー(raw sugar)、ショ糖(スクロース)、トレハロース、タービナードシュガー(turbinado sugar)などがこれに含まれます。果物や牛乳などに含まれる自然由来の糖類は、添加糖類ではありません。

グリセミック指数(血糖指数、GI)

炭水化物のグリセミック指数とは、炭水化物を摂取することによって血糖値が上昇する速さを表すものです。値の範囲は、1(最も遅い)~100(最も速い、純粋なブドウ糖の値)です。しかし、実際に血糖値がどれほど速く上昇するかは、同時にどんな食品を摂取するかといった要因にも左右されます。

グリセミック指数は単純炭水化物よりも複合炭水化物の方が低い傾向がありますが、例外もあります。例えば、果物に含まれる果糖(フルクトース)は血糖値にほとんど影響しません。

以下の点も食品のグリセミック指数に影響します。

  • 加工:加工食品、精製食品、細かく粉砕した食品は、グリセミック指数が高い傾向があります。

  • デンプンの種類:デンプンは種類によって吸収が異なります。例えば、ジャガイモのデンプンは比較的速やかに消化され血液に吸収されます。大麦に含まれるデンプンは、それよりもはるかにゆっくり消化、吸収されます。

  • 食物繊維の含有量:食品に含まれる食物繊維が多いほど消化されにくくなります。その結果、糖もゆっくり血液に吸収されます。

  • 果物の熟し方:果物は熟すにつれて糖分が増え、グリセミック指数も高くなります。

  • 脂肪および酸の含有量:食品に含まれる脂肪や酸が多いほど消化は遅くなり、糖が血液に吸収される速度も遅くなります。

  • 調理:食品の調理方法も、血液に吸収される速度に影響することがあります。一般に、食品を加熱調理したりすりつぶしたりすると、消化、吸収しやすくなるため、グリセミック指数が上昇します。

  • その他の要因:体が食物を処理する過程には個人差があり、炭水化物が糖に変換、吸収される速度に影響しています。どれだけよく噛んだか、どれだけの速さで飲み下したかということにも影響があります。

血糖値を速く上昇させる(グリセミック指数が高い)炭水化物はインスリン値も速く上昇させることから、グリセミック指数は重要と考えられています。インスリンが上昇すると血糖値が低下し(低血糖)空腹感が生じる可能性があり、そうすると過剰なカロリー摂取と体重増加につながる傾向があります。しかしながら、グリセミック指数の低い食品を食べることが減量に役立つとは食事の専門家はもはや考えていません。

グリセミック指数が低い炭水化物は、それほどインスリン値を上昇させません。その結果、食後に感じる満足感が長くなります。グリセミック指数が低い炭水化物を摂取すると、さらにコレステロール値が健全になる傾向があり、また、肥満糖尿病のリスクが低下し、糖尿病患者では糖尿病による合併症のリスクが低下します。

グリセミック指数が低い食品と健康の増進には関連性がありますが、グリセミック指数に基づいて食品を選んだからといって、必ずしも健康的な食事になるわけではありません。例えば、健康的な選択とはいえないポテトチップスやチョコバーのグリセミック指数は、玄米など一部の健康的な食品よりも低いです。グリセミック指数が高い食品の中にはビタミンやミネラルなど大切な成分を含むものもあります。したがって、グリセミック指数は食品選びの大まかな目安としてだけ用いるのがよいでしょう。

グリセミック負荷

グリセミック指数は、食品中の炭水化物がどれだけの速さで血液に吸収されるかだけを示すものです。同じく重要である食品中の炭水化物の含有量は考慮されていません。グリセミック負荷には、グリセミック指数と食品中の炭水化物の含有量が意味に含まれています。ニンジン、バナナ、スイカ、全粒小麦粉のパンなどの食品は、グリセミック指数は高いですが、炭水化物の含有量は比較的少ないため、グリセミック負荷は低くなります。このような食品は、血糖値にほとんど影響を及ぼしません。

同時に摂取する食物の組合せが血糖値の変化にどのように影響を及ぼすかもグリセミック負荷という用語には含まれていますが、グリセミック指数には含まれていません。

タンパク質

タンパク質は、複雑な形状につながったアミノ酸という単位で構成されています。タンパク質は複雑な分子なので、体内での分解に時間がかかります。そのため、炭水化物に比べてはるかに利用に時間がかかり長持ちするエネルギー源となります。

アミノ酸は20種類あります。その一部は体内の成分から合成されますが、必須アミノ酸と呼ばれる9種類のアミノ酸は体内でつくることができないため、食物から摂取する必要があります。必須アミノ酸のうち、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンの8種類は、誰もが必要とするアミノ酸です。乳児には9番目の必須アミノ酸であるヒスチジンも必要です。

タンパク質のうち、体が必須アミノ酸を取り出すために使うことができる割合は、タンパク質毎に異なります。卵のタンパク質は100%、牛乳や肉に含まれるタンパク質も高い割合で使うことができます。ほとんどの野菜とシリアルに含まれるタンパク質は、半分を少し下回る割合で使うことができます。

