薬の便益とリスクの比較

執筆者:Daphne E. Smith Marsh, PharmD, BC-ADM, CDCES, University of Illinois at Chicago College of Pharmacy
レビュー/改訂 2021年 4月
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    すべての薬は治療効果をもたらすだけでなく、害(薬の有害反応)を与える可能性があります。医師が薬を処方するときは、予想される便益と生じうる害を比較検討しなければなりません。便益が生じうる害よりも勝っていなければ、薬の使用は正当とみなされません。医師は、薬を使わない場合に起こりうる結果についても検討しなければなりません。便益と害の可能性を数学的正確さで測ることは不可能です。

    処方薬の便益とリスクを判定するとき、医師は治療中の病気の重症度と本人の生活の質(QOL)に及ぼす影響を考慮します。例えば、せきやかぜ、肉離れ、まれに起こる頭痛といった比較的わずかな不調に使用する薬では、有害反応のリスクが極めて低いものだけが許容されます。こうした症状については、市販薬がたいてい効果的で、忍容性も良好です。指示に従って正しく使用すれば、ちょっとした不調の治療に用いられる市販薬は、安全域(有効投与量と重度の有害反応をもたらす投与量の差)が広く安心して使用できます。これに対し、心臓発作脳卒中がん移植臓器の拒絶反応など、生命にかかわる深刻な病状に用いる薬では、たとえ重度の有害反応のリスクが高くても通常は許容されます。

    生活の質に関する考え方や負ってもよいと考えるリスクは、個人によって異なる場合があります。例えば、延命できるわずかな可能性の見返りとして、あるがんに対する化学療法の副作用を受け入れることをよしとする人もいます。また、あるリスクの可能性がどれくらいであれば受け入れようと思えるかも人によって異なります。例えば、薬による重度の出血が50人に1人の割合で起こる確率が、ある人には受け入れられなくても、他の人にとっては妥当かもしれません。

    治療に関する決定も参照のこと。)

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