好酸球性肺炎

肺好酸球浸潤症候群(pulmonary infiltrates with eosinophilia syndrome)

執筆者:Joyce Lee, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 6月
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好酸球性肺炎は、肺の中に多数の好酸球(白血球の一種)が認められる肺疾患の総称で、通常は血液中にも好酸球が現れます。

  • 肺への好酸球の集積は、特定の病気、薬物、化学物質、真菌、寄生虫などが原因で起こります。

  • せき、喘鳴、息切れなどの症状がみられ、一部の患者は呼吸不全になる場合もあります。

  • 病気の発見と原因の特定のため、X線検査と臨床検査が行われますが、寄生虫が原因として疑われる場合は、これらの検査が特に有用です。

  • 通常はコルチコステロイドが投与されます。

間質性肺疾患の概要も参照のこと。)

好酸球は白血球の一種で、肺の免疫反応に関与しています。好酸球は喘息を含む様々な炎症反応やアレルギー反応の際に増加し、特定のタイプの好酸球性肺炎ではしばしば喘息が併発します。好酸球性肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)に、細菌、ウイルス、真菌などによる感染の徴候がみられない点で、典型的な肺炎とは異なります。にもかかわらず、肺胞のほか、しばしば気道までも好酸球でいっぱいになります。血管の壁にも好酸球が浸潤することがあり、喘息が発生すると、狭くなった気道が集積した分泌物(粘液)でふさがれてしまうこともあります。

レフレル症候群

好酸球性肺炎の一種であるレフレル症候群では、症状はまったく現れないか、あっても軽度の呼吸器症状(最も多いのは乾いたせき)にとどまります。診断には、胸部X線検査を行い、血液検査で血液中の好酸球の増加を見つけることが必要です。レフレル症候群は、線虫の一種(最も一般的には回虫)が体内に侵入して発症する病気の一部であることが多いですが、3分の1にのぼる患者で原因が分かっていません。この病気は1カ月以内に自然に治ります。症状を緩和し、炎症を抑えるためにコルチコステロイドが処方されることもあります。

好酸球性肺炎の原因

肺の中に好酸球が集積する正確な理由はよく分かっていませんが、一種のアレルギー反応ではないかといわれています。そのアレルギー反応の原因物質が特定できないことも少なくありません。しかし、以下に挙げるものを含め、好酸球性肺炎を引き起こすことが分かっている物質もあります。

  • タバコの喫煙

  • 一部の薬剤(例えば、ペニシリン、アミノサリチル酸、カルバマゼピン、L‐トリプトファン、ナプロキセン、イソニアジド、ニトロフラントイン、フェニトイン、クロルプロパミド、スルホンアミド系[トリメトプリム/スルファメトキサゾール配合剤]など)

  • 化学物質の煙霧(例えば、コカインまたはニッケルの蒸気を吸い込んだ場合)

  • 真菌(アスペルギルス・フミガーツス[Aspergillus fumigatus]が典型的)

  • 寄生虫(特に線虫)

  • 全身性疾患(例えば、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

好酸球性肺炎の症状

症状は軽いものから生命を脅かすものまで様々で、急性のことも慢性のこともあります。

急性好酸球性肺炎は急速に進行します。発熱、深呼吸で悪化する胸痛、息切れ、せき、全身のけん怠感がみられることがあります。血液中の酸素レベルが著しく低下し、治療をしなければ、数時間から数日で急性好酸球性肺炎が急性呼吸不全に進行する可能性があります。

レフレル症候群の症状は、まったくみられないこともあれば、軽い呼吸器症状だけがみられることもあります。せき、喘鳴、息切れなどがみられることもありますが、通常はすぐに回復します。

慢性好酸球性肺炎は急性好酸球性肺炎とは別の病気で、数日から数週間かけてゆっくりと進行し、重症化することもあります。慢性好酸球性肺炎は、自然治癒と再発を繰り返す傾向があり、数週間から数カ月かけて悪化します。治療をしなければ、生命を脅かす息切れを起こすことがあります。

好酸球性肺炎の診断

  • 胸部X線検査およびCT検査

  • 気管支鏡検査

  • 血液検査による好酸球数の測定

急性好酸球性肺炎が疑われる場合、まず胸部X線検査が行われます。

急性好酸球性肺炎では胸部X線検査で異常がみられますが、似たような異常は他の病気でもみられます。

慢性好酸球性肺炎では、胸部X線検査が診断の助けになる可能性があります。

多くの場合(特に急性好酸球性肺炎の場合)、診断には胸部CT検査が必要です。

血液中の好酸球数が測定されます。急性好酸球性肺炎では、血液中の好酸球数が正常な場合もあります。慢性好酸球性肺炎では、血液中に大量の好酸球が認められ、ときには正常値の10~15倍にもなることがあります。

気管支鏡検査で回収した肺胞の洗浄液に含まれる細胞を顕微鏡で調べると、典型的には好酸球のかたまりがみられます。真菌または寄生虫による感染症がないかを調べるため、その他の臨床検査が行われることもあります。例えば、便中に蠕虫(ぜんちゅう)や他の寄生虫がいないか顕微鏡で調べたりすることがあります。

好酸球性肺炎の治療

  • コルチコステロイド

好酸球性肺炎の症状は軽い場合があり、治療をしなくても回復することがあります。

急性好酸球性肺炎の場合、一般にプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドが必要になります。

慢性好酸球性肺炎では、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)の服用が数カ月から数年にわたって必要になる場合があります。

喘鳴が聞かれる場合は、喘息と同じ治療が行われます。蠕虫やその他の寄生虫が原因であれば、それに対して適切な薬剤を用いて治療します。通常、この病気を引き起こす可能性がある薬剤の服用は中止します。

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