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気分症の概要

執筆者:William Coryell, MD, University of Iowa Carver College of Medicine
レビュー/改訂 2023年 10月
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気分症とは、過度の悲しみ(抑うつ)、過度の高揚(躁状態)、またはその両方が長期間にわたって生じる精神の病気です。抑うつと躁状態は気分症の両極端な状態に相当します。

悲しみと幸福感は、普段の生活で当然に生じる感情であって、気分症の人が経験する抑うつや躁状態と診断される重度の感情的な問題とは異なります。

悲しみは、喪失、敗北、失望、心的外傷(トラウマ)、破滅などに対する自然な反応です。愛する人の死、離婚、失恋など、何らかの喪失体験や死別に直面した人が嘆き悲しんだり、ふさぎ込んだりするのは、最も一般的で自然な反応です。通常、気分症になりやすい人でなければ、死別や喪失体験が原因で日常生活に支障をきたすほどに抑うつ状態が長引くことはありません。一部の人々では、愛する人を失ったことで、生活に大きな支障をきたす抑うつが長期にわたった引き起こされることがあり、遷延性悲嘆症と呼ばれています。

知っていますか?

  • 医師の診察を受ける人の多くが気分の落ち込みがあると言いますが、気分症と診断されるほど重度の抑うつがある人はごく少数です。

幸福感、高揚、喜びは、人が何かについて前向きな感情を抱いているときに経験する感情です。躁状態とは、気分症の人にとって、その最中には幸福に似た感覚が生じる気分に関する異常な状態です。典型的には、過度の興奮、多動、および衝動性がみられる期間を伴います。躁状態の間は、睡眠欲求の低下、自尊心の高揚や誇大性の増強、観念競合、早口、注意散漫、危険行動への関与などを経験することがあります。躁状態は正常範囲の感情とは著しく異なり、社会機能や対人関係の障害につながる可能性があります。

気分症の診断は、通常より強い悲しみまたは高揚がみられ、さらに他の症状がみられ、かつ身体的、社会的、および職業上の機能に支障が生じている場合に下されます。

抑うつだけがみられる状態は、医学的に単極性と呼ばれ、いくつかの疾患が考えられます。

  • うつ病

  • 持続性抑うつ症

  • 月経前不快気分症

  • 物質・医薬品誘発性抑うつ症

双極症は、抑うつ状態と躁状態または軽躁状態(比較的軽い躁状態のこと)が交互にみられる、別のカテゴリーの気分症です。抑うつを伴わない躁状態(単極性の躁状態と呼ばれます)は非常にまれです。

主治医を受診した人の約30%が症状の1つとして抑うつを訴えます。しかし、実際に重度の抑うつがある人の割合は10%未満です。米国では人口の約4%が双極症をもっています。

小児や青年も気分症を発症することがあります。

気分症がある場合、特に抑うつを伴う気分症では、日常生活を送れない、対人関係を維持できない、食欲不振、極度の不安アルコール使用症といった他の問題が起こるリスクも高まります。最も懸念されるのは、うつ病を治療しないと、15%もの人が自殺により命を絶ってしまうということです。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国精神保健協会(Mental Health America):健康全般に欠かせない要素として精神衛生を促進し、公共政策に関する教育資料や情報を提供する、地域に根ざした非営利組織

  2. 全米精神疾患者家族会連合会(National Alliance on Mental Illness [NAMI]):精神疾患を抱えている人々の生活の改善に取り組む、草の根レベルの組織としては米国最大規模の精神医療団体

  3. 米国国立精神衛生研究所(National Institutes of Mental Health[NIMH]):研究、法律、普及活動を含めた精神疾患の様々な側面に関する一般的な情報

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