体には、組織を維持し入れ換えたり、体が機能し成長したりするためにタンパク質が必要です。タンパク質がエネルギー源として使われることは通常はありません。しかし、他の栄養素や体内に蓄えられている脂肪から十分なカロリーが得られない場合には、タンパク質がケトン体に分解されてエネルギー源として使われます。必要以上のタンパク質を摂取すると、体はタンパク質を分解し、その成分を脂肪として蓄えます。

体内には多量のタンパク質があります。タンパク質は体を構成する主な要素で、ほとんどの細胞の主成分です。例えば、筋肉、結合組織、皮膚はいずれもタンパク質でできています。

成人は1日に約60グラムのタンパク質を摂取する必要があります(体重1キログラム当たり0.8グラム、または総カロリーの10~15%)。筋肉を増やしたい成人の場合は、それよりやや多い量が必要です。小児の場合も、成長中であることから、これより多い量のタンパク質が必要です。減量のためにカロリー制限を行っている人は、減量中の筋肉量の減少を予防するために、一般的により多くのタンパク質を摂取する必要があります。高齢者では、体重1kgあたり最高で1.2gという、より多くのタンパク質が必要になることがあります。しかしながらこの量は過剰であり、腎機能不全や腎不全などの特定の状態では有害となる可能性があります。研究では、タンパク質は炭水化物および脂肪よりも満足感が強い(満腹感をより持続させるのに役立つ)ことも示されています。

脂肪

脂肪は脂肪酸とグリセロールで構成される複雑な分子です。成長とエネルギー供給のために、体には脂肪が必要です。体は脂肪を使って、ホルモンや体の活動に必要な多くの他の物質(プロスタグランジンなど)の合成も行います。

脂肪はエネルギー源としては最も遅いものですが、最もエネルギー効率のよい形態の食物です。脂肪は1グラムで約9キロカロリーのエネルギーを供給し、これはタンパク質や炭水化物の2倍以上です。脂肪は非常に効率的なエネルギーの形態なので、体は余分なエネルギーを脂肪として蓄えます。体は余分な脂肪を腹部(内臓脂肪)や皮膚の下(皮下脂肪)に蓄え、エネルギーが必要なときに使います。余分な脂肪は血管や臓器にも蓄えられることがあり、その場合血流を遮断し臓器に損傷を与え、しばしば重篤な病気を引き起こします。

脂肪酸

体は脂肪酸が必要なときには、特定の種類の脂肪酸を体内で合成できます。それ以外の必須脂肪酸と呼ばれるものは体内で合成できず、食物から摂取しなくてはなりません。必須脂肪酸は標準的な食事で摂取される脂肪の約7%を占め、総カロリーの約3%(約8グラム)を占めます。必須脂肪酸には、特定の植物油に含まれているリノール酸やリノレン酸などがあります。エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は脳の発達に必要不可欠なもので、体内でリノレン酸から合成できます。しかし、特定の海水魚の魚油にも含まれていて、魚油の方が効率的な摂取源です。

リノール酸とアラキドン酸はオメガ6脂肪酸です。リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸はオメガ3脂肪酸です。オメガ3脂肪酸が豊富な食生活によって、動脈硬化冠動脈疾患など)のリスクが低下することがあります。マスや一部の海水魚には、多量のオメガ3脂肪酸が含まれています。(妊娠中や授乳中の女性は水銀の含量が少ない魚を選ぶべきです。詳細については魚介類中の水銀を参照のこと。)米国では、オメガ6脂肪酸は十分に摂取される傾向にありますが(多くの加工食品に使用される油に含まれている)、オメガ3脂肪酸は不十分な傾向にあります。

脂肪の種類

脂肪には複数の種類があります。

  • 一価不飽和脂肪

  • 多価不飽和脂肪

  • 飽和脂肪

飽和脂肪はコレステロール値を増加させ、動脈硬化のリスクを高める可能性が高い脂肪です。動物由来の食品には一般的に飽和脂肪が含まれていて、飽和脂肪の多くは室温では個体です。植物由来の脂肪には一般的に一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が含まれていて、これらの脂肪酸の多くは、室温では液体です。パーム油やココナッツ油は例外で、他の植物油よりも多くの飽和脂肪が含まれています。

トランス脂肪酸(トランス脂肪)は、カテゴリーが異なる脂肪です。トランス脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸に水素原子を加えることで(水素化)、人工的に生成されます。脂肪は部分的に水素化される場合と完全に水素化される(水素原子で飽和される)場合があります。米国でトランス脂肪酸の主な摂取源となっているのは部分的に水素化された植物油で、以前は多くの市販されている調理済み食品に用いられていました。トランス脂肪酸を摂取すると、体内のコレステロール値に悪影響を及ぼすことがあり、動脈硬化のリスクを上昇させることがあります。このため、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は加工食品へのトランス脂肪酸の使用を禁止しましたが、それでも少量は含まれている可能性があります。

食事中の脂肪

一般に、専門家は以下のことを推奨しています。

  • 脂肪は1日の総カロリーの約28%以下(または1日90グラム以下)に抑えること

  • 飽和脂肪は8%以下に抑えること

トランス脂肪酸は食事から排除することが推奨されています。可能であれば、飽和脂肪やトランス脂肪酸の代わりに一価不飽和脂肪や多価不飽和脂肪(例えばオメガ3脂肪)を摂取するとよいでしょう。

コレステロール値が高い人は、脂肪の総摂取量をさらに控えなければならないこともあります。

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