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薬の便益とリスクの比較

執筆者:Daphne E. Smith Marsh, PharmD, BC-ADM, CDCES, University of Illinois at Chicago College of Pharmacy
レビュー/改訂 2023年 3月
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あらゆる薬剤には、よい効果をもたらすだけでなく、害(薬の有害反応)を生じさせる可能性があります。医師が薬剤を処方するときは、予想される便益と生じうる害を比較検討しなければなりません。予想される便益が生じうる害に勝っていなければ、薬剤の使用は正当とみなされません。医師は、その薬剤を使用しない場合に想定される結果も考慮しなければなりません。便益や害の可能性を数学的な精度で求めることは決してできません。

処方薬の便益とリスクを評価するとき、医師は治療中の病気の重症度と本人の生活の質(QOL)に及ぼす影響を考慮します。例えば、せきやかぜ、肉離れ、まれに起こる頭痛といった比較的軽微な不調に使用する薬では、有害反応のリスクが極めて低いものだけが許容されます。このような症状に対しては、市販薬がたいてい効果的で、有害反応には容易に耐えられます。指示に従って正しく使用される場合、軽微な不調の治療に使用される市販薬は、安全域(有効投与量と重度の有害反応をもたらす投与量の差)が広く、安心して使用できます。これに対し、心臓発作脳卒中がん移植臓器の拒絶反応など、生命にかかわる深刻な病状に用いる薬では、たとえ重度の有害反応のリスクが高くても通常は許容されます。

生活の質に関する考え方や負ってもよいと考えるリスクは、個人によって異なる場合があります。例えば、延命できるわずかな可能性の見返りとして、あるがんに対する化学療法の副作用を受け入れることをよしとする人もいます。また、あるリスクの可能性がどれくらいであれば受け入れようと思えるかも人によって異なります。例えば、ある薬剤を使用すると重度の出血が50人に1人の割合で発生する場合、この割合を受け入れられない人もいれば、妥当と考える人もいます。

治療に関する決定も参照のこと。)

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